『猟域の射手』

『猟域の射手』【序】





「――なあお前さ、どうして戦場で狙撃手なんかやってたんだ?」


 あれはいつのことだったか、仕事帰りの居酒屋で安酒を喰らっていたワンは、隣の席に座る同僚に、前から気になっていたことを訊ねてみたことがあった。


 普段ならワケアリの相手に対し余計な質問などしない王であったが、この時ばかりは酔いも入った勢いで、そんな事を訊いてみようかと――そう思ってしまったのだろう。なにより、寡黙で職人気質なその同僚のことを気に入ってもいたし、密かに尊敬してもいた。

 隣に座るのは、王と同世代くらいの無口な男だった。彼は突然の質問に不意を衝かれたのか、少し驚いたような顔を王に向けた。そしてやがて顔を逸らすと、困ったように笑いながら、


「――誰も、やりたがらないからさ」


 と、そう答えたのだった。

 この青年は王と同じく特警刑事であり、対異能戦闘部隊員にして狙撃班班長――名をペク・フォンハと言った。

 おそらくペクも酔っていたのだろう。この国に来てから、誰にも過去など語った事のない彼だ。普段ならこのようなやりとりは軽く受け流す。

 もしかしたら、先日自らの銃弾で仕留めた一人の異能者のことが、心に引っ掛かっているのかもしれない。その男はまるで、死んだような目をした狩猟者だった――。

 王は同僚の横顔をちらりと見やる。

 微笑んでいるような、泣いているような―――

 その時の寂しそうな横顔を、彼は今でもしっかりと覚えている―――。








『猟域の射手』



 ――狩猟者の挽歌は静かに奏でられる。

 得物を手にビルの屋上に立つその男は、数えきれないほどの明かりが灯った夜の街を見下ろした。

 己の躰は傷だらけ。対面のビルからは火の手が上がり、壊滅的な壁面から大量の煙を吐き出している。

 もはやその場に立っているのが果たして復讐のためなのか、それとも歪んだ怒りをただぶつけたいがためなのか、男は自分でも分からなくなっていた。

 けれども男は、得物を構えている間だけは、無心になることが出来た。

 立禅――「くう」に至らなければ的心を射止める事は出来ない。

 今宵は満月。だが、分厚い雲に覆われた空に月はかかっていなかった。


 死ぬには良い夜だな――――男はそう思った。





 特警刑事ペク・フォンハは早足に廊下を歩きながら、ミーティングルームへと向かっていた。

 彼にとっての仕事着――黒ずくめの戦闘装束を身に纏っている姿は異様ではあるが、随分とさまになっていた。黒いロングコート、黒い皮手袋、そして黒い軍用ブーツ。全体的に黒い。街中を歩いていたらさぞかし浮いてしまうことだろう。刑事というよりはむしろ、B級アクション映画の中に出てくる殺し屋のように見える。

 ――それに反して顔つきだけを見ると、あまり戦闘をこなすような人種には見えないかもしれない。清潔感もあり真面目そうな短髪の黒髪。そして四角い眼鏡の向こうには釣り目がちで知的な瞳。それらは見る者に対し、どこかペクがインテリゲンチュアであるような印象を与えていた。もし糊の効いたシャツと高級なスーツでも着こなしていれば、大企業や政治家に仕える秘書官だと言われても疑いを持つ者はいないだろう。

 しかし、こう見えても彼は、異能犯罪に対抗するための警察機構『特殊警察・対異能犯罪出動部隊』――そこに属する戦闘員の一人である。

 戦闘に長けた同僚達の中にあっても、ペクはひと際有能な隊員だった。彼は世界でも有数の技術を持つ狙撃手であり、そして傭兵として数々の戦場で死線を潜ってきたつわものでもあったのだから。「ミスター・ヘッドショット」「俯瞰視」「将校殺しオフィサー・キラー」――敵味方から付けられた通り名は数知れない。

 戦場で培った経験値と、特警の誰よりも優れた遠距離狙撃技術を活かし、ペクは刑事となった後もスナイパーとして様々な異能犯罪者を仕留めてきた。その実績を見込まれ、今では特警狙撃班の班長と遠距離射撃技術の教官を兼任するほどだ。

 以上のような経歴を持ち、隠密のため単独で任務に就くことも多いペクだったが、今回はある任務のために同僚とコンビを組んで仕事をすることとなった。そのパートナーとして白羽の矢が立てられたのが、居合と日ノ本剣術の達人、王少天ワン・シャオティエンである。

 王が大変頼りになるパートナーであることは、ペクも今まで一緒にこなしてきた仕事で充分に理解していた。彼らが二人組で任務にあたるのは、これで都合四度目となる。今回の仕事もきっとスムーズにいくものだろうと、ペクは思った。

