第141話 デ、デートなんかじゃないですよ!?
私はピザを専用のカッターで半分に分けてから、1枚分ちょうどいい感じに切り取ってお皿に乗せた。
パスタより先にピザを食べるの。
「ところでアイリスちゃんの仲間ってどんな人達なんだい?」
「ふあい? …あ」
頬張ろうとしたそんな時に到達に質問されるもんだから、ピザの具がお皿の上に落ちてしまった。
「ああ、ごめん」
「いえ、構いませんよ。それで…なんでしたっけ?」
「いやね、アイリスちゃんの仲間ってどんな子たちなのかなーって訊いてみたくてさ」
自分の過去にナンパした相手が私の大切な仲間だってこと気がついてないのね。
まあ二人ともナンパされた時、ほぼスルー同然な対応されたから覚えてなくても仕方ないかもしれないけれど。
「そうですね…。魔物使いと剣士で…」
「へぇ、女の子だっけ。可愛いのかな?」
「私なんかよりも相当可愛いです」
「いやぁ、あってみたいな…。でもアイリスちゃんも相当可愛いと思うけれど」
可愛い女の子には目がないこの人に合わせたら、どうせまたナンパするわ。そうね、あくまでこの人は私の知人であり、二人には合わせないほうがよさそう。
「あわせられません。あなたのことですから、どうせまたナンパするんでしょう」
「そんな見境なくしないってば。ともかくあわせたくないってことなら仕方ないな」
簡単に引き下がってくれて助かった。
そのことについてグイグイ来てたら、私からの好感度はまた下がってたわね。
「ところで食事が終わった後、暇っ?」
私の目をジッとみながら、何かに期待するようにそうきいてきた。さっきまでとは全然テンションか違う。
ちょっと彼の目が黒目が全体的に黒っぽくなってるような気がする…のは気のせいだとして…そんなにこの時間が楽しいのかしらね。
「まあ、暇ですけど…」
「よし、ならこの1週間近くこの街にいて良い場所をたくさん見つけたんだ。行かないかい?」
む、これは正式なデートのお誘いかしら。
いやいや、デ…デートなんかじゃないしっ。ただ友人とどこか出かけるだけでしょう。
どうしよう、相手は返事を待っている。
グラブアさんはそう、どこに行くつもりなのかしらね。
「ど、どこに行くんです?」
「ん? 例えばあの城の外壁を眺めるとかね」
「外壁ですか」
「そうそう。俺みたいに普段王都に住まない人間は城を眺めるだけでも十分時間を潰せるんだよ」
お城の近くなら、もし彼が危ない人で本性を現したとしても大丈夫なはず。もうそんなことはないと思うけどね。
「わかりました。1、2時間程度なら付き合いましょう」
「よかった! 城を眺めるのに良い場所を見つけたんだ。この王都に親しい人はアイリスちゃんしか居ないから、誰かと一緒に行こうと思っても君しか誘う相手が居ないんだけどね…。でも君でよかった」
「そっ…そうですか…そうですね」
君でよかったとはどういうことだろう。
この人の趣味からして、私は可愛いらしいから、可愛い子と居られて嬉しいってことかな。
…こ、ここ何週間かそう言われることが多いからって私は有頂天にならなきゃいいんだけど…。
とりあえず一緒に後でどこか行く約束をしてしまった。
デートではない、断じて違うの。
「そ、そういえば王都にはどれくらい滞在するんですか?」
「そうだね、そろそろ水も恋しいしあと2日くらいで帰るよ。帰ったら海を泳ぎまくるつもりさ」
片目ウインクしながら答えてくれる。やっぱりこの人は海好きなのね。
「お仕事の方は今お休みに?」
「そうだね。家宝を買戻したとしてもまだ余るくらい貯金はあるから、しばらくはのんべんだらりとやってくつもりだよ」
働かないのか、しばらく。
私的にはお金があってもちゃんと働く男の人がいいなぁ…。心から惚れたら一緒にいたいと思う時間とかの方がふえるのかな? わかんないや。
ま、一つ言えるのはロモンちゃんとリンネちゃんも、働いてくれる人の方がカッコいいっと思うってことね。
「そういうアイリスちゃんはどうなんだい? アーティファクトを即金で買えるだけのお金があるんだ。なにか事業を起こしてみたり娯楽に使ったりはしないのかな? それとも何かあった時のために残しておくとか?」
ああ、残りのお金の使い道かぁ…考えたこともなかったなぁ…。でもとりあえずは決められるかしら。
「そうですね後者の方ですかね。もし良いアーティファクトなどが出回っていたら買おうと思いますよ。そんな感じです」
「なるほどねぇ。あ、食べ終わっちゃった」
「え」
おしゃべりしてる間に食べ終わったの!?
