第96話 私、人間になるのです!
「いよいよだね…」
「そうね、しっかり見守るのよ」
「「うんっ!」」
例の練習室で2mを超える私を囲んで、お母さん達は正座をしつつ、こちらを見つめてきている。
そして、ロモンちゃんの側にはロモンちゃんの古着や余分な下着一式が。
お母さんの側にはお母さんの古着や余分な下着一式が。
リンネちゃんの側には、過去のロモンちゃん達が来てた服が置いてある。
私がどのような身長で、どのような体型でもいいように複数用意してくれたらしい。さすがに、無理してでもロモンちゃんの下着をつけてみたいだとかは口が裂けても言わないし、考えもしない。…ちょっとだけ。
……そろそろ人間になりますか。
【で…では行きます!】
私はそう宣言した。
すると、ギフトの時と同じような、黒いような白いような光が身を包み、お世辞にも女の子らしいとは言えないこの巨体を段々と萎めていった。
◆◆◆
気づくと…気づくと…うわぁ!? 肌がスゥスゥするし、こ、こしょばいいッ…!
首をキョロキョロと動かしてみると、明らかに低くなった目線。
ていうか、ロモンちゃん達、そんなに私をジロジロ見ないでよ! は…恥ずかしい…。女の子を見るのが好きな私だけど、見られるのはは、恥ずかしいな…。
次に私は自分の手を見てみる。
細長く、綺麗な指…ピアノでも弾いてたんじゃないかってくらい、綺麗! まあ、私に楽器を弾いてた記憶は無いんだけど。なんてね? 自画自賛だよ。
肌の色は、普通に白人の人並…いや、それ以上に白わね。爪は緑色。これはちょっと気持ち悪いような…? マニキュアだと考えればいいかも。
足も自分で言うのはなんだけど、綺麗で、やっぱり爪は緑色。
んで、胸は…?
あれね、大きい方だけど大きすぎて困る程でもない、いわゆる丁度良い(より少し大きい)って感じかしら!
フニフニと、ちょっと揉んでみる。
……………。
それと、胸と胸の間に小さいけれど、緑色のハート型の刺青みたいな痣がある。これはゴーレムの時の名残かしらね。
あとは小石視点ができなきゃ見れないけど…見れるかな? あ、見れた。もう小石じゃないのに。
お腹はシュッとして括れがある。おへそはかすかに緑色に見えるけど、まあ、気にしない。
脚もえへ、美脚なんじゃない…? なんてね。えへへ。
お尻はまあ、普通かしら。
背中は…胸の間のハートの痣のように、これまた刺繍みたいに羽のような緑色の痣。
これもゴーレムの時の名残ね。
肩にはロモンちゃんの仲間の証であるあの模様がちゃんとついてる。
半魔半人になっても、契約を解かない限り、魔物状態のときは魔物使いの仲魔ってことになるのよね。完全に自由ではないけど、無論、それでいい。
それにしても……か、肝心の顔はどうなのかしら…!
まず…髪はパッツン切りの長めのおかっぱ。
髪の毛全体が同じ長さかしらね。色は銀髪…白髪? どっちって言えば良いんだろ?
目の瞳はこれまた緑色!
私は緑でできてるのかな?
でも問題が一つある。
頭の上に、ゴーレムの時と同じ、天使の輪っかがそのままついてて…大きさは私の頭部より一回り小さいくらいで_____
そ、そんなことは特長だと考えて、置いといて……顔全体的にはどうなのかしら? って…どっかで見たことあるような顔ね。というか、懐かしい…。いえ、どう考えても前世の私。
こう、ある男に『メガネが似合いそうなインテリ系の顔』って言われたことがある。
可愛いよりは美人系…って、何を自惚れてるのかしら、私は。
あれよ、久々に自分の顔を見た上に、ゴーレムから人間になったから、自分の顔が良いって勘違いしようとしてるのね。ああ、醜い醜い。
なんどかブスって、特定の人物から言われた記憶があるし、私はブサイクなんだってば!
