第5話神様の東西横綱合戦~縁結びのご利益ウルトラC

act.5 大神神社 前編

〜 テディベア ルー

西の横綱・大物主様を大いに語る の巻〜




『 “ パック ” だよ、ワコちゃん。』


「 パック? パックって どういうこと?」


九頭龍様の慰労会の10日後のことだった。

あさって、キューちゃん(九頭龍様) の御神徳をグレートアップして賜るために

“ 奈良の大物主様 ”に会いに行く、とルーが言い出した。

『時をあけずに参拝するのがポイントだよ。いいね、ワコちゃん。』


そんなわけで 今、私たちは 奈良JR桜井線の電車の中。三諸の神奈備(みもろの かんなび)と称されてきた、三輪山を御神体とする大神神社に向かっている。

この大神神社には “ 日乃本.西のスターゲート ・三輪の三ツ鳥居 ” がある、とルーはいう。


三輪山は大物主大神様が鎮まる御神体山。古来より人々から崇敬され、“ 一木一草に至るまで神が宿る山 ”として、古より 一切、斧を入れることなく守られてきた。その大自然の霊威に触れ 神域に足を踏み入れると 誰もが身が引き締まり、心 洗われる思いがするだろう。

他の追随をついに許さなかった希代の陰陽師 安倍晴明は大神神社の主・大物主大神様のことを“知恵と魔術の神”と言っている。


『大物主様の御神徳は 縁結び・農業,産業の殖産・技術,芸術の育成・医薬・酒造、更に 漁業・航海に至るまで 実に幅広い。なんでもあり 、オールマイティーの神様だけど 本来、大物主様のお力の根本を成すのは 物と物との縁を取り持ち つなぐ力 、つまり、“ 結び ” さ。

ご縁とは 男女の間のもの、と思いがちだけど そうじゃないんだ。おしなべて 全ての物、なんだよ。人と人, 動物, 物品, 金, 動産 不動産をはじめ、有形・無形の財産, 仕事, 会社,病院, 国 、あげたら切りがない。それに 神様や仏様とのご縁=仏縁だってある。

この世はご縁で環っているといっても過言じゃない。ワコちゃんとボクもご縁があって、今 こうしているわけだし。

大物主様の“ 物 ”はこの世に存在する ありとあらゆる物、万物の事だよ。大物主とは“ 大いなる者 ”という意味なんだ。万物を育成し 形にする、唯一無二の神様。

大物主様の つなぐ力・結びの力 無くしてお願い事は形になりにくい。だから、伊勢のアマテラス様とは また別格で八百万の神々の中心的存在なんだよ。』と、ルー。


神様同士も結んじゃうんだ. 凄いよねぇ、大物主様は。並のパワーじゃできないことだよ。ボクには ちょっと無理…と、ルーは しきりに感心していた。


「あっ‼ そうか、わかった!大物主様って大国主様の和魂(にぎみたま)ことでしょ?だから、年に一度、八百万の神々は出雲大社に集うのね。大物主様=大国主様が神々の中心的存在であるが故に…」

『その通り!物に限らず 神様の力も同じこと。単独よりも組み合わせる、つまり、大物主様の結びのお力で神様と神様をつなぎ、“ パック ”にすることでお互いの力がパワーアップするんだ。

1+1=2ではなくて100になるくらいにね。だから、ワコちゃんたち人間は より大きな御神徳を神々様から賜われるんだよ。シングルよりもダブルの方が強力だもの。だから、祈願してから大願成就するまでの時間が短縮されるんだ。例えば、基本的に1年かかるところが半年で済んじゃったりとかね。』

そう、ルーにいわれて 私はようやっと気づいた。なぜ 、ルーが 時を置かずに大神様を参拝しようとしたのかを。

「ルー、私ね なぜ あなたが急に 大神神社に行くと言い出したのか、その理由が 今、わかったわ。“九頭龍様”に祈願した、良縁成就を形にするためだったのね。ありがとう、ルー。」

ルーは照れたような顔をして“ 縁結びのウルトラC さ ”そう言って、『 えへへ 』と笑った。

でも、なぜ 今日でなければならなかったのか?

