13 運命(交響曲第5番)
★★★
その頃、爆颶萌愛はというと……蓮雄の危機を知っておきながら家でごろごろして、親にも伝えなかった。いや、いう必要はない。まだ、まだ。
とはいうものの、むちゃくちゃ言いたいのだ。いや、だって萌愛お口チャックとかできないもん!テヘペロ♡
まぁ魔法で見てるから問題はないと思うけどね。でもまぁ妹として心配がありな部分はあるけど……。
★★★
ムカつくことに俺の真上を飛んでいただけで、ただの時間の無駄になった。おい時間返せコノヤロー。てか飛べるんかい!わいせつ物飛んでたら怖いわ!怖いんじゃねぇ!エロイんだ!……って俺は何言ってんだよ!(1人でボケて1人でツッコむとか……(笑)……)おいてめぇ殺すぞ。なんだよさいごの(笑)は。なめてんのか。(僕がなめてんのは蓮雄だけでせぇ……)おいマジ殺したろうかてめぇ。あーもうこのやりとりやめ!時間の無駄!
今、『性器アタックNo.1』は隣で歩いている。これ、歩いてるっていうのかな?モザイクが前に動いているようにしか見えないんですけれども。
と、『性器アタックNo.1』と仲良く歩いていると辺りが急に薄暗くなった。やはり来たか……。
[フフフフフフフフ]
とどこからか不気味な声が聞こえてきた。と、声の主がどこにいるのか探すと……おい
「てめぇーかよォォォォォォォォォォォォ!」
と『性器アタックNo.1』を蹴り飛ばした。おいマジふざけんなよ。怖いだろうが!……いや、今の撤回。決して怖かったわけではないから。勘違いしないで。怖くねーから!
が、
「バグ・レオン……どうやらここまで来たようだね……」
「はぁん?何言ってやがる。どうせまたリヴェルトンが同じセリフ言うんだろうが」
やっぱりな。
「この前は殺し損ねたが……今の俺はあの時とは違うぜぇ」
「ほう?それは楽しみだ……いけ!お前らぁ!」
ベール司令官が言うと同時にゴースト達が一斉に襲いかかってくる。その数はまぁせいぜい500体ぐらいだろう。そこまで多くはない。筋肉マッチョでもないから普通に殺せる。そう思った時にはもう足と手が動いていた。
1体2体と次々に殺していくなか、1つ異様に殺していく者がいた。当たり前だが『性器アタックNo.1』だ。白い波動砲やら銃を連射して攻撃する。エロい。だが、あまりにも強すぎた。周りのゴーストを次々に殺していく。これならいけるぞ!と思った瞬間、『性器アタックNo.1』が切り殺された。『性器アタックNo.1』は塵となって消えていった。が、確かまた復活するとか言っていたから大丈夫だろう。俺は関係なく次々と殺していく。なせをこいつらは戦うのだろう。俺に勝てるわけがないのに……まぁそこに理由など必要ないだろう。なんでかって?それは俺もこんなクズ共相手に本気で戦ってるからだよ!
結局5分もかからずにゴーストはベール司令官以外全滅した。あれ?『性器アタックNo.1』は?復活してこないんですけど?
まぁそんなことはどうでもいい。とりあえず、顔についた血を拭きながらベール司令官に近寄る。近寄るといっても2、30m離れているが。
「ここでてめぇーは死ぬ」
「何を言っているのか君は……。貴様こそここで死ぬべきだ!」
瞬間、辺りが魔法陣で覆い尽くされた。これは龍架の時と似ている……!
「貴様がリヴェルトン魔王様に行けぬことをここで思いしめしてやらぁ!」
魔法陣が白く光る。これは……こいつマジで殺す気だ……!だがどうする……こんなに沢山一気に防げるわけがない……チッ……魔法が使えたらなぁ。
そんなことを考えているうちに魔法陣から波動砲が放たれた。……チクショウ!
波動砲が近づいてくるなか、俺は思ってしまった。
――約束守れそうにねぇや……まさかあっけなくこんなところで死ぬとはよぉ……ちょーだせぇぜ……すまねぇな……。
蓮雄はゆっくり目をつぶった。
――すまねぇな。
が、爆発音とともに目が開く。そこにうつっていたのは、魔法陣。蓮雄の周りを無数の魔法陣が取り囲んでいた。
[おい貴様。それでも主人公か?それでも勇者か?……話の流れ的に死なねーに決まってんだろ。何死ぬ雰囲気作ってんだよ。何もかっこよくねぇし、何も感動しねぇよ。……死なねーに……決まってんだろうが]
その取り囲む魔法陣の中に、蓮雄ともう1人。ヘルだ。いや、そんなはずがない。ヘルは今囚われているはずだ。こんなところにいるはずがない……いや、待て……なんで胸と股にモザイクかかってんだよぉぉぉぉぉ!?言わせてもらうけど話の流れ的にモザイクかかるか普通!?どんなところにモザイクかかってんだよ!圧倒的にヒワイになるわ!ざけんな!てか復活っててめぇーかよ!
