第42話 データをもらう

「そうですね。いまは捜査員が、映ってそうな防犯カメラをお借りして目視で見ている感じですね」

高崎くんが、脱走犯捜査についての現状について説明した。それは伝統的な捜査方法で、マンパワーを最大限に活かした作戦だった。


「さすがにそれはしんどいね」

僕が相槌をうつ。それはどう考えても大変だ。今までよくできていた、というぐらい大変な事だ。僕みたいに体力のない人間では大変すぎて思いつかない。


「しんどいんです!」

高崎くんがテンションをあげて同意した!そういう捜査に参加したことがあるのだろう。納得感がすごい。彼女ほどの体力があっても大変ということはよっぽど大変なのだろうな、と思った。


「一旦そのデータ全部もらってこよう」

僕が言う。警察が見る事ができるデータをいったん一箇所に集める必要がある。それができないとただデータがあるだけでは何もできない。


「わかりました!関係部署を回ってもらってきます!」

高崎くんがパッと立ち上って言った。彼女のフットワークの軽さは見習うべきものがある。気が付いたらもうドアのところまで移動していた。


「あ、ちょっと待って!ハードディスクとかでもらってきちゃダメだよ」

僕が気が付いて、高崎くんに言う。説明が足りないような気がしたからだ。データをもらってくるというのは意外と簡単ではない。


「え、違うんですか?」

高崎くんが驚く。普段のデータのやりとりのUSBメモリでそこだけもらってくるようなイメージだったのだろう。自分用の資料ぐらいならそれでもいいけれど、監視カメラのような大量のデータはそれで持ってくると管理できずに大変なことになる。


「権限をもらって、クラウドサーバーにダンプしたいからね」

僕が説明する。量が多いこともさることながら、今後もリアルタイムでデータを収集したいので、ある程度そう言う仕組みを作る必要がある。


「クラウド??ダンプ??」

高崎くんが専門用語に戸惑う。


「うん、関係者とアポを取って詳しい話になったら僕に電話してくれる?それで見当がついたら、うちの研究員につないで彼にやってもらうから」

僕がつまりこう言うことだ、と説明した。クラウドサーバにダンプ、つまり送ってうちが簡単に整理できるようにすると言うことだ。


「大和さんですか?」

高崎くんが質問する。


「そうそう、難しいことは大和くんがやってくれる」

僕は同意する。こう言うサーバ関係のことは大和くんが強い。


「ヒカルちゃんの面倒も見てくれますしね」

高崎くんは大和くんについて説明した。


「そうだね、さっそくヒカルくんの力を借りるかもしれないしね」

僕は言う。そう、このデータ整理に関してヒカルちゃんはかなり高い能力を持つ。もし、興味を持ってくれれば手伝って欲しい。


「え、そうなんですか?」

高崎くんが質問する。


「彼女の得意分野だからね」

僕は微笑んだ。

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