第84話 現場

「だいぶ進んできましたね」

高崎くんが言う。

進捗状況が僕らのアプリで確認できる。

大和くんが歩様認証でだしたリストを警察の皆さんがすごい速さで当たってくれている。


「そうですね、もうすぐ終わる感じだね」

僕は言う。

もうこれは時間の問題だろう、というところまで進んでいた。

そしてこれで見つからなかったら他の方法を考えなければいけないけれどたぶん大丈夫だろうと思っていた。


「最後に一件見ておきますか?」

高崎くんが言う。

そう、僕らはプログラムを組むのが仕事だが、現場を見ておくと着想がわくということがあるので、安全であれば是非見ておきたい。

安全であれば・・・


「たしかに、それがいいかもしれないね」

僕は言う。

安全であれば見たい。

安全であれば・・・


「現場!私も行きたいんだよ!」

ヒカルちゃんが言う。

確かに彼女も見ておいた方がいい。

彼女の場合はカンもいいので見ておいた方がより良いアイデアが湧きそうだ。

安全であれば・・・


「私は何かあったときのために残っておきますね」

大和くんはそう言った。

さらっと逃げたようにも見えるが、彼がここに残ってくれるのはかなり安心感がある。

サーバが落ちた時彼がここにいてくれると心強い。


「そうだね」

僕が言う。

実際彼がここにいてくれるのは助かる。

全員やられてしまった場合いろいろなものが止まってしまう。リスクとリターンからちょうどいいところなのではないかというところだった。


「やった!現場!!」

ヒカルちゃんが喜んでいる。

彼女は天才プログラマだが全然引きこもりではなくかなり活動的だった。

移動も全然苦じゃないタイプだ。


「遠足じゃないよ?」

僕が笑う。

一応注意しておく必要がある。

ある程度危険があることだということは理解しておいてほしい。


「なにかあったら佐々木に怒られちゃうからなぁ」

僕が言う。

そうヒカルちゃんはこの大学の最年少教授の佐々木の娘。

あまりそういう危険な目には合わせたくない。


「私が守ります!」

高崎くんが言う。

この大学出身で日本最強の美少女格闘家であるところの高崎くんが言ってくれるならまぁ大丈夫かな、という気がしてきた。

何度か彼女の動きを見ているが彼女に勝てる人がいるのであろうか、というレベルではある。


「まあ、そこまで言ってくれるなら」

僕が言う。


「やったんだね!楽しみ!」

ヒカルちゃんが喜ぶ。

ピョンピョン飛び跳ねている。

みんなでお出かけというテンションだ。


「たしかに現場を見ておくと、今後の設計に役に立つからね」

僕は言う。

これは圧倒的に差ができる。

データサイエンス界隈でも技術力が高いことも重要だが業界知識の理解も重要なことだとされている。


「ユーザーがどういう風にソフトを使うか想像するのはかなり大事なんだ」

僕が言う。

どのぐらい使いこなせているのか見ているとほんとうに開発が進む。

僕らのシステムは複雑なのでどこでおもいもよらないうごきをしているかわからない。


「そうなんだよ!!」

ヒカルちゃんが言う。


「わかりました!行きましょう!」

高崎くんが言った。

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