 王の待つミーティングルームに着いたペクは、ノックもせず、無言で扉を開ける。

 扉を開けてすぐ視界に入るのは、二人だけで使うにはいささか大きすぎる会議机。そこに王が腰掛ける姿は見当たらなかった。

 ペクが目を脇にやると、同僚は入り口からすぐ横にいた。壁に沿って並べられた休憩用のパイプ椅子に座って、缶コーヒーを飲んでいる。

 王も他の特警刑事たちの御多分に漏れず、やはり黒のロングコートを着込んでいて、その下にはラフな開襟シャツ。茶色い長髪は戦闘の邪魔にならないよう、後ろに結ってある。頬の右側には十センチばかりも刻まれた古い刀傷がより一層武骨な風貌を特徴付け、そして腰には――――鞘に納まった日本刀。

 その武装を見ても分かるように、王は現代に生き残った剣士だ。銃器全盛のこの御時世に日本刀を振るう刑事というのも、なかなか貴重な存在だろう(とは言っても特警のメンバーには、彼らの勤める署の中だけでも、他に槍使いの女刑事や二刀使いの老人がいたりもするのだが……)。

「やあ」

「おう」

 ペクの簡素な挨拶に対し、王も手を上げて簡単に応える。

「待たせたか?」とペク。尋ねながら、王の隣に腰を下ろす。

 王は「別にそうでもねえよ」と笑った。コートのポケットからもう一本缶コーヒーを取り出して、それをペクに渡す。

「確かブラックしか飲まねえって言っていたよな。ほれ」

「ああ。相変わらず気が利くな」

「まあな。この商売、気が利かないと生き残れないってもんよ。戦場いくさばで命預ける仲間に恩を売っておいても損はねえだろ?」

 おどけた調子で王が言う。

「それで缶コーヒーか? 随分と安い恩だな」

 少し苦い顔で笑いながらペクが冗談を返した。

「しっかし、お前と組むのも久しぶりだな――どうだ、最近の調子は?」

「悪くはない。狙撃手たる者、常にコンディションは一定に保たれていなければならないからな。スナイピングに多大な影響を及ぼす」

 ペクのその非常に業務的な返答に、王も「やれやれ」と苦笑気味な顔を向けた。

「お前と話してると、いつもこんな調子だな。ま、現場だと頼もしいんだけどよ……。そういえば三日前にも、街で暴れてた肉体強化型の異能者を一撃で仕留めたってな。ドタマに一発だったんだろ」

 王は特別褒めるでもなく貶すでもなくそう言ったのだが、ペクはひどく顔を歪めた。

「あの異能者は薬物の多量摂取によって完全に錯乱していた。覚醒作用で感覚も鋭敏化され、警官隊による近距離からの一斉射撃はかすりもしなかった。四肢を撃って動きを止めようにも、痛覚が遮断されていて効果がない。あれ以上被害を増やさないためにも、一撃で脳幹を破壊するしかなかった」

「確か鋼線の網を軽々引きちぎって、象も眠らす麻酔弾十発以上喰らっても平然と動いてたっていうじゃねえか。既に一般市民の死亡被害も出てたし、妥当な判断だよ」

 王の言う通り、ペクに落ち度はなかっただろう。しかし――

「それでもやっぱり、悔しいよ。戦争のないこの国で人を撃たなければならないのは。いっそ機械になれたら、楽なのだがな……」

「馬鹿野郎、人間にしか出来ねえ仕事だよ」

 王が発したその言葉に、ペクも「すまない、そうだったな」と同意した。たとえ異能者であっても、相手は「人間」だ。ならば、同じ「人間」が全力で彼らを止めてやるのが道理というものだろう。機械になど、任せてはおけない。

 少しばかり辛気臭くなってしまったため、話題を変えようとペクが口を開く。

「それで王、お前のほうは最近どうだ? なんでも例の新米隊員とコンビを組まされていると聞いたが……」

 特警の隊員どうしは忙しく方々を飛び回っているため、署内でもなかなか顔を合わせる機会がない。お互いの近況報告も兼ねての質問だった。

「ああ、アイツか。最初はヒョロ眼鏡のもやしっ子だと思ったけどな――存外根性ありやがる。ありゃあ鍛え甲斐があるぜ」

 王はコンビを組まされた後輩について、嬉しそうに語った。本来新米刑事の育成など、面倒な仕事この上ないのだが、文句を垂れながらもその後輩について語る王は、どこか楽しそうだった。

 ペクは自分も一度会ったことのある、その真面目そうな新人の顔を思い出した。お目通しとして「部長」に連れてこられたその若者は、自己紹介の最後に「よろしくお願いします!!」と目を輝かせて最敬礼していた。他の隊員達はその初々しさを苦笑交じりで見守っていたものだった。

