第116話 新武器登場でございます!
「……来たか、入れ」
ドワーフのお爺さんの鍛冶屋の戸をノックすると、すぐさまそう帰って来た。
さすがに今回は外出したりしてなかったか。
お言葉に甘えて、私はお店の中に入る。
「こんにちは」
「……ああ。ついさっき武器は仕上がったところだぁぁ…」
なんか…お爺さん、すごく疲れてない?
顔色も悪いし。
「気分悪そうですけど…大丈夫ですか?」
「ああ~、大丈夫だとは思う。思うが…なにせ2週間不眠不休だったからな。ハハハハハ…はぁ…」
それってやばくない?
2週間不眠不休とか、普通の人なら死んじゃうよね?
人間状態の私なら、間違いなく死んじゃう。
「しかし…心配すんな。作品は…最高の出来だぜ! 4本ともなっ!」
「そ、そうですか。とりあえず、楽になる魔法でもかけときましょうか?」
「んなもんいらないぃ…と、言いたいところだが、悪い、たのむ」
私はお爺さんに回復魔法をかけた。
私の回復魔法はこう言うのにも効果があるからね。
「どうです?」
「ん…ああっ。だいぶ良くなったな! 流石だ。んじゃあさっそく商品の説明するから、そこに座って待ってろ」
そう言うとお爺さんはカウンターの裏に消えてゆく。
言われた通りに私は椅子に座って待った。
そして2分後。
「これだ」
お爺さんは丁寧に、カウンターの横にある小さめの机の上に4本の武器を並べた。
全て、虹色のように輝く銀色をしている。
それに、柄にはめ込んでる宝石っぽいのも全部緑。ま、それはたぶん私の腕とかについてるやつなんだろうけど。
ポイント的な部分以外、ほとんど同じね。
「まあ、言わずもがな、お前の身体だったものを中心に武器を作っている。だからこんな色になった。ミスリルに近いがまた違うものだったぜ」
「そうですか」
これ全部…私の体の一部。
あれ、もしかして自分の主人らに嬉々として身体の一部差し出す私って変態さん?
そんなことないと信じたい。
「んで…効果の方だが、まずこの双剣だ」
お爺さんは茶色で分厚い手袋をはめてから、双剣を一本だけ手にとって、私に見せてくれる。
「オレは剣の大会であのグライドの娘を見ている。父親と同じスピードを大事にするタイプだろ? だから、この剣にも余ってたSランクやAランクの速さに影響がある魔物の素材を使っている。装備するだけで速さが格段に上がるはずだ」
おおお、それは今のリンネちゃんの武器にも当てはまる…いや、SランクやAランクの魔物を使ってるんだから、それ以上かもしれない。
「ま、斬れ味は最高だな。ちょいと試して見たが、技次第じゃミスリルも斬れると思うぜ」
ミスリルも斬れるってことは、お父さんが私にやってのけたことと同じことがリンネちゃんにもできるかもしれないってわけだ。すごい!
「ま、まだまだ効果はたくさんあるが…それらはこいつら全部に共通してるからな、後で説明するぜ。と、本当言うと、鑑定の特技がありれば説明はいらないんだが……」
チラリと見てくるお爺さん。
私は首を横に振った。
「別に気にする必要ないし、仕方ないだろ。結構経験積まなきゃいけないからな」
覚えようと思えば数日で覚えられるんだろうけど…。
うん、今はまだいいかな。少なくとも明日からよね。
「それで、次にこの杖だ。この杖はすごいぜ? 特に回復魔法や補助魔法に対しての効果が半端じゃない。おそらく…これを装備してるだけで『ペア』が『リペア』くらいの威力は出るだろう」
魔法が次の段階に昇華しちゃうくらいなのね。
まるで普段の私みたいじゃない?
「無論、攻撃魔法に関しても申し分ない! 特に光魔法……あ、でも光魔法の術者ってすごく少ないが…?」
「それは大丈夫ですよ」
「そうか。仮にそうじゃなかったとしても、普通の魔法に対しても、一級品なりの威力を発揮するだろうぜ!」
光魔法の効果は今の私なんだよね、きっと。
武器やアイテムって使った素材の元の特徴とか反映されること多いから面白い。
「あ、あとそれと、この杖の使い手は魔物使いだってことで、魔物使い用の魔法に関しても普通より、より効果が高まるようになってるからな。これはオレがサービスでつけた機能だぜ」
「ありがとうございます」
そうよね、魔物使いのロモンちゃんが使うんだから、魔物使い用のもつけてくれたのよね。
まあ、本当なら魔物使いって、普通の杖で十分なんだけど。なんにせよ魔物使い専用の魔法を強化してくれるのは有難い。
「あと、この杖剣な」
お爺さんは私が使うであろう杖剣を見せてきた。
おおっ…かっこいいっ!