[あ、私だが、これは本物ではない。私の
「……形は変わってもモザイクは消さないんだな」
[いや、これエロくない?]
「どうでもいいわ!……ったく……足でまといになるなよ……」
[なんだと貴様!私がいなかったら死んでたくせに!]
「はぁ!?死んでないし!死んでないからねぇ!」
[なんだと貴様!『性器アタックNo.1』で性欲処理してたくせに!]
「してねーよ!いつそんなことした!こんなグロのときにオ★できるかっ!」
[貴様の場合は自動的にやってくれるんだろ!?]
「なわけねーだろ!どんな機械つけてんだよ!」
[貴様機械つけてたのか!?]
「断じてつけてねーよ!」
[貴様マ★★つけてたのか!?]
「俺は男だぁぁぁぁぁぁ!」
と、あれ?
「そういえば俺今ムスコついてないんだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
[ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!私の股にムスコがいるぅぅぅぅぅぅぅぅ!汚ーいぃぃぃぃぃぃぃぃ!]
「汚くて悪かったな!」
[私の触らないでよね!ぷいぷい!]
「てめぇ何キャラ変わってんだよ!」
[いやあのね、男っぽいキャラじゃなくて、やっぱり女の子らしくしたいかなーって]
「気持ち悪っ!」
[なめてんのかゴルァ!貴様殺すぞ!]
「あぁ殺してみろよ!てめぇの体だけどなぁ!」
[き、貴様……!]
「てめぇーら俺がいることを忘れるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ここでベール司令官召喚。
【あ……忘れてた……!】
ここでオナペッ――出動。
[てか貴様誰だ]
「ベール司令官だよ!」
[ふーん……名前からして興味ない]
「貴様……!」
ベール司令官がヘルを斬りにかかってきた。ヘルはそれを受け止めるかと思いきや、思いっきり走って逃げた。逃げるんかーい!
そして、ベール司令官の標的は俺へと変わった。チックショウめい……。
ベール司令官の剣を受け止めようとした瞬間、ベール司令官の剣を魔法陣が通る。そして
[蓮雄!大丈夫か!]
近寄るヘル。が蓮雄はそれを押しのけて立ち上がる。
「なぁに言ってんだー俺はなんともねーよ!」
蓮雄はそのままベール司令官に突っ込んでいった。が、ベール司令官のあまりにも速い剣に防御ができない。あっという間に蓮雄は傷だらけになった。
「あまりなめないでもらえますかねぇ。僕は魔法と剣と両方使えるんですよぉ?貴様らに勝ち目はないんですよぉ?」
この喋り方がムカつく。こいつの設定がみえない。
蓮雄はその場に立ち尽くす。
「確かにここまでのゴースト達を早くも殺してきたのは称賛しましょう。ですが、それもここまで。貴様らはここで俺に殺される。そういう運命なんだよ」
「フフフハハハハ!何が運命だ……運命とかに惑わされてちゃぁ剣を扱えねーぜ……さぁかかってこいよ……その運命というやらを変えてやるからよぉ?」
「貴様……!」と叫びながらベール司令官が傷だらけの蓮雄に突っ込んでくる。はっきり言えば今の蓮雄には勝ち目はない。今のは。
――俺の本当の『狼』の力なめんなよ?