「確か『部長』自身が引き抜いてきた期待の新人だと、皆噂していたな」

「ケッ、あの上級官吏気取りな管理職オヤジの秘蔵っ子っていうのも最初は気に喰わなかったがな。お利口さんぶってるし、『部長』と同じ人種かと思ってたが……どうやらそうでもねえ。あの新米君、かなり現場向きの人間だよ」

 ――ただ、あの情けないゲロ吐きグセさえ治せりゃ文句ナシなんだがな、と王が締めくくった。

 王は「管理職オヤジ」などと散々なことを言っているが、ペクは「部長」に対してそれほどの悪感情を持っているわけでもなかった。管理職ゆえに現場との関わりが薄い「部長」が、根っからの実戦派である芒山隊長とは違い、戦闘部隊の隊員達からあまり好かれていないことも、ある程度仕方のないことだろう。それでもペクは「部長」のことを有能な指揮官だと思っている。戦争では指揮官の采配一つで、大多数の兵士の生存率が、大いに変動するものだ。そのような戦場暮らしが長かったペクにとっては、上官の有能無能は重要な死活問題だった。

「そう言ってやるな。その新米君をお前が預かることになったのも、確か『部長』の指示だったろう。良かったじゃないか、育て甲斐のある後輩が出来て」

「……ふん。まあ、せいぜいしごいてやるさ」

 王はそう言って、頬の傷を人差し指でぽりぽりと掻いた。

「――ところで、オレ達の仕事の話になるんだけどな」

 王は照れ隠しなのか、「後輩の話はもういいよ」という具合に話題を転換した。実際、今回の任務に新人の出番はない。ペクと王のコンビで仕事にあたるのだから。

「――オレとお前が現場主任って形で、囚人の護送任務にあたることになった」

「護送任務とは珍しいな。俺とお前で監視に付かなくてはならないほどの相手が……?」

「ああ、そういうことだ。俺が地上の警備、お前は高所からの狙撃を兼ねた監視――それぞれ複数名の隊員を率いて行うことになる」

 囚人を特殊収容施設に移す際、護衛を兼ねた護送任務が必要になることがある。最も警戒すべき事柄は、何と言っても異能者自身による脱走・逃亡である。移送のために外に出た一瞬の隙を衝かれ、逃走される――そういったケースはこれまでにも何度かあった。異能者達が持つ超常の能力を駆使すれば、複数の刑事に囲まれながら拘束されている状態でも、易々と包囲網を突破し、逃げおおせてしまうことだって充分にあり得るのだ。死ぬ思いをしてようやく捕らえる事が出来た犯罪者を、再び世に解き放すようなことは、絶対にあってはならない。

 また、連続殺人やテロ行為などの重罪を犯した異能者の場合、報復に命を狙われることも珍しくない。さらに護送対象が組織ぐるみの犯罪に係わっていた場合は、仲間達による奪還もしくは口封じのための襲撃――それらの可能性まで考慮しなくてはならないのだ。

「で、その護送の対象と言うのは?」

 ペクは王に対し肝心の質問をした。異能者の持つ能力によっては、警戒レベルが大きく上下する。彼らの特殊能力に合わせて、護送の方法――使用経路、隊員の配置、周囲への警告など――最善の選択をする必要があるからだ。

 王は立ち上がって会議机の上に置かれた書類の束を取ると、ペクに手渡した。

「ようやく被害者全員分の裁判が終わり、〝最重要異能犯罪者隔離施設インフェルノ〟での終身刑が確定した……――お前もよく知ってるヤツさ」

「こいつは――」

 書類に添付された護送対象の写真を見た瞬間、ペクの表情が強張った。

 その反応を見た王も、これ以上ないほど忌々しそうな表情を作って、


「ヴァイヒ=メルクーア……あの胸糞悪い〝瓶詰め野郎〟だよ」


 今回自分たちが監獄まで運ばなくてはならない者の名を口にした――。





 ――今から四年前、ペクと王、そしてもう一人の刑事はある事件の犯人を追うために、スリーマンセルでの捜査を行っていた。

 その事件こそが『S区婦女子連続失踪事件』――今回の護送対象、元某連邦共和国軍人であるヴァイヒ=メルクーアの行った、前代未聞の凶悪犯罪であった。

 異能者メルクーアは、戦争中体験したある出来事により〈自分の体、そして触れた物体を液状化できる〉という特殊能力を発現させた。戦場で行った悪行が査問委員会に知られ軍法会議で処刑されそうになった彼は、瀕死になりながらも異能を開花させ逃走に成功し、裏社会に身を置くようになった。そしてやがて、この国に流れ着く。先の大戦敗戦以降、様々な国籍の人種が移り住み、隠れ蓑となる犯罪組織も多く存在するこの国は、彼にとってうってつけの物件だったのだろう。そうして新天地を得たメルクーアはその能力を存分に利用し、己の下卑た欲望を満たすためにうら若い婦女子を攫い続けたのだ。

