友人の葬式にて(4)
「……あれ、でも、伊藤、会ってなかったんだ。俺さっき相模のお母さんから、息子は皆さんとよく遊んでもらっていて、本人も最近1番の楽しみにしていたんです……ってお礼言われたんだけどさ。最近って言うから、年1回のあれではないよな、じゃあ伊藤あたりが普段から遊んでたんだろう、って思って適当にうなずいちゃったんだけど」
……なんだか疎外疑惑にまた暗雲が漂ってきた気がする。いや、僕一人が蚊帳の外なのが嫌だっただけで、今の話だと伊藤、三浦は集まっていないし、いいのか。
「まぁ、俺たち以外にも、相模と仲いい奴がいてもおかしくないしな。なんか寂しくはあるけどさぁ」
「でも、今地元に残ってるのって、私たち以外にいたっけ」
「同級生以外なら、いるんじゃないか?ほら、例えば、神社の息子って先輩がいたけど、あの人あそこの神社で今宮司やってるらしいし……」
……というか、情報通はどうした、伊藤。
「伊藤なら、最近の相模の交友関係も耳にしてるんじゃないの?」
「最近、小学校の方によく行ってた、とは聞いてるけどなぁ」
聞いてるのか。それはそれで怖いよ。……でも学校?酒屋が?まあ行ったら駄目とは言わないけど。とりあえず、相模の言っていたという友達が小学生女児でないことを祈ろう。
結局その場では思い出話とお決まりの近況話に終始して、その後、相模の友達の話題が出ることはなかった。しかし、このまま変わらずにずっと全員が揃うわけではない、というのを実感したのは皆同じだったのだろう。伊藤がしみじみとした口調で切り出す。
「なんか、やれることはやれるうちにやっとこう、って気分になったわ。なぁ、仕事も忙しいとは思うけど、また集まろうや。年1回だとあと何回会えるかわからん」
「そうだね、仕事の具合によるけど、また来る。河原崎さんも呼んで、またみんなで集まろうよ」
「仕事、忙しいのか」
「うーん、まだ要領が掴めない、が正しいかな……」
「おい3年目(笑)」
なにせ、普段の交友関係とはまた違う感じの人相手の仕事、だしなぁ。意外にこっちと一緒ではあるんだけど。
「刑務所の中で働いてるんだっけ。どんな感じなのか、全然分からないけど、やばい奴いっぱいいそうだもんな」
「面接室でしか話さないけど、みんな一応こっちは尊重してくれるし、普通の人ばっかりだよ。でも、看守は無理だなって思う。あと、刑務所の中でこんなんだったら出たときどうなるんだ、って人もいっぱいいる。刺青と、小指のない人にもだいぶ慣れたかな。最近、電車の中で刺青してる人の隣の席はよく空いてるから、ありがたく座ることが多いよ。別に近寄ったらかみつくわけじゃなし」
「普通にしゃべってるけど、それ、全然普通じゃないから!」
…なんだろう、ほら、向こうもこっちも、自分が尊重されなかったら怒るし、いいことがあったら喜ぶっていう、そういう部分は一緒なところがあるって意味で。ただ、違うと感じるのは価値観と優先順位。
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