第80話 分担

「きたよー?できた??」

ヒカルちゃんがそう言いながら研究室に入ってきた。

今日も楽しく中学校に行ったみたいだった。

そして放課後はここでプログラムしていくのが日課となっていた。


「お、ヒカルちゃん!」

僕が言う。

彼女の進化は著しい。

どんどん吸収していく。


「できましたよ!」

大和くんが言う。

彼女にたいして聞こえるように言った。

彼もまた彼女からいろいろ吸収しているようだった。


「お、やった!見たい!!」

ヒカルちゃんは言った。

彼女はこの大和くんのプログラム。

歩様認証プログラムを楽しみにしていた。


「うん僕も見たいね」

僕も言う。

もちろん僕も楽しみにしていた。

これが成功すればかなりおもしろいことになる。


「今回はこの人だけを探せばいいのでこういう感じになってます」

大和くんが言う。

今回唯一残っているリーダーのことだ。

この人だけ探せばいいのでだいぶ軽い。


「なるほどね」

僕は言う。

大和くんが歩行が似ている人をリストアップした。

たくさん出てくる。


「70パーセントだと結構いるね」

僕は言う。

いまの僕らの実験量だと、特定の一人をポンと出すことは難しい。

しかし、警察官との協力があるので、それで十分なのだ。


「そうですね、かなりゲインが緩いです。でもこれ以上絞りたくないですね」

大和くんは言う。

これはセンサなどの調整に使う言葉で、絞ると誤認識も増えてしまう。

実験数が少ないので、アルゴリズム側でこれ以上絞るのは危険だ。


「うん、わかった、それはこっちで調整しよう」

僕が言う。

そう、今回はチーム戦、ヒカルちゃんが人物の歩行だけを取り出し、大和くんが犯人候補をリストアップし、僕が捜査補助プログラムを書いている。

ここから先は僕が工夫した方が良い領域になってくるだろう。

そして僕の得意分野と言える。


「え?どういうことですか?」

高崎くんが聞く。


「うん、一応70パーセントでリーダーと思われる人物のリストは出しておくんだけど」

僕は説明する。

70パーセント以上の人間を全部探すのだが、それぞれ類似度がことなる70パーセントから100パーセントの間に分布している。

ということはこれらすべてを同じ順番で行くべきではない。


「怪しい順でルート最適化していくってことだね!」

ヒカルちゃんは言った。

そう、ルート最適化に、この類似度のパラメータを強めに含める。

そうすれば、かなり無駄がなくなる。


「その通り」

僕は言う。

今までの僕のルート最適化は、その警察官の位置から近い順にだしていくと言うものだったが、さらに複雑にする。

こういう計算を人がやるのは無理だ。

ここでやっとアプリを作っていた真価が発揮される。


「そんなことできるんですか?」

高崎くんが聞く。

それは自分たちでやろうと思うと、とてつもなく大変なことだった。

考えなければいけないことが増えすぎるし、全ての情報を把握することはもはや人には難しいだろう。


「そうだね、多分できる、そしてもうちょっと賢くできる」

僕は言った。

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