森の魔女

杉井流 知寄

プロローグ

 森があった。

 人がその地に流れ着く前から、森はそこにあった。

 深く深く、広大な森だ。

 森にはあらゆるものがあった。

 溢れんばかりの生命、そして、死。

 森には全てがある。

 森には大地の記憶、実り、命の全てがある。

 森ではあらゆるものがせめぎ合い絡み合い、奪い与え合う。

 森は一つの世界だ。

 大いなる世界。

 巨大な世界の中の、更なる世界。

 森には森の力を振う、人知の及ばぬ、人を遥かに超えた人々が現れ始めた。

 森だけではない。

 氷山、火山、砂漠、深い海の底といった、世界の力が集まる地には、その地の力を振う血族が出現した。

 巫女、神官、魔法使い、聖人、王。

 呼ばれ方は様々だったが、森の者はこう呼ばれた。


 魔女と。

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