 被害者は全員で十五人(事件を捜査していた普警刑事達が殺害されたのも含めれば十八人)――拉致監禁された女性は皆、不定形のヘドロ状に変えられたあと「瓶詰め」にされ、死ぬまで弄ばれた。それだけにとどまらず、メルクーアは被害者の死後も「瓶詰め」をコレクションとして棚に飾り、飽きることなく愛で続けていたのだという。

 一般人はおろか普通警察の捜査班にまで被害者が出たこの事件に終止符を打ったのが、他ならぬペクら特警のメンバーだった。

 真夏の夜に行われた市街地での激闘と追跡劇。その末に敵をアジトまで追い詰め、ようやく動かぬ犯罪の証拠と、哀れな被害者達を確保することができた。

 もっとも監禁されたうち生き残った者は二人だけで、その二人もトラウマによる精神的な障害を発症し、現在も特殊施設に入院中である。メルクーアのしたことは決して許してはならない、まさに鬼畜の所業だった――。


 護送当日、ペクは目的地まで覆面車輌を走らせていた。助手席には王が座っている。彼らが今から向かうのは、まだ容疑の確定していない異能者や量刑が決定されていない異能犯が収容される特殊能力者専用拘置施設――通称『辺獄』。

 そこへ向かう車の中で、ペクはハンドルを握りながら事件当時のことを思い出していた。

「思い出すだけでも吐き気がする……。俺は奴の隠れ家に踏み込んで、泥欲に満ちたあの部屋を――〝瓶詰め〟にされた被害者達を見た」

 ペクは車の進行方向を見据えながら、半ば独り言のように、王に語りかけた。

 浸水する地下室で最終的にメルクーアと対峙し、捕縛に成功したのは他ならぬペクであった。彼はその際、メルクーアの悪意と異常性に直接肌で触れ、戦慄したことをしっかり記憶している。

「オレもあのあと現場検証で、変わり果てた姿の被害者を嫌と言うほど見たよ。ありゃあ到底人間の仕業とは思えねえ。今でも鮮明に思い出せる……あれからもう、四年も経ってるんだよな……」

 王は遠い目をして、窓の外を流れるビルの群れを眺めていた。

「ああ、四年だ。だがその歳月が、生き残った被害者や、殺されてしまった者達の遺族にとってどの程度の意味を持っているのだろうな。たった四年の月日で傷が癒されるのか、何かが変わるものなのか――――もしかしたらまだ、メルクーアを殺したいくらい憎んでいる者だって、いるかもしれない」

「……どのみちヤツは一生獄中生活だよ。〝あの中〟で何が行われてるのかは分からねえが、多分これから先――気の遠くなるほど長い時間――奴は自分のしたことを後悔し続けることになる」

 王の言った通り、『辺獄』で禁固刑に処されているメルクーアは、これからさらに厳重な施設へと移されることになっている。その護送の役目を、まさに彼らが任されているのだ。

 王が〝あの中〟などと呼んだ施設は、とりわけ凶悪な異能犯罪者が生涯閉じ込められる対異能者用の最高クラスセキュリティ特殊監獄。政府直轄の極秘施設のため正式な名称は存在しないが、異能者のレベルごとに区分けされた地下九層からなるその特殊収容ドームは、ダンテの神曲「地獄篇」にちなんで『インフェルノ』などと呼ばれていた。

 ペクは、入口までなら何度か足を運んだことのある、その場所のことを思い浮かべた。

「――――以前にも異能者の引き渡しで足を運んだことはあるが、あそこだけはどうにも慣れない。一歩たりとも足を踏み入れたくないと思うよ」

 ペクも王も、その施設の外観しか見たことがない。だが、まるで世界中の悪意を閉じ込めて蓋をしたような禍々しさが、灰色の壁の内側から――そして地の底から伝わってくる――そんな場所だった。

「囚人みんなイカレてりゃ、きっと看守もみんなイカレてる。あの中はアリス嬢ちゃんだってビックリするぐらい薄気味わりぃ『不思議の国』になってるだろうよ。噂じゃワケの分からん実験やら研究やら行われてるとも聞くし、〝地下〟のヤツらとは係わらねえのが吉さ」