私まだ全然食べてないのに…。私ってば、ロモンちゃんとリンネちゃんが食べるの早いってばっかり思ってたけど、私自身も食べるの遅かったのかしら?
「あははは、僕は食事しながら話しするの得意だから仕方ないよ。アイリスちゃんはゆっくり食べて」
「す、すいません」
ちょっとだけ急いで食べる。
相変わらずここのレストランのイタリアン料理は美味しい。まあこの世界ではイタリアンなんて言わないらしいけど。そもそもイタリアが無いわけだし。
「ご、ごちそうさまでしたっ」
「せっかくのさいご…食事を慌てて食べなくてもよかったのに」
「さいご?」
「あ、ああ。ほら今日でまた会えなくなるからさいごの食事でしょ」
ああ、確かにあと2日でこの街を去るんだっけ。
今日以降誘うつもりが無いってことかしらね。だとしたら確かに最後かも。
「すいません…」
「いや、いいよ。せっかくアイリスちゃんと食事できているのに先に食べてしまった俺も悪いさ」
グラブアさんはにっこり微笑んだ。
私とのせっかくの食事ねぇ。
「そろそろ店を出ようか」
「そうですね」
私達は席を立ち上がり、カウンターへ行く。
出会い頭に言っていた通りに全額奢ってくれたの。申し訳ない気もあるけれど、男の人としては女の人に奢りたいって気持ちはあると思うから、下手なことは言わずに御礼だけいっておきましょう。
「すいません、ありがとうございます」
「いやいや、いいんだよ。それじゃあそろそろお城の近くに行こうか」
私はグラブアさんの後ろをついて行く。
細身なのにがっしりとした身体と赤い髪がなんだか強者の雰囲気を醸し出しているわ。今までこの人をそこまで強そうだとか思ったことなかったのに。
これは私の気持ちの変化の問題なの?
……よくわからない。
「こっちが近いんだよ」
そういってグラブアさんは少し広め脇道…つまり裏路地に入った。裏路地は鍛冶屋さんに寄った時以外行ったことがない。
…ここで襲われたりしたら、非力な女の子だったらものすごいピンチでしょうね。
でもこの王都はおかげさまで治安が良いし、仮に襲われたとても私はBランクぐらいの冒険者なら返り討ちできるし。
「ん? どうしたんだい立ち止まって」
「え、あ、少し考え事を。今行きます」
私はグラブアさんの後ろをついたまま裏路地へと入って行く。まさかこの人が襲うとかなんて想像をしてしまうけれど、今まで話してみてそれはないだろうと。
そう、考えていたの。
「ワールドバブル」
しばらくいつもと同じように雑談しながら裏路地を歩いていた。そんな中唐突に彼は魔法のようなものを唱える。
「え? 今の魔法は…」
「今の魔法は俺のオリジナルの魔法だよ。泡みたいな壁を作れるんだ。この中は探知できないし外に音も漏れない」
「え?」
目つきが怖い。
お化けのような怖さじゃない、大きな魔物と戦う時の怖さじゃない。今、自分の身が危険に晒されている恐怖、これだ。
ビリ…と、布を裂くような音が聞こえた。
気がつかなかった。いつのまにか私は服を破られ、下着を外にさらけ出している。
「さ、楽しもうよ」
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次の投稿は5/12です!
アイリスちゃんのノロケ回だと思った?
残念! ボスステージでした!
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