クノグラの魔導書
がるしあ
第1話 語った
祖父から聞いた話
ちょうど五百年前、世界中では「科学」が絶対だった。全ての現象は「科学」でのみ証明され、「オカルト」なんてものは誰も信じてなどいなかった。
その五年後、都市開発工事中に地中から遺跡が発見された。
掘り出された出土品の数々。その中でもひときわ状態のいい壺が発見されたそうだ。
蓋はしっかり閉まっていた。現場の人間は壺をその場で開けようとした。
するとどこからか声が響いてくる。
「ァケルナ・・・。アケタラ最ゴ、コノ文メイはオワル・・・」
現場の人間は気味が悪くなって壺を離した。
そして学者のところへ持って行った。
学者はその壺についている土をしっかり落として壺をまじまじと見た。
真っ黒で、炎のような模様がついている。
学者というものは探究する生き物である。
誰もが中を見たかった。きつく閉まっており誰もあけられなかった。
開けようとする人が壺に触れるたびに
「ァケルナ・・・。アケタラ最ゴ、コノ文メイはオワル・・・」
と聞こえてくるのであった。開けるのがだめならばと人々はX線での解析を試みた。最初はうまくいったかと思われた。しかしまた声が響く。
「ミルナ・・・。ミタラ最ゴ、ヒトリハ知ル・・・」
そして急にもやがかかって見られなかった。
人々は不気味に感じた。そしてあきらめた。
そして数年間、その壺は解析不可として放置されていた。
当時そこに居合わせた科学者がいた。
その科学者はその壺の中をとても見てみたかった。
蓋が開けられないのならばと、彼は一つの手段をとった。
壺の破壊である。
「ああ、その中身が見たい」
と彼の指が壺に触れる。
数年前と同じ声は響く。
「ァケルナ・・・。アケタラ最ゴ、コノ文メイはオワル・・・」
しかし彼は気に留めない。
両手で壺を持ち上げ、容赦なく床にたたきつけた。
壺にはヒビが入った、それは小さなヒビだった。そこから気体が漏れてきた。
声は響く。
「ミルナ・・・。ミタラ最ゴ、オマエハ死ヌ・・・」
しかし彼は気に留めない。
視界の悪い中、彼は手探りで壺を探し、何度も床にたたきつける。
「ミルナ・・・。ミタラ最ゴ、オマエハ知ル・・・」
「ミルナ・・・。ミタラ最ゴ、オマエハ死ヌ・・・」
「ミルナ・・・。ミタラ最ゴ、オマエハ知ル・・・」
何度目だったか、パリンという音とともに壺が割れた。
それと同時に視界がクリアになった。それは封印が解けたということ。
彼は我に返った、彼は急に眼を閉じた。見てはならないと本能が感じたのか。
しかし、好奇心が勝った。彼はおそるおそる目を開ける。
そこには本があった。タイトルはなかった。
彼は、表紙をめくる。
そして
彼は本の中へ姿を消した。
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