「……関わることなんて無いだろう。俺達使いっ走りのことなど、上層部も〝地下〟の連中も、せいぜい猟犬か馬車馬程度にしか思っていないさ」

 皮肉を込めてペクがそう言うと、王も自嘲気味に口の端を歪め、「かもな」と同意した。

「それにしても今回の任務、本来ならエリゼも一緒に行動するはずだったんだがな……」

 王は、ある女性隊員のことを思い出し、口に出した。異能犯罪者の護送任務は、その異能者をよく知る者――つまりは直接敵と戦闘をした隊員に任されるのが通例である。そして今王の言ったエリゼという女性隊員も、メルクーアの逮捕時に、ペクと王と共に作戦を遂行したメンバーであった。

「四年も経てば色々と状況は変わる。あれからエリゼは別の支部に異動してしまったし、俺達の支部にも新人がいくらか入隊した……」

「確か旧皇都のほうに転属だったか――――首都圏以外の特警支部はどこも慢性的に人材不足だからな。あの嬢ちゃん、元気にしてるといいんだが……」

「彼女のことだ、きっと上手くやっているさ。あちらの支部で昇進したという話も聞いた。とにかく俺達は、今俺達だけで出来ることをするだけだ――」


 話しながら運転するうちに、やがて彼らは目的地に到着した。

『辺獄』など物々しい名で呼ばれるわりには、なんとも味気のない白い建物。行政機関だけでなく、国内の異能研究機関などの協力のもとに運営されているというその施設は、小奇麗で威圧感のない洗練されたデザインをしている。関係者以外にはとても犯罪者を拘置するための施設には見えないだろう。

 唯一施設の外観にそぐわないのは、敷地を囲む高いコンクリートの塀と、固く閉ざされた鉄の扉くらいか――。

 その正門前に停められた護送用の装甲車から、任務を控えた特警隊員達が武装し、展開している。ペクと王も護送車のそばに車をつけ、『辺獄』の前に降り立った。

「護送中の運転はオレが担当する。何かあった時、メルクーアの傍にいたほうが対処しやすいからな。ペク、お前は打ち合わせ通り持ち場に就いて、高所からの監視と狙撃班の指揮を頼む」

「了解した。他の狙撃班は既に、それぞれ俺が指示したポイントに配置済みだ。各自連絡を取り合って情報を共有しながら監視を続行する」

 そして定刻――仮初めの地獄の扉が開く。そこから吐き出されるのは、さらなる責め苦を負わされることを決定された、罪重き咎人。複数の刑務官に囲まれて連行される、ヴァイヒ=メルクーアの姿が見えた。

 メルクーアの使う〈液状化〉の異能は、自分が触れたものだけでなく、己の躰をも液体へと変えてしまうことが出来る。その能力を使っての逃走を防ぐため、彼は水を通さないポリ塩化ビニル素材の分厚い拘束着を頭の先からつま先まですっぽりと被せられていた。まるで宇宙服か防護服でも着ているかのようだ。

 両腕は自由に動かせないよう拘束着の内側にしまわれ、その中では親指どうしをくっ付けるようにリング状の指錠サムカフで両手が束縛されている。さらに服の上からは軍用の丈夫な結束ベルトが幾重にも巻き付けられ、上半身の動きを徹底的に制限していた。

 この密封拘束着と指錠は、ペクと王が今回の任務にあたって必要だと考え、特警の武具兵器開発研究部に制作を依頼したものだった。

「さすがに鴨志田の爺さんが頑張って作ってくれただけあって、なかなかのモンじゃねえか。アレだったら、あの気味の悪りい液体人間だって簡単に逃げ出すこたあ出来ねえだろうな」

 王が得意そうに言うと、ペクも頷いた。

 念には念を入れ、拘束着の内部と親指のサムカフにも、メルクーアの『異能』とその『特性』に対応したある細工が施されている。それはメルクーアが自身に能力を使用する際に発生する、ある「制約」を利用したものだ――。

 彼が自分の躰の一部(頭部を除く、手足・頚部・胴体など)を液状化する場合は、好きな部位を一瞬で液状化することが出来るが、司令塔たる頭部――脳髄――を含めた全身を液状化する場合は、四肢の末端から胴体、そして頭へと至るように徐々に液状化を進行させていかなくてはならない。その際の所要時間は早くても十数秒。

 これは実際に彼を捕縛した時の戦闘で判明した事実だった。この弱点を利用し、もし拘束用の指錠が液状化によって手から外された場合、すぐさまそれを感知して拘束衣の内側に高圧電流が流れる仕掛けになっていた。対象が液状化して逃げようとすれば、即座に電流によって気を失うか、最悪の場合は死に至るという、危険な仕掛けである。それでも、凶悪な異能犯罪者を世に放ってしまうリスクを考えるなら、こうするより他はなかった。

 足枷を装着させられ自由に歩くこともままならないメルクーアは、よろよろと不自然な足取りでようやく刑事二人の前に辿り着き、引き渡された。

「ヴァイヒ=メルクーア。お前をこれより対異能者用の特殊監獄に連行する」

 ペクは、四年前の連続失踪事件解決時にメルクーアと直接対決、そして対話をしている。自分と同じく古巣を戦場に置くメルクーアについて、色々と思うところもあった。だが、感情を押し殺し、極めて業務的な口調で接している。

