名付けの儀式

side俺

 あれから月日が経ち、コミュニティの活動に口がはさめる程度に知恵がつき考えるようになった今日この頃。今日は残念なことに俺の名づけの儀式の日である。さっさと名前つけるだけならともかくうちのコミュニティ全体が御目出度いとお祭りになるらしい。子供が少ない上(今の所俺が最年少)に一つの区切り目?らしいのでお祭りになるのだ。それになんだか知らんが俺の頭首としての才覚とやらが発揮されてるとかで、両親が言いふらしていろんな意味で盛り上がっている。

 盛り上がるだけならともかく、なぜあいつらは恩恵がないと勝手に哀れんでたくせに掌返したように喜べるんだろうか。

 あれか?この前勝手に”    ”のコミュニティ行ったときに魔王退治に巻き込まれて、魔王退治の片棒担いだからか?ほとんどよくわからない魔王だった上にたまたま拾ったガラクタでゲームクリアとかいまいちついていけない事件だったなあれ。


 いや、そんな事どうでもよくて問題は


「この服もいいけど、やっぱりこっちかしら?」「いえいえ、やはり頭首様の子息なのですからこちらのお召し物が」「それだと少々地味であろう。ふむ。これなんかどうか?」「それだと派手すぎるであろう」「いやしかし」


 母含む、女使用人集団に着せ替え人形のごとく遊ばれてることだろう(※とっくに儀式で着る服は決まっているため完全にただの遊び)。それと母様なんで女物のスカートを持ってニコニコしてるんですか?まさかそれ着せるつもりじゃないですよね?え?ちょっとなんで扉締めるのそこの使用人!逃げないためって、いやなんでみなさん女物持ってるの?え、ちょ?!アッーーーーーーーーーーーー!!




side長


『これより、育ちゆく子への祝福と我らの主神への報告の儀を始める』


 私にとって最も記憶に残るであろう夜は、私の宣言で始まった。我が子が勝手に名づけの儀式と呼ぶ儀は、実は名もないただの10歳になった子に名前を付ける儀式と言う名目の宴会であり、我らの主神への報告と名前を授かる子へのこれからを祝う祭り(建て前)として、コミュニティの内輪だけで行う儀式だ。他のコミュニティも呼んで我が子を自慢したかったが流石に前に親バカとして散々怒られたため泣く泣く我慢したのだった。

 帝釈天様への歌と踊りの奉納が始まったのを見ながら感慨深く思う。早かったと。

 子が生まれてから短くも早い10年が経ったが自分の子には驚かされっぱなしだった。


 恩恵のないと他の子供に嗤われた時に殴りあいの喧嘩で勝ち、他のコミュニティを招いた誕生会で行方不明になりいつの間にか招いたコミュニティの重鎮と仲良くなっていたり、いきなりコミュニティの長になると言いだして教えた事をどんどん吸収してコミュニティの方針に口を挟んで来たり、魔王の仕業に見せかけた事件を起こして鬼姫連盟に追いかけまわされていたり、突然いなくなったかと思えばドッペルゲンガーの魔王退治に巻き込まれ、なおかつクリア条件の一つを見つけ出していたり、白夜叉様ともいつの間にか知り合っていたり、七大妖王の一人と面識があるらしいことを匂わせていたり他にもいろいろな事件を起こしてたり解決していたりと我が子ながら喜ばしいのか悲しむべきなのかわからないような成長をしていた。


 ・・・・・・育て方間違ったのか?なんか大半は問題ばっかりだと気づいて若干凹んでいいたが、いつの間にか奉納も終わり祭壇には我が子が上がっているところであった。


『それではそなたの名をこの場で授けよう』


 いつもはぽやぽやしている嫁もこの役割に徹しているせいか雰囲気がまるで違う。若干固いのはやはり我々が決めた名前を本人に告げることに緊張しているからだろう。


『”玄兎”』


 我が息子への親からの最大のプレゼントは、この瞬間に渡されたのである。



Side玄兎(ゲント)

 俺の新しい名前は玄兎というらしいです。母親が祭壇から降りてから拡声のギフトが宿った道具を渡され、一言頼まれた。ここで何言おうか決めてなかったし、無茶振りだろ・・・・・・。無難にコミュニティのリーダーになると言ってもなんか面白くないし、変に期待させられるのも嫌だし(自分の力でなるつもりだがそれは結構後になるだろうから今から期待されたら好き勝手に動けないし)、なにより普通すぎる気がする。

 あ、いいこと思いついた。


『俺の将来の目的は、立派に育って帝釈天様をぶっ倒すことです』


 その瞬間、誰もが呆けた顔をしていたが理解が進むにつれて、ある空気が場を包む。


(((流石に見過ごせないぞこの餓鬼)))


 どう見ても反逆宣言ですしね。さて、ブチ切れた大人たちから逃げますかw


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る