第236話 おじいさんに彼氏の紹介でございます!
「おお、アイリスいたのかのぉ!」
「今日も白いバラのように可憐だね、アイリスちゃん」
「これ、わしの孫娘に、ワシより歳上のお主が色目を使うんじゃないわい」
息をするように私のことを褒めてくれるナイトさんを、おじいさんは眉間にしわを寄せながら注意した。
なんか今、とんでもないこと言ったような気がしたけれど気のせいかしら?
「いいじゃないか。見た目は若いんだ僕。そんなことよりジーゼフ、彼女は君の孫娘だったのか」
「まあ、そうじゃな」
「でも僕は知ってるよ、半魔半人だろ?」
「お主とアイリスちゃんがいつの間に、どう知り合ったかは知らんがその通りじゃ。アイリスはワシの孫娘が一番最初に仲魔にした魔物の半魔半人。過ごした期間は一年に満たぬが、ワシは孫娘のように思っておる」
そう言うとおじいさんはグイッと、気がつかぬ間にギルドマスターが差し出していた葡萄酒を飲み込んだ。
三日前くらいに聞いたけど、それでもちょっと嬉しい。
ナイトさんはそれを聞き何故か目を光らせていた。
「まさか! アイリスちゃんのマスターは君の実の孫だったのかい!?」
「そうじゃよ」
「言ったじゃないか僕。君以来の才能溢れる魔物使いを見つけたって! そうかそうか、ジーゼフの孫娘だったかぁ」
「なんとその話、ロモンのことじゃったか……!」
一体どういう状況なのかしら。私がロモンちゃんの仲魔だとわかって二人の話が一気に進んだ感じ。
たしかおじいさん、この間魔物使いの未来が明るいって喜んでたわよね? 自分にとっての大恩人に良い魔物使いを見つけられたって言われて。
話の流れから考えるに、その大恩人がナイトさんで……ナイトさんはロモンちゃんのことべた褒めしてたから辻褄があうわね。
「そうかぁ……いや、面影はあるなと思ってたんだ」
「ふふふ、すごいじゃろう? ワシの孫達は!」
「うん、さすがは君の孫だ。もう一人の娘も剣士としての才能に溢れてたしね。……なんだかとっても気分がいい! 運命ってのは煌びやかだ」
二人ともすごく嬉しそうで何より。
これまた機嫌が良さそうにお酒をコップに注いであおった。私はナイトさんに疑問が産まれるばかりだけど。
「ところで」
おじいさんか私の方を向き、唐突に話しかけてきた。
「なんですか?」
「なぜこんな時間に、酒場を兼ねたギルドに、アイリスがいるんじゃ?」
「えっ」
そういえばロモンちゃんとリンネちゃん以外の身内には私がこの時間帯の酒場と化したギルドに通っていることを教えていないんだった。
……彼氏ができたと報告するとあの態度だったおじいさん。ちょっと怒られることは覚悟したほうがいいかもしれない。
「んー?」
「えー、えーっと、それは……」
「ジーゼフ、自分の孫のような存在が可愛いのはわかるけどさ、アイリスちゃんは人としての年齢、17か18くらいだろ? 別にいいじゃないか夜に出歩いて遊んでたって。彼女自身強いし」
「お主がそう言うなら」
ねっ、とナイトさんは私に軽くウインクしながらそう言った。フォローありがとうございます。
ここに最初に来た時は個人的な仕事の依頼をしに来ただけだったけど、どんどんとみんなの人の良さに飲まれて言って、すっかり抜け出せなくなってしまった。
今頃おじいさんに禁止されることになったら私らしくもなく反抗してた可能性が高い。
そもそも夜に出歩いて遊ぶ時点で私らしくない……なんて昔は思ってたわけだけど。どうなるかわからないものね。
「彼氏は止めたりしないのかの、アイリスちゃん」
「アイリスちゃんが彼氏と知り合ったのはここじゃないらしいけど、告白したのはここだよジーゼフ」
「なんじゃと。……今日はいるのか?」
「そこで心配そうにこっちをのぞいてる金髪の好青年がいるはずだ。彼だよ」
やっぱりこういう流れになったわね。ガーベラさんに覚悟しておいてって言ったけど、覚悟はしておいてくれたかな。
「呼んできますね」
「ぜひ、そうしてくれ」
私はガーベラさんの元に。キョトンとした顔をしてるけど、大丈夫よね?
「覚悟しておいてくださいといいましたよ」
「え、え?」
「……私の祖父のような存在の方に、あなたを紹介する時が来ました」
「ああ、そういうこと。……よし行こう」
ガーベラさんは表情をキリッとさせ、服も正しい、私と一緒におじいさんの元に向かってくれた。
かっこいいなぁ……覚悟はできてる感じじゃなかったのに、いざとなるとこんな風にすぐに行動してくれるなんて。
「連れて来ました」
「初めてまして、おじい様。……俺はアイリスとお付き合いをさせていただいております、ガーベラといいます」
「ほぅ……」
ガーベラさんをジロジロと品定めでもしてるかのように見る。そんなおじいさんにナイトさんは耳打ちをした。
「どうだ、好青年だろう」
「そうじゃな。少なくともアイリスを悲しませたりするようなことはせんじゃろうな」
「僕は彼とアイリスちゃんが付き合うのに賛成だよ。……理由は後で話すけど」
「なにかワケありなのかの?」
「後でね、後で」
良聴をつかって盗み聞きしてけど、そんなこと言われたらすごく気になるじゃない。私とガーベラさんが殴り合ったことを告げるのかな?
「いつ知り合ったんじゃ」
「仕事で一緒になった時です」
「ほぅ……」
「あ、あの、ジーゼフさん!」
「なんじゃアイリス」
「実は私、ガーベラさんにはたくさん恩がありまして……」
私はガーベラさんにいままでしてもらったこと全ておじいさんに話した。本人の目の前で連ねるのは結構恥ずかしかったけど、より、ガーベラさんと付き合うことを納得してくれるかもしれないから。
「そうじゃったか。で、告白したのはアイリスからだったかな?」
「い、いえ、それは俺からです……」
「ほう……アイリスのどこが良かったかね」
そう聞かれてガーベラさんは一瞬だけ動きが止まった。しかしすぐに口を開き、その質問に答え始めた。
「一見しっかりしているのに、良く見ると照れ屋だったり褒めると心の底から嬉しそうにしてくれる……そこが可愛くて惚れました。もちろん、それだけじゃないですけど」
「はっはっは、そうかそうか」
あぅぅ……そうやって言われるととても恥ずかしい……。そんな風に思ってくれてたんだ。ガ、ガーベラさんから何回可愛いって言われても……嬉しい。
周りの聞こえてた人たちはすごくニヤニヤしてる。
あんまりニヤニヤしないでほしい。もっと恥ずかしくなる。
「おおみろ、ガーベラ。言ったとおりアイリスちゃんが照れてるぞ。良かったなぁ。こういうのが好きなんだろう?」
「あ……うん……」
ガーベラさんが黙ってしまった。照れたら可愛いのは私じゃなくてガーベラさんの方なのだはないか……と思えてしまうような、耳の赤らませ方。
「僕のいった通りだっただろう。彼は好青年だ。付き合うことに関しては何の心配もいらない」
「そのようじゃな。まだ生まれて1年経たないアイリスの彼氏とはどんな奴かと思ったが、君なら大丈夫そうじゃ。その様子ならおそらくキスもまだだろうて」
「は……はい」
み、認めてもらったけど!
キスすらしてないのバレちゃった……。でもまだまだ先になりそうなのよね。
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