第15話 素直な思考

「え、どうするんですか?」

高崎くんは聞く。


「ビッグデータを使うんだ!」

僕はそう言って笑った。


===

「ビッグデータを使う??」

高崎くんは不思議そうな顔をして僕に聞いた。


「そう、ビッグデータを使って解像度を上げるんだ。それが最新の超解像の研究だね」

僕がそう説明する。これはここ数年のトレンドだ、ディープラーニングが登場しいきなり画像解析の精度が上がったからだ。それの応用例として超解像が選ばれることが多い。


「超解像・・・ビッグデータを使って・・・モザイクを元の画像にもどすってことですか・・・?」

高崎くんは今までの話を整理して、僕に聞いた。

初めて聞く単語が多い中、彼女は頭脳をフル回転させて、思考している。


「お、すごい。やっぱり頭いいんだね!『元の画像にもどす』と自分の言葉で考えられたのがすごいね」

僕たちの話を聞いていた佐々木が言った。

彼の言う通り、難しい話を覚えたわけではなく、話を整理して自分で考えたことを彼は評価した。


「そう、まさにそうなんだ。モザイクと元のデータをセットで覚えさせるんだ」

僕は言う。ほとんど彼女がたどり着いていた答えだ。それを捕捉していく。実際エンジニアリングで行われているところにまで落としていく。


「え!そんなことができるんですか?」

高崎くんは僕らに聞く。

そう、人がやろうと思ったら気が遠くなる作業だ。とてもやりたくはない。


「できる。今のコンピュータパワーとネットワークがあればできる。30年前のCPUじゃ無理だけどね」

僕が説明する。

これが可能になるのには色々条件がある。

今のスマホ社会とSNS社会だからできると言う部分が当然ある。


「モザイクとモザイクになる前の写真をたくさん覚えて、同じ形のモザイクと写真を入れ替えるんですか?」

高崎くんが聞く。


「お、本当にすごいな。本当に才能ありそう。自由な発想だなぁ」

佐々木がそう言う。

一年に何年も学生を見ていると、そう言う風に素直な発想をするのは実は難しいと言うことかがわかる。専門性が高まれば高まるほど、専門知識が邪魔する。


「実際には特徴量を取り出し、そこから予測するプログラムを書くから、今、高崎くんが言ったアルゴリズムより軽く動くんだけどね、イメージとしてはそれで正解」

僕は言う。ここからは専門的な話になるので、彼女は知らなくてもいい。原理だけわかれば次の事件で同じことが出た時に対処できる。彼女の仕事はエンジニアリングではない。


「やったー!佐鳥先生に褒められた!」

高崎くんが嬉しそうにする。


「うん、なかなか素晴らしかったね」

僕と佐々木は本当にそう思っていた。

素直な発想で、物事を考えていくのは本当に価値があることだと言うのを僕らは知っているからだ。


「そのプログラムは誰にでも書けるんですか?」

高崎くん刑事の目に戻り大事な質問をした。

そう、それは犯人を特定する上で重要だからだ。

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