その問いにルーは大神神社に行けばわかるよ、と答えた。


JR三輪駅で下車した私とルーは日本最大級の三輪の大鳥居に出迎えられ、雄大な自然を拝する古神道の息吹を感じながら、参道を行きニの鳥居へと歩を進めた。

「ワコちゃん、大物主様が神使をお使わしになったよ。大物主様って本当に親切。ボクらを歓迎してくださってる。ほら、そこにいるよ、ヒバの木の下。ピョコピョコ跳ねる金色の光。』

二の鳥居を通る時、“ ワコ エストレーラ ガイエス エストリアス です ”と名のると 何処からか 金色の小さな光が来た。私の足元でピンポン球のようにバウンドしている。


『ワコちゃん、大物主様のお指図で、今日一日 ご案内役を務めます、っていってるよ。』


「まあ、なんて可愛らしいんでしょう!はじめまして、ワコです。お世話になります。小さな金の光さん、よろしくお願いしますね。あなたのお名前は?」

と尋ねたら、ルーが代わりに答えた。名前は 未だないんだって、と。


私はこの小さな金の光を 素早く動くもの =“ ラピ ”と呼ぶことにした。

「では ラピさん、ご案内 お願いします。」

ラピと名付けた、その小さな金色の光は、私たちを浮世の穢れを祓う“祓戸社”へ 連れて行き、心身を清らかにさせた後、手水舎で手と口をすすがせ、真っ直ぐ拝殿へと向かった。拝殿の奥には大小の鳥居を並べた三ツ鳥居、私たちが 目指す “ 日乃本.西のスターゲート・三輪の三ツ鳥居 ”がある。


「ルー、三輪の鈴の音が聴こえる。今日は何かあるの?」


何か儀式が始まるのだろうか、宮司様をはじめ 巫女さんや神職の方々が拝殿に集うておられる。

時刻は午前10時。お神楽が始まった。神使のラピが私たちの足元で ぽぽん ぽん、ぽぽん ぽん、とリズムをとりながら 楽しそうに 弾んでいる。

「ワコちゃん、今日は 卯の日。大神神社の神使、ウサギ達のお祭りなんだ。」

私はルーにいわれてはじめて気づいた。今日は6月25日、卯の日であることを!

『ボクが今日、ここに来たかった理由、わかった?今日は夏至の後(のち)の はじめの卯の日。


陽が中天に登る時、西のスターゲート・三輪の三ツ鳥居のエナジーが1年のうちで 最も高まるんだよ。』


「なるほど、そうだったのね。ガッテンしました」


『三ツ鳥居の拝殿に入るには 、まず、祈祷殿で御祈祷を受け、大物主様の和魂にご挨拶して 玉串拝礼をしなければならない。その後、ご神体である三輪山を拝殿から拝む。大神神社は古式を今もなお、守り伝えている。そういう決まりなんだよ。』


私たちは祈祷の申し込みをするために参集殿へ。中に入ろうとして戸を開けたその時、あの金色の光=ラピが私の右肩をかすめて入ってきたかと思うと 参集殿入口 正面にある ‘ なでウサギ像’の中へ吸い込まれるようにスッと 入って、同化した。

迎えに来てくれたのは このコだったのね、ウサギさんだもの、ピョコピョコ跳ねるわけだ。

私は “ ご案内ありがとう、ご苦労様 ”と、たくさんの人に撫でられてツルツル、ピカピカに光る 、

‘なでウサギ ’に感謝した。


祈祷の申し込みを済ませた私とルーは祈祷の順番を待つ間、境内にある笹百合園にいた。大神神社のご神花・笹百合が今を盛りと 可憐な花を咲かせている。


ウサギのお迎えの次は 何が起こるのかな?きっと何か楽しいことが ステキなことが待っている!


勝手にそう思い込む私であった。

そして・・・大神神社の主・大物主大神様は その期待を裏切らなかった。



~つづく~


次回 神様の東西 横綱合戦~縁結びの御利益ウルトラC~大神神社 後編は良縁をゲットする

極めつけの婚活方法と心得、ご披露します。


Se e y o u l a t e r ! From, ルー

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