第53話 書く

「さすがに紙の資料で回ってたら日が暮れちゃうから、アプリは僕が作ろうかな」

僕が言う。紙でやっていると結局効率がかなり悪くなる。せっかく大和くんとヒカルちゃんが効率を上げるものを作ってもそこがボトルネックになってしまうと効果が出ない。


「先生が書かれるんですか?」

高崎くんが僕に質問する。

今二人のタスクはいっぱいなので空いているのは僕しかいない。ここは僕が書くべきだなと思った。


「そうだね、わりと得意分野だしね!」

僕は高崎くんに答える。そう、これは僕の得意分野の一つでもある。UIも僕の得意な部分の一つであった。データ解析とUIは密接な関係があるが、仕事がフロントとバックエンドで別れる事が多く、両方得意な人は少ない。


「ほんとですか、楽しみですね!」

大和くんが言う。なかなかこの研究室でプログラムを書く機会が減っているから、久しぶりと言える。昔は色々作って見せていたけど、こういう役員的な仕事が増えて前よりはずっと減っていた。


「たのしみ!」

ヒカルちゃんも楽しそうにしている。

彼女も僕たちのブログで勉強していたと言うことだから、結構僕のコードも読んでいるはずだった。


「やっぱり佐鳥先生すごいんですね!」

高崎くんが言う。レベルが高いと言う二人から期待されているのを見て、そう判断したようだ。自分から見ると全員がすごすぎるんですが、と付け加えていた。


「この年齢の准教授まで上がった人で、ゴリゴリプログラムかく先生なんてめったにいませんよ!」

大和くんが説明する。確かにそうかもしれない。わりと僕は書いた方がいいと思っているタイプだ。プログラムを書くからこそ思いつくアイデアと言うのがたくさんある。


「へー!」

高崎くんが嬉しそうに聞いている。

自分の所のリーダーが褒められているのを聞くのは悪いきがしないのだろう。


「まあ、簡単なものね。iPadでボタンを押すと、自分の位置から近い犯人が映ってる監視カメラに行けるソフトね」

僕はみんなの期待が上がりすぎているのを察知して、簡単なものを作ると言うアピールをした。


「ルート最適化アルゴリズム??」

ヒカルちゃんが話を聞いて驚いていた。


「そうだね。楽しみだね」

大和くんもうんうんと頷いている。


「期待をあげすぎないでほしいなぁ。こっそり作ればよかったなぁ」

僕は上がりすぎたみんなの期待に対して言う。上がりすぎた期待を超えるのは難しいし、そういう時にやらなくていい余計な実装をしてしまいがちだ。


「先生がやりやすいようなAPIをつくるんだよ!」

ヒカルちゃんが提案した。それはかなり助かる。圧倒的に時間が短縮できて、こちらの僕がやった方がいい作業に集中する事ができる。


「お、ありがとう」

僕は言う。


「私も二人のサポートします」

大和くんが言う。


「心強いね!」

僕が言う。


「よし!私は資料での捜査を続けますね!」

高崎くんが言った。

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