松柏の名のもとに
星と菫
序
それは、その施設は、深い深い山奧に、まるでだまし絵のようにして、存在しておりました。
――学校法人『
わが日本が世界に誇る、とある大企業の会長が、莫大な私財を投じて造らせたそれは、まったく秘密裡に建てられて、関係者を除けば、人々はその存在さえも、知りうることは叶いませんでした。
『松柏学園』。
コンクリート
そのように徹底して
ですが必ず毎年、定員となる三十名の少女たちが、堅固な要塞の内側にある、巨大な
そして少女たちは、外界と隔絶されたこの無菌の環境で、純粋培養されるのです。
『松柏学園』。
中高一貫校として、六年間、在校生は学園内で寝食をすることとなるのです。
今年もまた、新たに乙女たちが校門を、そこまでに
そしてここにも、小さな胸を期待でぱんぱんに膨らませた少女が佇んでいました。
これは、この少女の、成長の物語。
まだ小さな雛にすぎない彼女が、温かな人々と触れ合い、学び、ときには対立し、やがて美しく羽が生えそろう、それまでの物語でございます。
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