ああ…せっかく天才に生まれたのに、顔が元のまんまとか……不幸ね。
「アイリスちゃん……?」
可愛い可愛い、めちゃんこに可愛いロモンちゃんが小首を傾げて私にそう、訊いてくる。
「はい、アイリスですよ」
ちゃんと声が出た。
念話でも近いような声を出してたきがするけれど、これは生の声。喋れるっていうのはほんと、素晴らしい。
「わあ、アイリスちゃん! おめでとう!」
可愛い可愛いリンネちゃんが、そう言って祝ってくれる。
皆んなは立ち上がり、私の元に近づいてきた。
お母さんは私に、お母さんの古着一式を差し出してきてくれる。
私の身長はお母さんと同じくらい。
ロモンちゃんとリンネちゃんより、頭、3/5個分くらい大きい。
天使の輪っかは除くよ。
お母さんの古着一式をお礼を言いながら受け取り、その場でつけてみる。流石にお風呂以外で裸なのは恥ずかしいからね。
ブラジャーはお母さんの方が1カップくらい大きいみたい。……2人もここまで大きくなるかな?
パンツを履くのはお母さんが美人さんじゃなければ、躊躇ったかも知らないけど、ありがたく履かせていただいた。私はノーパン主義ではない。
そしてシャツと、服と、長めのスカート。
どれもこれも、サイズはほとんどぴったりね!
ちなみに、私の外見年齢は17~20歳くらい。若い。
「わあ…アイリスちゃん、すごい美人さんだね!」
服を着終わった私に、ロモンちゃんはそう言った。
きっとお世辞だろう。
とりあえず、御礼を言っておこうね。
「あ…ありがとうございます。そ…そんなことはないとは思いますけれど…」
そう言った私に、2人は不思議そうな顔をする。
さらに、リンネちゃんがこう言った。
「ううん、すごく美人で可愛いよ? 鏡見る?」
リンネちゃんは自分の袋から、手鏡を出して私にわたしてきた。とりあえず、それを覗き込む。
映るのは、ただの私の顔。
「そ…そうですかね? 私、可愛いですか…あはは…いえ、お世辞でも嬉しいです」
私がしょんぼりしてるのを、今度はお母さんが励ましてくれる。
「本当に良い顔してるわよ? まあ、人間になったばっかりで自分に自信がないのはわかるけど、バッチリ美形よ」
「ま…またまた…」
謙遜する私にお母さんはズイッて顔を近づけてきて、耳打ちをしてきたの。
「(大丈夫、貴女は本当に可愛いわ。…うちの娘2人と並んで歩いても見劣りしないくらいに…ね)」
私の耳元から顔を話し、お母さんはウインクをする。
_____可愛い? 私、ほんとうに美人なの? 並んで歩けるくらい? えへ、えへへへへ。
白い肌に新しい感触。
目から顎までにかけて、一筋の雫がつつと流れ落ちる。
あ…あれ、私、なんで泣いてるんだろう?
ど、どうしてなのかな? わぁ…わ、わかんないや…。
「ふぅ………ふぇぇぇ…うああぁぁ…」
気付けば私は大泣きしていた。
なんで泣いてるのかわからない。顔がいいって褒められたのが、そんなに嬉しかったの?
わかんない、わかんないよっ……なんだろ、なんなんだろぉ…。なにか、なにか忘れてるような…。そんな虚しい_____
「あわわ! アイリスちゃん泣き出しちゃった…」
「何かおかしな事言ったのかな?」
「リンネ、ロモン。きっとアイリスちゃんは人間になれたことが嬉しいのよ」
そ…そうなのかなぁ?
そういうことにしておこうかなぁ…。
「大丈夫、アイリスちゃん?」
「な、なにかして欲しいことある? アイリスちゃん」
お優しい2人は私にそんなこと言ってくれる。
ど…どうしよ。
あー……
「ギュって…その…あの…」
何を口走ってるんだ、私は!?
これじゃあいつもの私じゃないか。
「抱っこだって!」
「いつものアイリスちゃんだね! ふふ、やっぱり中身は変わらないんだ」
そう言い終わると、ロモンちゃんとリンネちゃんは私に抱きついてくる。強く、強く。
胸だけじゃなくて、いろんなところが柔らかい。それにいい匂いがする。やっぱりこの2人は素晴らしい。
ふへへ。
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