第22話 夜間外出禁止令

その国にとっては特別な「革命」が起こった。首都の住民たちが数万人、内務省前の大通りで民主化運動を始めたのだ。

理由はひとつではなかった。

高学歴の若者の失業率が高く、頭の良い不満のたまったエネルギーのある人たちが集団で反旗を翻したということ。

大統領の一家(特に妻の家系)にさからうと、家族の幸せや仕事を奪われる状況に、とうとう耐えられなくなったこと。

カフェで大統領の悪口を言っていただけで、ある日突然いなくなった人もいたそうだ。秘密警察がいたのだ。大統領は孤児を引き取り、高い教育とスナイパーや拷問の能力をつけさせた若者を何千人も雇って、観光地で外国人観光客に悪さをする人間を捕まえたり、大統領一家に逆らう勢力を政治犯として口封じしてきた。外国人には知らされていなかったその事実。

ある人気のあるケーキ屋さんは、大統領婦人に逆らっただけで、一等地での営業をできない立場に追い込まれた。大統領の婦人は後妻で、それまでは美容師やカフェ店員の親戚たちだったのに、大統領婦人になったとたん、一気に豪遊を始めた。市民の税金を食い潰し、贅沢をつくし、外資系企業などの利権はすべて独占していた。

選挙で9割以上の支持率で当選する大統領のことを、その国の人たちは好きなんだと思っていたけれど、実情は違っていたのだ。

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