第1話 事故

俺の名前は上杉 影虎。見てのとおり普通の高校生(世間一般的に言えばただのぼっちでヒキニートなんだけど)だ。

今日は金曜日、俺は遅めの朝食をとり、相棒の五代目パソコンと格闘していた。

「ピンポーン」

ん? 誰だこんなときに?

「ピンポーン」

「はいはーい」

ガタッ

俺は勢いよく立ち上がり玄関へ走っていった。


―――その時犯した過ちに気づかぬまま。


ガチャ

「白猫宅急便でーす」

「ごくろうさんです」

「毎度ありー」

「かーちゃんからだ、これ。 なになに餅を作りすぎたから送っといたよ。食べといてねー♪。 って今何月だと思ってんだよ···」

「まあ、せっかく送ってくれたから食べようか···」


その時おれの目に入ってきた光景はあまりにも残酷で未熟だった俺には十分すぎるものだった。


――飲みかけのジンジャーエールがパソコンにそれをぶちまけていた。


「·········ぎゃあーーーーーーー、ジンジャーエールが!!!甘くて美味しいジンジャーエールが!!!俺の···俺のパソコンに必殺のジンジャースマッシャーをぶちまけてやがる!!!!」

冷静になれ影虎!!クールになるんだ!!まだ死んではないはずだ。電源ボタンを3秒間長押しして···

「pc応答してくれ、pc···ピーーーシーーー!!!」

はっ、叫んでいても意味はない。落ち着くんだ上杉影虎クールになれ。と···とりあえずティッシュで拭きとらなければ。

「生き返ってくれ···頼む···」

俺は何時間拭き続けていただろうか···すでに手遅れだと気づいていながら···


――何時間か経過···


「終わった···俺の青春···」

パソコン絶対お前の仇は絶対とってやる···

「そう! かーちゃんの名にかけて!!!」


「・・・」


気晴らしに散歩でも行くか···


下界は俺にかまわず相変わらず美しかった。さっきまでの出来事が嘘みたいに···


「······チクショーーーーーーーーーー!!!」

俺は無意識にそう叫んでいた。


前に走る暴走トラックに気づかぬまま···


一輪の花が今、無造作に


―――散った。

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