第12話 亜種進化? でございます
【亜種進化ってなんですか……?】
私はウォルクおじいさんにその不可解な単語の意味を聞いてみる。
「亜種進化というのはな……いや、まずは亜種から説明するか」
【お願いいたします】
「うむ、亜種というのは、本来のその該当する魔物よりも強い個体を表す。例えば、おなじゴブリンでも、ゴブリン(亜種)の方が強いんじゃよ。ランクは変わらぬが、本来のランクよりも実力は上だし、見た目もパッと見ではわからん程度じゃが、変わるんじゃよ。特殊な特技も習得できるそうだしのぉ」
なるほど、亜種ってのがいるのか。
今後会うかもしれないね。
強敵なのは間違いないかも。
でも、私がそれになる可能性があるってことだよね? いいことなんだよね。
「で、亜種進化ってのが、普通に進化する上に亜種になる進化なんじゃよ。一度亜種になれば、その後の進化は全て亜種以上になるぞ」
まじで? ラッキー!
これで私の傀儡生勝ち組じゃない?
【なるほど、そうなのですか、私は幸運です。このような早い段階から亜種になれるなんて】
「そうじゃの。進化に必要なレベルが増えるがな。アイリスちゃんは10レベルになれば進化するぞ。ここいらの森に現れる魔物で十分な経験値は稼げるはずじゃ」
そこはみんなが寝てる間に森に潜ってレベリングすればいいね。
ゴブリンあたりを殴ればいいかな?
【ありがとうございます。では私、今日から皆様が寝ている間に森の中で魔物を倒して回ろうと思います】
「あぁ、そうするといい。わしらも魔物の被害が減るしな。あ、それと魔物の各部位はず持ち帰ってくるのじゃぞ? 採取する部位は教えるし、入れ物とランプは貸すからな」
魔物の部位? そんなの集めて何になるんだろう?
【なぜ、魔物の各部位をあつめるのです?】
「金になるからな」
【なるほど]
そうか、金になるのか。
ならば取ってこよう、ゴブリンの耳でも鼻でもとってきてやろうじゃないの。
お金は大切。
「あと、それと一つ」
【なんでしょう?】
「魔物使いであるロモンにも、もしその場にいなかったとしても、お主の倒した魔物の三分の一のの経験値が入るからな」
【覚えておきます】
ロモンちゃんにも経験値が入るんだね。
よし、わかった。どしどし魔物をたおすよ!
聞きたい事は聞けたし、そろそろ"リペア"の練習しようかな。
【では私、そろそろリペアの練習をロモン様と一緒にしますね】
「ああ、しておいで」
私はロモンちゃんのところに駆け寄り、一緒にリペアの練習をする旨を伝えた。
それで、二人で一緒に練習はしたのはいいんだけど、この日は私達はリペアを残念ながら覚えられなかった。
そのかわり補助魔法の『オフェ』という攻撃力が上がる魔法と『デフェ』という防御力が上がる魔法をとりあえずは覚えることができ、魔力とMPも上がりやすくなったらしい。
ロモンちゃんは私に天才だの普通は簡単には覚えられないだの言ってた。
それに、魔力の流れの仕組みもなんとなくだけど掴むことができた。いわば第二の血液みたいなものだという感覚なんだよね。
それも自分で自由に操って形作れるような。
それで、今夜する予定のレベリングで、その魔力の流れの仕組みと形成を応用して試してみたいことがある。
もしかしたら、つよい技が習得できかもしれないよ。
「みんな! ごはんだよ」
いつの間にやら帰ってきていて、台所に立っていたリンネちゃんが夕飯ができたからと、ロモンちゃんやおじいさんを呼んだ。
「はーい! じゃあ行こっか。今日はここまでね」
【はい】
夕飯の間も私は瞑想をする。もはや瞑想が私のご飯だ。
今回もステータスが上がりやすくなったらしい。
瞑想をする度に上がりやすくなってる気がするんだけど、なんでだろ?