柄頭が杖の先っちょのように少し曲がってて、柄の片方が少し内側に曲がってる。
「この杖剣はお前が使うんだろ?」
「はいっ!」
「そうだな、効果のほどは…早く行っちまえば、さっきの二つを合わせたみたいな感じだな。と言っても、この剣より速さは劣るし、この杖みたいに魔物使い仕様じゃなく、回復魔法も比べたらそこまで効果が上がらないが」
「いえいえ、十分ですとも」
それでいいのよ。
だって私が使うんだもの。
回復魔力も攻撃力も元から高い。
「次にこの4本全てに共通する効果を言うぞ」
「はい」
「まず回復魔法と補助魔法を受ける時、装備したやつへの効果がとんでもなく上がること」
ふむふむ。
今のリンネちゃんの武器みたいに、素早さだけとかじゃないのか。しかも私の身体を使ってるから、その効果も半端じゃなさそうだ。
「次に、この武器は、装備してるやつとこの武器自身を自動で回復する」
「……というと?」
「この武器らを装備してるだけでHPとMPが勝手に回復してくんだよ。杖なら、持ち手のMPが回復するのはよくある事だが、剣でそれは無い」
はぁ…たぶん、これも私なんだろうなぁ…。
て、もう一つの方。武器が回復するって…まさか。
「さらにこいつらは刃毀れ等は絶対にしない。常に最良の状態を保ってやがる。……『これアーティファクトなんじゃないか?』て、鑑定してる間に何回思ったか」
作った本人がそういうならそうなんでしょう。
でも一目で素晴らしいぶきだってわかるのは本当ね。
「そうなんですか……」
「ああ。それだけじゃない。まだある。例えば…異常なほど状態異常に耐性を…それも主に毒に。だとか。使ってるうちにわかるだろ」
「そ、そうですね…」
「ああ。そういうわけだ___________ホラよ」
お爺さんは話の終盤に入ってから、それぞれを鞘にしまい込んだりし、私に手渡してきた。
それを受け取る。
さ、流石に重いっ。
とりあえず頑張ってスペーカウの袋に収納した。
「そいつらの名は『シルバーエンジェルの双剣』『シルバーエンジェルの杖』『シルバーエンジェルの杖剣』だ。大切にしてくれよな」
「……はいっ!」
私は、自分で思う限りの満面の笑みでそう返事する。
そっかぁ…シルバーエンジェルかあ…たしかに、あの武器らを見てるとそう言いたくなるのも……。
あれ、でも、シルバーエンジェルって…。
「私のことですか? シルバーエンジェルって」
「ああ、だってお前、頭に輪っかあるし、身体は銀色だし」
「そ、そうですよね…」
嬉しいけど、なんか恥ずかしいなぁ。なんて。
………そろそろ代金払いましょうかね。
「えっと、いくらですか?」
私はスペーカウの袋を弄りながらお爺さんにそう言った。
「1本3400万ストン、これが4本だ。これ、素材持ち込みじゃなかったら7000万ストンはしてたぞ?」
「はは……。そうですね」
2億8000万ストン払うとか、大変じゃない?
払えるけど。
でも1億3600万ストンで済んで良かった。
私はその額をスペーカウの袋から取り出し、カウンターの上に置いた。
「うおお…いきなりそんなにバンと出されちゃあな…」
「あ、ごめんなさいっ…」
「い、いや良いんだ。この額を即金で払うのにはびっくりしたがな」
そうだよね。
オークションの時も、私が1億1000万ストンを即金で払ったからスタッフさん達びっくりしてたもん。
「いやぁ…でも本当にありがとうございました! また何かあったらきますね!」
そう言いながら、私はそろそろお暇させてもらおうとする。しかし。
「なあ、少し提案あるんだが」
呼び止められた。
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