「どうだ痛いか?」
「ぐ、がぁ……」
「俺の本当の『狼』はな、急所と致命傷のなるところを傷つけずに、相手を傷つけていくんだよ……身体も心も……な……!」
その笑顔は本当に恐ろしいものだった。だが、今までの暴走していたのとは違い、蓮雄の意志が伝わってくる。……蓮雄は本気だ。ようやく『狼』を操れるようになってきた。
蓮雄は倒れ込むベール司令官の傷つけたところをまた傷つける。
音がない悲鳴が伝わってくる。
しばらくしたところでやめると、蓮雄は剣を目元に近づけた。
「ベール司令官……さっさとこのことを魔王リヴェルトンに知らせて警備を整えておけ……敵が多いほうが俺の血も活発化するからなぁ……」
そう言って大きな魔法陣ができたところに、ベール司令官を蹴り飛ばした。まぁ伝えられる前に死ぬかもしれないけど……。そして蓮雄は剣を消した。それとともに脱力感がきたと思ったら、その場に倒れ意識が遠のいていった。
目を開けるとそこは自分の部屋だった。ベッドで寝転がっている。グッと起き上がると、体中の傷が痛む。
「あ、お兄ちゃんまだ寝てないとダメだよー?」
と、横から萌愛の声が聞こえてきた。どうやら介護をしてくれたらしい。なんだ萌愛かよ。
「あ、今絶対『なんだ、萌愛かよ……ヘルじゃないのかよ……』と思ったでしょ!?」
「俺の真似うめーなおい!」
くそ……図星だ……。
「いやーヘルお姉ちゃん偽体だからねー」
「あぁそうか……」
まぁ『性器アタックNo.1』よりはましか。
「ところでその偽体は?」
「あぁそれなら1階でお菓子食ってゴロゴロしてる」
「ニートか!」
「まぁ姿はお兄ちゃんなんだから、お兄ちゃんらしいっちゃお兄ちゃんらしいけどね」
「お前は俺のことなんだと思ってんだよ!」
「お兄ちゃん」
「ありがとよ!」
あーめんどくせぇ。俺の周りの女子ちょーめんどくせぇ。変人ばっかだ……魔李ちゃんもまともだと思ってたら、裏の性格クソだし……女子にまともな奴いるのか?学校ではまともに見られてる優凪ヘルだって、中身爆颶蓮雄だからな!?男だぞ中身!ったくもう……ろくな世界じゃねーな……ま、俺の元の世界も腐ってたけどよ……。
俺はペチャクチャなんか喋ってる萌愛をよそに、昔の仲間6人で遊んだころの記憶を思い出していた。なつかしいな……あの時はな……。
「あ!そうだ!魔李ちゃんは!?魔李ちゃんはどこなんだ!?」
「魔李ちゃん……?誰それ」
あ、そういえばこいつ知らないんだったな。
「んーと、ずっと見てたからわかるだろ?俺が追いかけていった女の人だよ」
「お兄ちゃん誰も追いかけてなんかいなかったけど?1人で勝手に逆走したんだよ?」
「な……」
そ、そんなはずがない!俺は確かに魔李ちゃんを追いかけていったはずだ!そんな、そんなはずがない!そんな……見間違えるはずがない!
「幻覚まで見えるようになっちゃった?まぁーもう少し寝てきなよー?」
混乱している蓮雄を置いて、萌愛は部屋を出ていった。
★★★
ジャンジャンジャンジャーン
ジャンジャンジャンジャーン
とベートーヴェン作曲『交響曲第5番(運命)』をある協会らしきところのパイプオルガンで豪華で力強く弾く男がいた。『交響曲第5番(運命)』は普通はオーケストラとかで演奏されるものだが、男は1人でパイプオルガンで弾いていた。
そして、最後まで弾き終わると同時に拍手が聞こえてきた。男は知っていたかのようにニコリと笑った。
「さすがですゴーデン様」
「いや、そんなことはないよ?それより――」
ザザン!と客席で聞いていた男の足元にナイフが突き刺さる。
「君はいつから聞いていたのかな?」
とパイプオルガンを弾いていた男がニコリと笑った。
「い、いや、そ、その、と、途中、か、からで、ご、ござい、ま、ますが、が……」
あきらかに怯えている。いや、無理もない。誰でも怯えてしまう。あの笑顔には。
「へーそうなんだ……なんで俺に許可なしに聞いていたのかな?」
「す、す、すいませんでした!い、いやその、お、おもしろい、ことを、み、耳に、し、しました、の、ので、で」
「ふーん……わざわざ俺の演奏を盗み聞きしたぐらいだから、そんぐらいの情報なんでしょうね?」
「は、はい!も、もちろんでござ、いまする」
「そのおもしろいこととは?」
「その、バグ、バグ・レオンが、き、記憶を取り戻した、との情報が」
「そんなこと、知ってるよ?」
パイプオルガンを弾いていた男は客席にいる男を見てすらいない。客席にいる男はパイプオルガンを弾いていた男の背中しかみえない。人と話す時は相手の顔をみろ、と言えば即座に死ぬから言わないが、1度は目を見て話したいものだ、と客席にいる男は思っていた。
「――だって学校同じなんだから」
と、パイプオルガンを弾いていた男、ゴーデンが笑っていう。
「そ、そうでご、ございますか……」
「それだけ、かい?」
「い、いえ!ま、まだあります!」
「じゃあそれも聞こうか」
「奴らが動き始めました」
「まぁそうだろうね。でも〈
「そ、それが――」
そのあとの言葉にはゴーデンも笑うしかなかった。
――やっぱりおもしろいねぇ。
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