心を無にするって効果ある修行だったのかな?
もしかして。
「「ごちそうさま!」」
「早い…」
確かに早い。
二人が食べ終わったようだから、私も瞑想を止める。
リンネちゃんが私のところに寄ってきてよそよそしくこう言った。
「ね、ねぇ、アイリスちゃん、今日は私と一緒に入らない? お風呂」
うーん、せっかくの美少女からの頼みだけど、私は今日はやりたいことがあるからパスさせてもらおう。
【ごめんなさい、今日はやりたいことがあるので……。明日の朝まで帰ってきません】
「ええぇ!? むーー、一緒にお風呂入って一緒に寝ようと思ったのにー! 明日、明日はいい?」
ほっぺた膨らませて悔しがるの可愛い。
リンネちゃんも私と寝たかったの?
こんな土塊と…? ロモンちゃんは私の、いわゆるご主人みたいなものだからまだわかるけど、リンネちゃんはなんでだろ?
【ええ、いいですが……何故に私と?】
「ん? それはねアイリスちゃんが可愛いからだよ!」
あー、確かに見た目は"ゴーレムの赤ちゃん"って感じで可愛いかもしれないわ私。
しょうがない、そういうことならば明日は添い寝してやろう。
【承知しました。明日は一緒に寝ましょう】
「約束ね」
【約束ですね】
そう言って、彼女はお風呂場へと消えていった。
さて、おじいさんから道具を借りてレベル上げをしなければ。
【ウォルク様、道具をお貸しください】
「おお、もう準備しておるよ、そこじゃ」
おじいさんが指さした先には、緑色の袋と、キャンプ用のランプみたいなの、それと魔物の狩るべき部位が書かれた紙、時計があった。
それと私は、自分のナイフとゴブリン棍棒を持って行く準備は万端となった。
実は、念話を使って魔物をおびき出す方法も、もうおじいさんから教えてもらってるんだよね。
「行ってらっしゃい」
「むりしないでね!」
【ええ、行ってまいります】
私は家から外に出た。
この一家のお世話になってから早2日、初めての単独行動だ。
頑張って金儲け……じゃなかった、レベル上げと魔法の練習と鍛錬を兼ねた冒険を始めよう。
だいたい、朝の6時くらいに帰ってこればいいかな?
そう考えつつ、私は森の中に入っていく。
◆◆◆
「キシャァァァァ!」
歩き始めて10分、まず最初に出会ったのがムカデ。
私はこのムカデで試したいことを一通り試そうと思っている。
一回殴って…
「キシャァァ! …………」
半殺しにして、ペアをかける。
「キシャァ?」
そしてもう一回殴って半殺しにする。
「キシャァッ! ……」
そしてもう一回ペアをかけて回復、そしてまた殴って半殺しにする。
それをMPが尽きるまで計5回繰り返した。
実践を積めば、魔法の習得を早くできると思ったから、この残虐な行為をしたんだ。
反省はしてない。
【セントピーを倒した! 経験7を取得】
【行動ボーナス! 魔力が上がりやすくなった】
ふむ、これをあと10匹くらいにくり返そう。
その前に瞑想して回復しなきゃ。
私は念話で近くの魔物を挑発しつつ、おびき出し、それをなぶり殺しにする。
その行為を10回、目標通りに繰り返した。
レベルも8に上がった。
==============
アイリス (トゥーンゴーレム)
Lv.8
HP: 50/50
MP: 23/23
攻撃:70
魔力:21
防御:62
器用:36
素早:38
特技: [念話]
魔法: [ペア][オフェ][デフェ]
==============
MPと魔力が大幅に上がってる。
瞑想とリンネちゃんとの鍛錬が恐ろしいほどの効果を生んだみたい。
これは進化もかなり期待できそうだね。
さて、そろそろレベルの考察はここまでにして、あとはもういくつの試したかったことを試そう。
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