第117話 武器を渡すのでございます!
「なんでしょうか?」
私はドアの取っ手から手を離し、もう一度椅子に座りなおした。なんでしょうね、提案って。
「提案ってのは、あれだ。身体を売ってみないか?」
「えっ……!?」
か、身体を売る?
それって、えっと…エンコーとか? 身売り?
えっと…お爺さんに、いやもしかしたらまた別の人に、あんなことやこんなことされたり…とか?
えっ、なに?
えっ……えええええええっ!!?
「ななななな、ななななな」
私はそこから勢いよく立ち上がろうとしたけれど、その勢いで後ろにおもいきり転んでしまった。
「わっ…わあああああああっ!?」
ロングスカートが顔にかかって、絡まって、うまく立ち上がることができない。
ローブは今日は着てないからまだマシかもしれないけど。
うう…逃げなきゃ…逃げなきゃ…。
「お、おい大丈夫か?」
「やっ! ダメですっ!」
声をかけられたことである程度の冷静さを取り戻した私はスカートを直しつつ素早く立ち上がり、自分の両腕を抱く。
そして変態お爺さんをひと睨み。
「あ…いや。すまん。そういう意味じゃないんだ。いやほんと、ごめんて」
お爺さんは後頭部を掻きながら、申し訳なさそうに呟いた。
「ち、違うんですか?」
「ああ。その、用があるのは人間のお前じゃなくてゴーレムの方だ。…それも素材の意味でだ」
な、なんだそうなんだ。
それでも一応、椅子をお爺さんから少しでも遠ざけた場所に引き寄せそれに座った。
「まあ、改めて…話ってのはあれだ。ゴーレムの時のお前の身体の一部をいくらか売って欲しいんだよ」
「ええっと…まあ、内容にもよりますが」
お爺さんはまだ後頭部を掻きながら話を続ける。
なんだかすごくバツが悪そうな顔してるわね。
「自分から再生するミスリル並みの金属なんて今までなかったからな。今後、器具やらなんやらに使いたいんだよ。手だけで良い。オレの勘が正しければ取り外し可能なんだろう?」
「はい。いくらでも」
「頼めないか?」
うむむ…私の手を…か。
別に良いんじゃないかな、譲ってあげても。
こんなのいくらでも生えてくるし。
「わかりました、いいですよ。どのくらいの量必要ですか?」
「そうだな。とりあえず、あの一番でかい手を5個ほど……」
「そ、そんなにですか? まあ…良いですけど」
私はゴーレムの姿…それも3段階目に戻り、手を引きちぎった。お爺さんは袋を開けて構えてるからその袋の中に私の手を回復して生やしながら放り込んで行く。
あっという間に5個渡せた。
そしてすぐに人間に戻る。もちろん、先ほどまでと同じ18歳の姿に。
「こんなものでしょうか?」
「ああ。すまぬな。えっと___________ほれ」
お爺さんは袋をカウンターの下に置いてから、テーブルの上に置いてあった1億3600万ストンのうち2600万ストンを掴み取り渡してくれる。
「まあ、こんなものだな」
「そうですか。案外高いのですね、単価。無限に生えてくるのに」
「無限に生えてくることを踏まえてもこの値段なんだよ。もし生えてきたりしなかったら1個でも10倍はした」
「そ、そうなんですか…!」
私の価値って高いんだね。
正式な取引だし、断る理由もないのでそのぶんのお金は普通に受け取った。
やったね、結果的に武器4本が1億1000万ストンで買えちゃった!
「それじゃあ、私はそろそろ」
「ああ。変な勘違いさせてわるかったな」
「いえいえ。こちらこそ早とちりしてしまい申し訳ございませんでした。では」
私はドアを開け、このお店から出た。
---
「下着……白、だったな」
---
◆◆◆
「ただいま戻りました」
誰もいない部屋。
二人とも街で遊んでいるのかな?
いないなら……下着とか漁ったりしてみようか。
そう思って、引き出しに手をかけようとした時。
「ただいまー!」
「…あっ! アイリスちゃん帰ってるっ!」
帰ってきた、双子が。
私は慌ててベッドの上に飛び乗り、ちょっと休んでた感を出してみる。
「あー。おかえりなさいませ」
「うん、ただいまっ。もうアイリスちゃん用事はいいの?」
「はい。もう終わりました」
まあ、本当は渡してからが終わりなんだろうけど。
それにしてもいつ渡そうか。
ちょっとロマンチックな時に渡すのがいい?
それとも、もうすぐに渡しちゃった方がいいかな。
でも……なんかすごく感激されたいな。一応、私が頑張って稼いだお金な訳だし。うーん。
「アイリスちゃん、みて」
そう言うと、ロモンちゃんはローブを一枚広げてみせた。あれは…小さい私用の大きさだ。
「ちょっと高めのなんだけど、すごくいいの見つけたの! アイリスちゃんローブよく着るから、喜ぶかなーって」
「はい、どうぞ!」
ロモンちゃんとリンネちゃんが、それを横たわっている私の下まで持ってくる。
これは確かに高価そうなローブだ。
子供用だけど。
「いいんですか?」
「いいよ!」
「では遠慮なく……」
私は自分の姿を小さくし、そのローブを羽織ってみた。
着心地がいい。とてもいい肌触り。
「どう?」
「とても良いです…! ありがとうございます!」
ああっ、嬉しいっ!
この子たちは本当にゴーレム泣かせなんだからっ…。
そんな感謝の気持ちで心がいっぱいの私に二人が抱きついてきた。
「うんうん、この肌触りがいいよね」
「アイリスのお肌みたいにすべすべじゃないけどね」
もしかしてもしかすると、この二人も私みたいに変な意味で子供好きだったりするのかしら……?
なんかそんな気がしてきた。いや、そんなはずはない。
この二人が私みたいに変態なわけないじゃない。
「んー、アイリスちゃん、好きだよ」
「ぼくもだよー」
二人にとっては妹にそう言うか、あるいはペットにそう言うかの感覚で言ったのかもしれない。
だけど…流石にうるってきた。
「私も……大好きです! そ、その、二人にどうしても私から、渡したいものがあるんです!」
「ん? なにかな?」
二人は私からのき、距離を取る。
それと同時にベッド下に放っておいた袋を掴み、ベッドの上に持ってきた。
「えっと、もう少し私から離れてください」
「……? わかったよ」
二人はベッドから降りてくれた。
よし、出そう。今、もう出しちゃおう。
私は袋に両手を突っ込み、シルバーエンジェルの双剣とシルバーエンジェルの杖を丁寧に一つずつ取り出した。
さらに、イダテンの腕輪も。
「な…なにこれ?」
「…みたらわかるよ。相当な業物だね? ぼくは剣しか見れないけど、杖も同じデザインだし……。もしかしてアイリスちゃん…」
剣をずっと扱ってきたリンネちゃんにはもうわかっちゃったか。
「はい。この杖をロモンちゃんに。双剣と腕輪をリンネちゃんに。用意致しました」
二人は互いに顔を見合わせた後、驚いた表情のまま私のことをジッとみてくる。
「その…日頃の感謝を込めて。私から……です」
「…………」
無言のまま、二人は私をみてくる。
ななな、なんか怒らせるようなことした?
えっ…なんだろ、なんか___________
「「アイリスちゃん!!」」
刹那。
二人は私に勢いよく、武器を避けて横から抱きついて来た。それも同時に。
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次の投稿は2/1です!
#2/1 売った手50個を5つに変更しました。
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