形見分け(2)

「その人が普段使っていたものがよく送られるって、見たよ」

 迷っていると、今日は参加している河原崎さんがこっそり教えてくれる。のんびりした雰囲気と外見だが、さすが僕らの中で社会人としての常識ランクは2番手。ちなみに最下位は今は亡き相模だった。だってあいつ小学生女児と友達疑惑があるからね。あれ、まだ疑惑だったか。しかし、普段使っていたものかぁ…部屋がそのままだから、なんかあさるみたいで気が引ける。

「迷ってても仕方ないよな、どれどれ。どんなジャンルを持っていたか俺がちゃんとチェックしてやるから安心しろよ」

 伊藤が机を開けて中のものを取り出しているが、お前は何を探す気なんだ。一応机の上にちゃんと出したものをきれいに並べているのは偉いけど。水原も我こそがコレクションを見届けてやろうと対抗心を燃やしているが、君もう行動が男友達だよ。怖いから言わないけど。

「うーん……」

 とりあえず本棚から本を取り出し、適当にぱらぱらめくってみる。本好きだし。形見としても手頃?なんじゃないかな。しかし、相模の本棚は、マンガ以外は時代小説が主で、ミステリー好きの僕の琴線には触れないものばかりだった。あとは、…郷土史?地元についての歴史の本がいくつか。あいつの郷土愛はどうやら本物だったらしい。しかし郷土史って、なんか売れる相手の範囲めっちゃ狭いよね。その分高いけど。…こんな本あったんだ。付箋とかつけてるのを見ると、観賞用でなく、きちんと中も読んでいたらしい。相模、知的。僕はあんまり郷土愛自体はないから、これはパスかな。次。

「……あれ、アルバム?」

 違った。本棚の隅の方に、小学校の時の文集が2冊置いてある。うちの小学校では、4年生のとき、全員が作文を書いて、それを文集にまとめるという慣習?があったから、多分それだろう。よく今までとってたな。相模物持ちいい。僕の中での相模の評価が本棚を見るだけでどんどん上がっていく。でも、なんで2冊?……表紙から判別するに、1つはどうやら、2個上の学年が4年生のときのものらしい。そういえば、葬式で挨拶したな、2個上のお兄さん。たぶんあの人のかな。なんで並べて置くのかはよくわからないけど、きっと相模家にはそういう風習があるとそう納得しよう。……それより、小学校4年生の時の自分がどんな文章を書いてるか、そっちが気になる。形見分けを探す前に、ちょっぴり小休止といこう。

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