「久しぶりだな瓶詰め野郎。こっちはてめぇの顔なんざ見たくもなかったがな……」

 冷静なペクとは違い、王はぶっきらぼうな口調だ。もっとも、頭部まですっぽりと拘束着に包まれ、その下に目隠しのアイマスクまでされているメルクーアの顔を拝むことは不可能なのだが。当然、視界を奪われているメルクーアのほうも二人の顔を見ることはできない。

 ――それでも、異能者は二人の声にぴくりと反応する。

「誰がお迎えに来てくれるのかと思えば――――その声、忘れもしない。あのときの糞忌々しいスナイパーとカタナ使いじゃないか」

 メルクーアは声を聞いただけで、目の前にいるであろうペクと王を瞬時に判別した。彼は四年前、それも慌ただしい戦闘中に聞いただけの二人の声を、決して忘れてはいなかった。恨みとともに脳内で幾度も幾度も反芻した、その声を――。

「あの日一緒だった金髪のメス豚ザウはどうした? 鉄格子の中で過ごした数えきれない夜、何度貴様らを殺し犯す夢を見たことか……!!」

 くひひ、と笑うメルクーア。

「楽しい夢の続きは、冷たい独房の中で見るがいい。どうせ、数日もしないうちに悪夢に変わる」

 ペクは冷酷に言い放った。どうやら四年という月日は、とうの昔に壊れてしまった犯罪者を改心させるにも反省させるにも、短すぎたようだ。

 それを聞き、怒り猛るメルクーア。

「黙れ! この拘束衣さえなければ今すぐ貴様ら全員ドロドロに溶き殺して、囚人用の汚い便座の中にでも流し捨ててやるところだッ……!!」

 いくら吠えようと、厳重な拘束のうえ、複数の特警隊員に囲まれたこの状態で何が出来るわけでもない――所詮は負け犬の遠吠にすぎなかった。メルクーアは屈強な特警隊員に両サイドからがっしりと掴まれ、なされるがまま、不様に連行される。

 この時、ペクと王は、まさか護送任務があっという間に終了することになろうとは、思ってもいなかった――――。





 とある企業ビルの屋上――そこに特警隊員、氏田 庸右うじた ようすけは配置されていた。

 彼は今回の任務に、ペク率いる狙撃班の一員として参加している。周囲を監視し、護送車に近付く怪しい人物や車両があれば随時無線で報告、緊急の場合は狙撃によって脅威を排除するのが、彼の役目だ。地上の護衛班を後方支援する重要な役割だが、それを与えられ、こなすだけの実力が、氏田にはあった。

 照り付ける太陽を一層近くに感じるビルの上で、汗を袖で拭いながら氏田が双眼鏡を覗き込むと、ちょうど『辺獄』の正門が見えた。そこに居るペクと王、その他にはハタ98式5.56mm自動小銃――国内最大手の機械メーカー、『秦重工』による軍用アサルトライフルで、特警や自衛軍で標準装備とされている――で武装した隊員の姿も八名、しっかりと観察できる。まさにベストポジションだ。

 ちなみにこの場所を氏田に指示したのもペクである。経験豊富な狙撃手であるペクは、現場の下見の際、護送ルートを一往復して、そのあと地図をさっと広げて見ただけで、襲撃者が選びそうな狙撃ポイントと、こちらからその狙撃拠点と護送車を監視しやすいポイントを割り出してしまった。そこへ相手より先に駒を配置しておけば、敵からの遠距離狙撃を阻止できるだけでなく、攻勢に出る際も有利になる。将棋やチェスでも「相手の指したいところに指せ」などと言うが、ペクの戦略もそれに近い考え方だった。

 とはいえ、実際今回の布陣は第三者の狙撃や襲撃を警戒するのではなく、万が一逃げ出した護送対象を追跡、もしくは最悪射殺するための意味合いが強いのだが――。

「やれやれ、みんな神経質になり過ぎだよな。いくら相手が強力な異能者だからって、こんな物々しい警戒態勢を敷くなんて……」

 そんな独り言を小声で漏らしながら、狙撃手氏田は双眼鏡を覗き続ける。

「お、出てきた出てきた」

 彼の言う通り、双眼鏡越しには『辺獄』の扉が開き、中から防護服のような拘束衣を着た人間が歩いてくる様子が見えた。周りには刑務官が四人、四方を守るように囲んでいる。

「(顔見えないけど、あの真ん中がメルクーアか……そういや、資料の顔写真でしか知らないけど。ペク班長はあいつと直に戦ってるんだよな。それにしてもすげえ格好してるなぁ、動きにくそう……この夏場だし絶対暑いだろアレ……)」

