第3話 気になる子
私がきみを最初に見つけたのはこの聡明高校に入学した時
一番にきみに声をかけたからなんだよ。
きみは怒るかもしれないけど、最初女の子だと思ってたんだ。
だって私より背が低くて、肌も白くて顔も綺麗な小顔で
全然男に子には見えなかったんだもん。
その時の私は、都会から父の都合で長野に引っ越してきて
勿論誰も友達なんていなくて、とにかく仲良くなれそうな子を
探してたんだ。
あの時のきみは、何か嫌な事でもあったのか拗ねてる顔してたけど。
その顔がすごく可愛くて一番に、この子と友達になろうと思った。
「おはよう」
怒っている自分に声をかける者などいないとおもったんだろう。
きみは驚いて私の方を見てた。
「お、はよう」
「えっ?」
今度は私が驚いてしまう。
声は確かに高いけどこのこ男の子だ。すぐにわかった。
「えって?」
挨拶した私の方が驚いていることに不思議な表情を浮かべるきみ。
私は慌てて心を持ち直して言葉を続ける。
「あっ、うぅん。何でもない。あっと私の名前は
よろしくね」
「僕は
ムスッとしながらもそう私に言葉を返してくれたきみ。
その顔がまた可愛い。
思わずクスッと笑ってしまいきみの機嫌が悪くなるのがすぐわかり慌てて謝る。
「あはは、ごめんね、きみの事笑ったんじゃないんだ」
「どう見ても笑ってたけど?」
少し怒りながら言い返すきみ。
「笑ってたのは自分の事だよ。」
「意味分かんな「女の子だと思って声かけちゃったんだ」は?」
きみの言葉を遮り私が言った言葉にきみは驚く。
「ほんとにごめんね。私東京からお父さんの都合でこっちに
引っ越してばかりなの。だから友達もいなくて声かけたんだ」
事情を説明してもきみは驚いたままだった。
私が不思議そうにしていると、
「初めて謝られた。」
きみはすごく小さい声だけど何故か嬉しそうにつぶやいた。
「え?」
私が聞き返すときみは
「いつも女の子に間違われて、でも謝らない人たちばかりだったんだ。
曖昧にごまかす奴らばっかりで、嫌だった。きみが初めてだ。」
そう言ってきみは笑顔になった。その顔が女の子にしか見えなかったけど。
けど確かに私は、その時きみに恋をした。
それぐらいきみの笑顔が純粋だった。
こんな話をしているとなんだか私の方が男の子みたいだけど。
「これより入学式を始めます。新入生代表の方は壇上までお越しください」
アナウンスが入り私は我にかえった。
「あ、ごめん、行くね」
「え?」
「なぜか知らないけど私が代表でって言われたんだ。またね色葉君。」
更に驚く彼の手を取り無理やり握手をして急いで壇上へ向かう。
きみの手は私の手より柔らかくてちょっとムスッとしたのは内緒だ。
「新入生代表、天水早耶さん」
「はい」
きみから元気をもらったから、今の私がいるんだと思う。
私は自分で言うのもなんだけど可愛い。社交的でもあるから
あっと言う間に友達も出来て親友もいる。
でもあの時不安なままだったらこんな楽しい高校生活にならなかった。
だからきみには感謝してもしきれない位。
クラスも同じだった時は本当に嬉しかった。
きみは、クラスの人たちとはあまり話さずいつも違う場所にいるみたい
に過ごしていたけど。
まぁ、きみの事をからかう人達もいたから当たり前だったかもしれないね。
でも、私が話しかけても無視はないと思う。
あれから何度も声をかけたり挨拶しても「そう」の一言で去っていくのは
ないよ。ない。
きみは私もからかわれたり、虐められたりされないようにと思っているようだけど
私はそこまで弱くない。親友も3人も出来たしその子達は心から信頼できる仲だ。
昔から人を見る目はあるのが自慢なんだよ、私。
きみに声をかけてからかう人達を睨みつける私の事も考えて欲しい。
まったく。
これは私の気持ちで、きみの、色島君の気持ちじゃない。
でも、もう一度話してみたい。必要最低限の言葉だけじゃ私は満足できない。
この気持ちが本当の物だろうか、それとも恋に恋をしているだけだろうか。
話してみないと解らないと私は思う。
「どう思う?」
「あんた、バカじゃない?それだけ考えてる時点で気づきなさいよ。
何百回目、この話?」
「え、そんなにしてないよ。多分」
親友の
彼女は同じ陸上部でポニーテールで長身、性格もサバサバしており
とても話しやすい。
「まぁまぁ、いいんじゃないの?早耶の色ボケが何時まで続くか見ものだね」
からかうように私のほほをつつくのが
後ろ髪が跳ねてるショートヘアの女の子で運動神経抜群、勉強も出来て
バレンタインには美樹と一緒に女の子から沢山チョコをもらう人気物だ。
私も貰うけど………。
「あんまりからかったらダメだよ、なっちゃん」
「その呼び方やめてって言ってんじゃん。愛結」
私の癒し、間違えた。
私の唯一の味方であり学年一の癒し
今どき珍しく黒髪ロングで本当におっとりしている女の子。
彼女目当ての男の子は多い。多すぎるくらい。
まぁ、大体その不釣り合いな胸元目当てだろうけど。
優しさが溢れんばかりの胸だ。私にも分けて欲しい。
ちょっと、いや、3分の1ぐらい欲しい。
自分の胸元を見ながら空しさを覚える。全くないわけじゃないけど
陸上を始めてから体形が運動しやすい体になったらしい。
同じ陸上部の美樹と夏はしっかりあるのに。
「早耶ちゃんは真剣なんだから。ね、早耶ちゃん。」
「え、う、うん割と」
胸の事を考えていたせいで反応が遅れる。
すかさず夏が
「早耶は愛結の半分ぐらい胸があれば落とせるって考えてるんだよ。あっはは」
「え、大きくなりたくてなったわけじゃないよ。そ、それに早耶ちゃんは
そんな事考えてないよね。」
「ごめん、正直考えてた」
「ぶふぁ!」
「うわ、吹き出すなよ美樹。あぁ私のスカートがぁ!」
「早耶ちゃんはそんな子じゃないよ。」
このほんわか天使に私は嘘をつけない。
なぜかそれでも信じてくれないのだけど。
因みに吹き出し咳き込んだ美樹の背中をさすりながら夏にハンカチを渡す
手際の良さは素晴らしい。
「がはっ、ごほっ、は、早耶あんたおぼえときな、さいよ」
「あぁっと、ほら私嘘つけないし。」
ペロッと舌をだし、平謝りする私を睨む美樹。
「私のスカートどうしてくれるのさ」
「それはなっちゃんの自業自得。」
私を睨んでくる夏にすかさず突っ込む愛結ちゃん。
「あはは」
私は笑ってごまかしオレンジジュースを飲んでいた。
これがいつもの私の日常だ。
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