第5話 コンピュータにウソはつけるか?
「うん、ウソになるよね。この瞳に映るおじさまが『かれんちゃん』じゃない限りは」
もちろん、それは『かれんちゃん』ではなかった。
中年のおじさんだ。
===
「はぁー。なんでそんな嘘ついちゃうんですかね?」
「テクノロジーをあなどってるという気はするなぁ」
「あなどってる?」
高崎くんは聞き返した。
「そう。もう、これだけの情報化社会で、僕達人類はウソをつくことができなくなる」
「え?どういうことですか?」
「ウソをつけなくなるというのは、ちょっと違うな。ウソを突き通すのはムリだ、なぜならすべてのウソはコンピュータが見抜くようになるからだ。」
「そうなんですか?」
と、僕の話をなんとか理解しようとする高崎くん。
少し飛ばし過ぎかもしれない。少し話のアクセルを緩める。
「そう、そもそも論として、まず、物理的な犯罪を行うのは、現状かなり難しいよね?」
「あ、それはわかります!監視カメラとかがあるからですよね?」
と、意図を一瞬で汲み取る高崎くん。
『日本で一番かしこい大学』を出ている、というのは伊達ではないようだ。。
「そう、監視カメラがあるから、物理的な犯罪をした場合証拠を残さないというのはまず難しい。監視カメラもそうだけど、ほとんどすべての人類がカメラをもっているわけだから」
「これですね」
と高崎くんは微笑みながら、スマートフォンを取り出した。
「そう、それだ。スマートフォンは動画までとれるからね。音声もバッチリだ。こんな中、物理的な犯罪をするのは難しいね」
「はい!そこまではなんとなくわかりました。」
と、相槌を打つ、高崎くん。
「そして、今までは、その画像の質も人の目より低かったりして、なかなか、コンピュータが勝つのは難しかったのだけど、最近はカメラも4Kとかになってくるからね、人より目がいいわけだ。瞳の中まで見えてしまう」
「ですね。すごいなぁ」
そう、そのことについては、すでに体験済みなのだ。
スマホに映る瞳を拡大している高崎くん。
「しかもそれだけじゃないんだよ、最近は人の顔を映すだけで心拍数も取れる」
「え?そうなんですか??」
そうなのだ。
カメラで、脈の動きを捉えるという方法がある。
「そうなんだ。据え置きゲーム機のモーションカメラにその機能が入っていたりする。すると、うそ発見器が入っているのと同じになる」
「わぁ!すごい!でもウソ発見機って怪しくないですか?」
と、彼女は気がつく。
一般的な人のうそ発見器のイメージはそんなものだろう。
「まぁ、今はまだね。でも、それを一般的にやるようになったら、フィルターも強くなる。誤動作もしにくなるのさ。すぐに、人よりも顔色を見抜くコンピュータが生まれる」
「それが、コンピュータを甘く見てるということなんですね」
と彼女が言う。
「そう、コンピュータにウソをつくことは、すぐにできなくなる」
瞳に映る『かりんちゃん』ではないおじさんからここまで話が発展した。
「今はまだ、そこまで発達していないから、僕らの出番になるわけだ」
「そうですね!本人に直接聞きに行きましょう!」
と高崎くんは微笑んだ。
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