エクスXユニット
斉藤言成
プロローグ
プロローグ
俺はいま電車に揺られていた。
ローカル線の古めかしい電車の車内には人の数がまばらで、俺の他には数人しか乗客がいない。
そんな電車に乗って俺が向かう場所は、【
俺はこれからそこで新しい生活を送ることになっていた。
この先の事を思うと、俺の気持ちは電車と同じように微かに揺れる。そんな思いを紛らわすように、俺は窓の外へと視線を向けた。
外の景色は緑が芽生え始め、冬を越した様々な植物たちが息づき始めている。
季節はもうすでに春。色々なものが新しい事を始めているようだ。
(俺も頑張らないとな)
急斜面の山肌に顔を出している植物たちを見ながらそんなことを思っていると、突然視界がブラックアウトした。
耳をつんざく音が車内に響く。トンネルに入ったようだ。
暗い時間が続く。だいぶ長いトンネルだ。
「あっ」
ふと俺の中で何かが浮かび上がる。
(そうだ、思い出したぞ……たしかこのトンネルを抜ければ海に出たはずだ。ということは、もうすぐ着くのか)
そう思った途端、胸の奥の方からじんわりと懐かしさが込み上げてくる。
金海沢。そこは昔、俺が住んでいた場所でもあった。
(両親が亡くなってばあちゃんに引き取られるまでいたから、いまから10年前くらいの話か。思い返すとずいぶん前だけど、まさか高校生になって戻ってくるとは思わなかったな)
俺が昔の事を思い返していると、車内に響いていた轟音が唐突に途切れた。
そして視界が一気に開け、窓の外に海のパノラマが広がった。
久しぶりに見るその風景は新鮮で、落ち着かなかったはずの気持ちも自然と穏やかになっていく。
「しかし、海だけは昔と変わらないな」
俺はそうつぶやくと、かつての金海沢にはなかったモノへと視線を向けた。
海に浮かぶ巨大な戦艦。そして、その戦艦の甲板に並ぶ巨大な人型ロボットたち。
あのロボットたちは地球を脅かす敵であるエイリアンと戦うための兵器で、一般的には【エクスユニット】と呼ばれている。
俺はそのエクスユニットの姿を自分の瞳に焼き付けるように見つめた。
(――俺はあれに乗るために、ここへ帰ってきたんだ)
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