閑話 バレンタインでございます

 手元にあったのは板のチョコレート。なぜあるのかわからないけど、とにかく手元にチョコレートがあった。

 そして私には今、彼氏がいる。となると作るべきなのはバレンタインチョコ。そう、私はそれをどうやったか覚えてないけど作り上げ今まさにガーベラさんに渡そうとしていた。



「き、今日は……に、に、にがつじゅーよっかですねー……」

「そ、そうだね……」

「わ、私の前世の記憶にバレンタインデーっていうのがありまして」

「……うん」

「す、好きな男性に女性からチョコレートを渡すという風習なのですよ」

「でもここにカカオなんて……」

「じ、自分でもどうやって手に入れたかはわからないのですがチョコレート作ってきました」



 そう言うとガーベラさんは目を見開いた。私はハート形に作ったチョコレートを取り出す。ガーベラさんはそのチョコを食い入るようにじっと見つめ始めた。



「そんな……」

「あ、あの、本命ですので。これ。あの、受け取ってくれますか……?」

「本当に、いいのもらって」

「ひ、一人分しか作れませんでしたし、わ、私の彼氏はガーベラさんですので……」



 私からガーベラさんに手渡すと、ガーベラさんは片目から大粒の涙を一滴だけ流した。



「ありが……とう……」

「泣くほど嬉しかったですか? そ、それなら私も作った甲斐がありました!」

「アイリスも顔が今まで見たことないくらい真っ赤だよ。ともかくこれは…….一生大事にするよ」

「あんまり日持ちしないので今日中に召し上がってください」

「それもそうだね」



 そう言ってガーベラさんは本当に嬉しそうに笑った。そしてそのあと、ホワイトデーのお返しはかなり期待してて欲しいとも。別にお返しは愛がこもっているならなんでもいいのだけれど……。ともかくちゃんと渡せてよかったわ。



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もう日をまたぎましたが、書いちゃいました。完全にパラレルです。書きたかったので。

次の投稿は予定通り次の月曜日です。

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