子兎の人間関係編

とある兎と亜龍との関係

継続は力なり(住岡夜晃)



sideゲント


「それではギフトゲーム”造物主達の決闘”の決勝を始めるぜえ!」


 俺の登場にどよめく観客を無視して拡声の恩恵を片手に高らかに告げる。


「今回の審判はサラマンドラのコミュニティに遊びに来てたら面白そうなゲームしてたんで勝手に審判として参加することに決めた飛び入りの”月の兎”の俺ちゃんがやってやるぜ」


 月の兎が審判をするという事で先ほどとは別のどよめきが起きる。さっきのどよめきがなんだあいつ?みたいな感じであったが、名乗りを上げた事で幼い”月の兎”が審判するという事に驚きと喜びの方向に流れている。

 お蔭で俺をとっ捕まえて引きずり下ろそうとしていたサラマンドラの連中は頭を抱えたり、やってくれたなとこっちを睨んでいる。例外として笑い転げている年上っぽい亜龍の娘くらいか。あとで楽しく話が出来そうだ。


「そんじゃあ、決勝に残った奴を紹介だ!北側5桁のコミュニティ”イーヴァルディ”からリトイ!もう一人は珍しいことに北側6桁のコミュニティ”正宗”から・・・・・・無銘?え?これ名前?」


 疑問に思ってそいつを見てみるとフードを被り顔を布で巻いて徹底的に招待を隠している超怪しい人物が無言で頷く。本名かどうかは知らんがどうやらそれで登録したらしい。


「それは失礼。じゃ始めますか」


『ギフトゲーム名”造物主達の決闘”


・勝利条件

一、対戦プレイヤーのギフトを破壊。

二、対戦プレイヤーが場外に出た場合

三、対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合(降参含む)


・敗北条件

一、対戦プレイヤーが勝利条件を一つ満たした場合。

二、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。


宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、”イーヴァルディ”と”正宗”はギフトゲームに参加します。

                                     ”サラマンドラ”印』


 契約書類を読み終えた瞬間、プレイヤーの激突が舞台に響いた。




sideサラ

 コツコツコツと暗い石造りの道を進むと牢の警備をしているものが頭を抱えているのを見てやはり来るべきじゃなかったか?と思いながら牢番に一言言ってから、目的の牢の前に立つ。


「あれ?次期”サラマンドラ”の頭首様がなんでこんなとこに?」


 なにもないはずの牢屋の中でフカフカのソファーに寝っ転がり、うちのコミュニティのものである本に目を通しながら甘味を貪っていた子兎は私を見るなりなんでいるの?と言わんばかりに聞いてきた。

 なんで牢屋が個人の部屋並に私物で溢れているのだろうか?


「それはこちらのセリフだ。審判として月例祭を盛り上げるのは構わないが、勝手に審判にならないでくれ。というかそもそも君一人か?」


 それを聞くとニシシシと笑いながら当然と言わんばかりに一人で来たといい。続けて


「あんな面白そうなこと関わらない理由はない!」


 自信満々に後ろめたいことはないと勝手に審判やっていたことで牢屋に入れているのにもかかわらず言いきる。これを子供特有の無謀さだと父は怒っていたがどちらかというと。ここまでだったらやっても問題ないというズルい大人のような笑みだ。これは絶対に反省しないな。止めようとしたらむしろ燃え上がるだろうと考える。


「ーーーおーい。サラさんだっけ?サラ姉ちゃんと呼んだ方がいいかな?」


 少し懲らしめる方法を考えるつもりが没頭していたらしく声をかけられてからそれに気づく。これじゃあまだ組織は継げないなと内心で愚痴りなんだと子兎に聞く。


「そろそろ帰ろうと思うんだけど、出ていい?」

「ダメに決まってるだろう。まあ、その牢から出れるんだったら好きにするがいい」

「話がわかるね。サラ姉ちゃん!それじゃ!」


 鍵がかかっていたはずの牢の扉を針金のようなものだけですぐに鍵を開け、私物をギフトカードび全て入れてから出てくる。少々見くびっていたらしい。


「そういえば名乗って無かったね俺は玄兎。ゲントでいいよ」

「知っていると思うがサラという。よろしくなゲント」

「よろしくう~。まあ、もう帰るけどね」

「ゲントよ。帰る前に一ついいか?」

「なん?今日は母さんのシチューの日なんでそろそろ帰んないとマズいんだけど」


 飛び出そうとしていたゲントを引き止め聞く。


「なんで今日はここに来たんだ?」


 あ~、そのことね。とどう説明しようか兎耳をヒョコヒョコさせて考えるゲントは少し時間が経ってから答えを出す。


「敵情視察かな?」


「なに?」


「単純に俺は今よりもうちのコミュニティを盛り上げたいと思ってるからね。月例祭とかギフトゲームをいろいろ見て自分が頭首になったら今はうち主催のゲームはないけど、いつか月例祭とかで思いっ切り盛り上げるのさ!」


 ニシシシちょっと格好つけすぎたかな?と照れで赤くなった顔を隠しながら(髪や耳も染まってるのでバレバレ)、高らかにあばよーっと叫んで飛び出していく。


「変わった奴だな」


 あの悪ガキを見逃してしまったことは問題だろうが、問題を起こしても解決して後日きちんと何らかの形で謝罪しつつ双方のコミュニティに利益のある話を見つけ出すか作りだすあのウサギはそういう形でうまく世渡りをしているような奴だから大して問題はないだろう。顔の広さだけでも階層支配者並とでも言われるほどの人脈、なんだか憎めないキャラからみのがされてる点も多い。事実、牢屋に入れていたのも多少反省したら帰させるためのもので大した意味もない。・・・・・・ん?なにか忘れてるような?


「・・・・・・あ、コミュニティの本を盗まれた」


 途中で気づいた事実に慌てて、追いかけるも後の祭りすでに帰ったという報告を受ける。

 次会うときはきっちり絞らないとな。

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