刃、覚悟を込めて。
「ふはははははははははっ! さぁ、真っ二つに斬って見せろ! できるものならなぁ!」
ベィがバカ笑いを上げながらアイの体で腕を振る。その腕は肘から先が変化しており、鍵爪のついた昆虫の腕だった。
真上から振り下ろされる腕を『粉砕する者』で防御。悪魔の恐ろしい膂力に足元のコンクリートに罅が入り、僕の前進が止まる。
押し合いになり、僕の足が止まる。周りに残る悪魔たちが、コレを好機とばかりに一斉にこちらに向かってくる。
「はいそこまで! 二人きりのダンスを邪魔するのは野暮だよ! 野暮!」
イリスが叫び、『
「雑魚を散らしとく! そっち止めといて!」
使えるだけの攻撃魔法を同時に展開しながらの、相棒の心強い言葉。
「ありがと……ねっ!」
それに返事をするとともに反撃。刀身を傾け、ベィの腕を脇へと受け流す。体制が崩れた所で切り上げの一撃。
ベィが踊る様に身体を捻って回避、ついでにまだ人の形を残している腕の軌跡に無数の小さな光弾が生成、衝撃と高熱により対象にダメージを与える『
回避は不可能。急所を左腕でカバー。篭手が砕ける事は無かったが、装甲を伝わった高熱が皮膚と筋肉を焼き、衝撃は骨に亀裂を残す。痛いけど手は動くので良し。
剣が重い。張り付いたべィに蹴りで応戦。魔術障壁で防がれる。勢いそのままにバックステップ。ベィが追いすがる。イリスの術式が発動、僕とベィの間に雷撃の壁が発生。正面から突っ込んだベィだったが、障壁により無傷。しかし足を止める事に成功。二人の魔力が衝突しあう凄まじい光が辺りを照らす。
自動回復により、腕の傷が瞬時に修復される。自分の思考で治す前に悪魔の肉体が勝手に修復しちゃったから、使おうと思った魔力を強化に回す。まだまだ全然戦える。
前を見据える。イリスの魔法は発動中、この光にまぎれて攻撃をしかけるっ!
横に薙ぎ払う一閃を仕掛ける。ベィの差し出した左手の先に障壁が生まれたが、お構いなしに強化魔法『
鎧を内側から破壊する程の勢いで全身の筋肉が膨張する。改造された人間に過ぎない筈の僕の腕に、鉄をも両断する超膂力が与えられる。
一歩。あまりの踏み込みに僕の履く戦闘用軍靴がアスファルトを踏み割り、埋没する。
小さな体に発生した超膂力の全てを、脚や腰、背中から肩、そして腕を介して、余すことなく……むしろ捻りや体裁きによって増幅して剣に伝え、振りぬく!
魔力と悪魔の肉で強化された超筋力がベィの結界を力で粉砕し、その向こう側の悪魔の肉体に向かう。
「ほう」
ベィが嘆息の声を上げる。
『粉砕する者』の刃は彼女の体、差し出した左手を真っ二つにして胴体に。胸に侵入した刃は切れ味では無く重量と速度を持って肋骨を粉砕、肺と心臓を引きちぎり食い破って反対側へと抜ける。
そのまま足に力を込めて下がる。打ち合わせた訳でも無く、いつも通りの連携としてイリスの『
前進、今度は縦。
アイの形をした頭の脳天に刃が直撃、落雷となったそれはそのまま頭蓋を叩き割って落下する。
強化された感覚が破壊された頭部も、零れる目玉も、勢いで噴き出した血と脳症も、全てをコマ送りの様に僕の脳裏に焼き付ける。
頭を抜け、胴体を引き裂く。身体を十字に分割されたベィの体が地面に落ちる。
剣を振るって付着した血を払う。入れ替わりと言わんばかりに、イリスがもう一度止めの『
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