友人の葬式にて(1)
最寄りの駅に着くころにはもう昼前になっていた。電車から出てホームに降りた瞬間、むっとした空気と蝉の声に包まれ、スーツを着ていることもあり、余計に暑さを感じる。改札を出て、誰もいないバス乗り場で、駅前なのに屋根のないベンチに座り、1人でバスを待つ。ようやくこの田舎にも次第に近代化の波が押し寄せてきたようで、僕が小学生の時に1時間に1本だったバスは現在30分に1本の頻度で運行されるという、目まぐるしい進化を遂げていた。最初からこの本数なら、きっと僕の父親も引っ越しを決断したりはしなかったんじゃないだろうか。……そうなったのはほんの数年前だけれど。そもそも1時間に1本のときでもいつも大して人が乗らず、今もバス停にいるのは僕1人の状態だというのに、この路線はなぜ本数を増やすことにしたのか、そもそもどうやって運営を維持しているのかという根源的な謎の解決にいそしんだが、結局バスが来るまでに答えは出なかった。
冷房が効いたバスの車内に乗り込み、座って外を眺める。なんで暑いところから涼しいところに移った時のほうが汗が出るんだろうという次なる疑問が浮かぶが、どんな結論に達してもあまり意味はなさそうだという予感がしたので途中で考えるのをやめた。ほかのことを考えよう。考えるべきはやっぱり相模のことだろう。
亡くなった相模は、小学校の時の同級生だった。陽気なお調子者で、走るのが早くて、学校でのマラソン大会ではいつも1位をとっていた、気がする。高校を卒業した後は実家の酒屋で働いていて、年に1度の友人の集まりの際は飲み会の場に各種の酒を提供してくれる、そういう意味でもなくてはならない存在だった。雰囲気を盛り上げるのもうまく、よく笑う奴で、体もがっちりしていたし、会った時もいつも通りにふるまっていたからどこか悪いなんて気づかなかったが、本当は1人で病と闘っていたのだろうか。…やばい、なんだかちょっと実感と悲しさが沸いてきた。気づいてあげられなかったなら、申し訳ないと思う。そんなことを考えながら窓に映る自分の顔を見ると、自分でもわかるくらいにしょんぼりした表情をしていた。
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