 半ばどうでもいいことを考えながら、監視を続行する。不真面目なようだが、これが氏田なりのリラックス法で、「余計なことを考えている」ほうが集中力や狙撃能力が高まるという性質を、彼は持っていた。その証拠に、しっかり周囲への警戒も怠っていない。

「(この警備じゃ、逃亡の心配も襲撃者の割り込める余地も皆無だよな。矢でも鉄砲でもどんと来い――ってところだ)」

 双眼鏡の向こうでは、いよいよペクと王の前にメルクーアが引き渡され、何やら言葉のやり取りをしているようだった。

 ここからは、さらに状況に注意する必要がある。

 腕時計は正午過ぎを指し、日も高くなり気温も上がってきた。日射病や熱中症になってはたまらない。氏田は太陽光の遮断と隠密迷彩も兼ねて、コンクリート迷彩色のシートを被ろうと、手を伸ばした。

 その時――――


「なるほど……良い場所を取っているな――」


 背後から突然、声を掛けられた。

 低く落ち着いた、物静かな声。

「(ばかな、一体何者……――)」

 途中まで考えたところで、氏田の思考は一瞬停止する。後ろを振り向くことも出来ない。なぜなら既に彼の首には、冷たい刃物がピタリと当てられていたからだ。あご下に引っ掛けるよう突き付けられた匕首あいくちの存在を意識しながら、氏田はただただ驚愕していた。

「(ど、どいうことだ……気配なんて全く感じなかったぞ……)」

 背後の男は淡々とした声で、氏田に質問をした。

「……この場所、お前が自分で選んだのか?」

 氷のような冷たい殺気。

「ち、違う……」

 逆らう事など出来なかった。氏田は完全に捕食される側に回った小動物の気持ちを、今、理解できた気がした。

「ならば、指示された、か――」

「そ、そうだ……」

「そして他の場所にも、お前のように狙撃班が待機させられている――」

「ああ……」

「有能な指揮官――それも腕のいい狙撃手――がいるわけか。事は早く済ませたほうが良さそうだな」

 その男は、全く感情の動きの感じられない喋り方をしていた。おそらく、こちらの話など聞いてはもらえない――氏田はもう、説得や命乞いなどというコミュニケーションを、この男の声を聞いた瞬間から諦めていた。

 こうなったらヤケである。半分捨て鉢になりながらも、反撃のため素早く振り返ろうとする。

「お前……ッ!! 一体何をするつもっ……」

 だがその叫び声は、途中で虚しく掻き消された。

 敵は無言で、「必要な情報は聞き出した、もう用は無い」とでも言わんばかりに、真一文字に匕首を引く。その無情な一閃は頸動脈を切断し、気道にまで及ぶ深い傷を、氏田の喉に残す。

 ぱっくり開いた傷口から「ヒューッ」と空気の漏れる音がし、狙撃手氏田庸右は静かに絶命した。

 男は氏田の死体には一瞥もくれず、手に持っていた大きな黒いケースを足下に置いた。

 黙ってそのケースを開けると、中には黒い金属の部品のようなものが。それを一つ一つ丁寧に取り出し、慣れた手つきでてきぱきと組み立てていく。

 出来上がった得物――それはおそらく、弓だった。

 ただの弓ではない。ごてごてと付属部品が付けられ、機械的な外見――。一見アーチェリーで使われる洋弓のようにも見えるが、和弓のように二メートル超えるその大きさは、まさに「規格外」という言葉がふさわしい代物だった。男はその奇妙な得物を構えると、弓身に取り付けられたスコープを覗き込んだ。

 レンズ越しには、ヴァイヒ=メルクーア――――憎き仇の姿が見えた。

 距離にして約四.八町(五二四メートル)。

「二射、必要か――」

 男はぼそりと呟いた。

 太腿にベルトで固定された矢筒から、二本の矢を取り出す。一本目を番えて、きりきりと弓を引き、ためらうことなく手を放した。ひょうと放たれた矢は放物線を描き、中空へと消えてゆく。

 この一射は男にとって、謂わば二射目を確実に中てるための「儀式」のようなものだった。通常ならば届かぬほどの距離まで、次なる復讐の一矢を貫き通すための「儀式」――。

 男は得物を構える弓手ゆんでに対し、馬手めてに控え持っていたもう一本の矢を、弓に番えた。

 一射目の時とは比べ物にならないほど研ぎ澄まされ、一点に凝縮された殺気。目を瞑り、息を「コォォオ」と吐き出し、集中力を高める。


「南無八幡大菩薩――――全ては今日この日、この一矢のためだけに」


 たった今――――猟域に住まう射手いてが、牙を剥いた。





 ペクと王の護送任務は、一瞬で終了してしまった。

 矢だ。

 ああ、これは矢だな――と、ペクは思った。

 門から護送車までのわずかな道のりの間――メルクーアが『辺獄』を出てから一分もしないうちに、それは起きた。

 たった今、ペクの目の前で、メルクーアの頭部に〝矢〟が突き刺さったのだ。

 文字通りの、弓矢の〝矢〟である。ペクの常人離れした動体視力は、矢の棒の部分に朱墨で彫り込まれてある「天誅」の二文字に、一瞬だけ目を奪われた。

 矢は拘束着に包まれたメルクーアの側頭部を貫通し、血と肉片、脳漿を撒き散らしながら反対側へ通り抜けて行った。

 あまりの唐突な出来事に、周りの特警隊員も刑務官も皆、茫然としている。そんな中、素早く行動に移ったのはペクと王の二人だけだった。

「ペク! 二時の方角だ!!」

「分かっている!」

 ロングコートの裡に隠し持っていたレンジファインダー(標的との距離が分かる観測用スコープ)を瞬時に取り出し、矢の飛んできた方向を覗る。ここから五〇〇メートル以上離れた企業ビルだ。

「(あそこは確か、氏田が監視を受け持っていたはず……!!)」

 しかし、そこに居るはずの人影をしっかりと確認する前に、ペクの眼はまず反射的に、ある物を捉えた。自分に向かって飛来してくる物体――。

「(あれは――――――矢)」

「あっぶねえ!!」

 次の瞬間、王がペクの前に身を挺し、飛んできた矢を、抜刀して払い落した。

「敵の姿は視たか!?」

「ちらっとしか見えなかったが、弓の様な武器を携えていた。今はもういない」

「くっそ!!」王が毒づいた。続いて、射られたメルクーアのほうに目を移す。

 道路に倒れているメルクーアは、まだかろうじて生きていた。しかし、矢によって半壊した頭部からは「中身」が止め処なく流れ出し、そのうえ誤作動でスイッチの入った電流が、断続的に彼の躰を責め続ける。

「あ。あ。あひゅ。ひぅぎゃっ」

 奇妙な断末魔とともに、ビクンビクンと大きな痙攣を繰り返すメルクーアの躰からは、肉の焦げる匂い――。

「お、おい! はやく遠隔スイッチで電流を……」

 王が隊員の一人に呼びかける。

「やってますよ! でも、誤動作のせいか、スイッチが切れないんです!!」

 痙攣をやめないメルクーアの躰は、自動的に――いや、本能的というべきか――能力を発動させ、それが電流との相乗効果でさらに彼を苦しめる。躰の所々が、トロトロのスープのように溶け出す。その「肉体のスープ」は、激しい痙攣にともなって、破けた拘束着の穴から、じわじわと流れ出てくる。

「ウッ……!」

 特警隊員達も刑務官も皆、手で口を押さえながら一歩後ずさった。

「こ、こりゃあ電気椅子の百倍えげつねえ……」

 さすがの王も、この光景には目を覆いたくなったようだ。けれど、ペクだけはそこから目を逸らさず、痙攣のたびに撥ね上がるメルクーアの躰へと近づいて行った。

 液状化した躰は、もう確実に助からないという事実を必死に拒否するかのように、耐えがたい苦しみを受け続ける。

「常人ならとっくに死んでいるな……執念の力か」

 あれだけの悪行を犯しておきながら、悔恨の念も無く、そのうえこの状況でまだ生にしがみ付こうというのか――。

「小銃を貸してくれ」

 ペクは地上担当の護衛班の一人に向かって手を差し出した。

 隊員は困惑しながらも、ペクの手に秦98式自動小銃を手渡す。

 小銃を受け取った彼は、そのまま無言で足下のメルクーアにマガジンの中の装弾数三十発を撃ち尽くした。

 5.56mm弾によって破壊され尽くした電流発生装置は完全に沈黙、メルクーアの生命活動も有無を言わさずに停止させられた。

 大量の返り血と溶けた肉片を浴びていることを気にも留めず、ペクは同僚の方を振り返る。

「氏田と連絡が取れなくなっている。すぐに狙撃ポイントへと向かうぞ、王」

「さすがは戦場上がり――――肝っ玉が違うぜ」

 この凄惨な状況でいつも通りの平静を保っているペクを、王はいつも以上に頼もしく、そして少し恐ろしく――感じた。

 護衛班のメンバーのうち半分を現場に残し、検死官を含む監察隊が来るまで待機させる。そしてもう残り半分を引き連れて、狙撃手と剣士の二人は迅速に襲撃犯の追跡を開始した――。






(【破】に続く――)


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