10 山でのゴースト狩り
★★★
放課後。当たり前のようにヘルが俺――いや私の目の前で仁王立ちしている。え〜?拷問かな〜?キャ!
「おい貴様」
「ん?何かな〜?」
なんか後ろに赤い炎が見えるけど〜?怖い〜。
「自己紹介してみろ」
「え〜何〜急に〜。……優凪ヘル、17歳4月4日誕生日〜。春義丘高等学校2年C組〜。性別女〜」
「おい貴様。性別は?」
「え〜言ったじゃ〜ん!女だよ〜!お★ん★な★の★こ♪」
バシコン!
とグーで思っきり殴ってきて、私は後ろの木々に突っ込んだ。よかった〜外で〜。中だったら危なかったよ〜!って私の大事な顔がぁぁぁぁぁぁぁ!
「はぁ?今、なんつった?あ?」
「ヒッ!」
「貴様頭でもおかしくないなったか?あん?」
と、後ろに何者かの気配、いや後ろから剣を頭に突きつけられた。ヘルは反射的に振り向こうとすると、
「動くと頭貫通しちゃうよ?」
と優しい声音が聞こえてきた。いや、優しいとかそういう問題ではない。楽しそうにしている声音、と言った方がいいのだろうか?とても優しいとは思えない。
ヘルは振り向くのをやめ、前を向く。何者かは知らないが、敵であることは間違いないだろう。
「貴様……あいつに何をした」
「あいつって爆颶蓮雄のことかな?……ちょっと遊んだだけだよ?今解除したからしばらくは気絶してるよ。これなら聞かれなくて済むしね。今の時点でニューヘル女王は僕が何者かだいたいは予想しているだろうし」
この男何もかもわかってやがる。危険だ。
「貴様は何者だ」
「僕?僕は女の子の心を奪うただの『狼』さ」
「ふん。中身が男だとわかっていてあいつの心を奪ったのか?貴様まさかのホモか?」
「ハッハッハ。さっき言ったはずだよ?ちょっと遊んでみただけさ」
「遊んだだと?ふざけんな。あの体は私のだ」
ヘルが突きつけられた剣を片手で握った。その握った手からは血がポタポタと流れ落ちる。
男は相変わらずニコニコしていた。
「でも、中身は蓮雄でしょ?ならいいじゃんちょっとぐらい遊んでもさ」
「いや?中身は蓮雄という名の『狼』が入っているぞ?下手したら……貴様死ぬぞ」
「あれあれー?あれも『狼』なのー?知らなかったなー」
「調子こくなよ?貴様全部知ってるだろ?」
「さぁね。……ところで、手は痛くない?」
「さぁね。……ところで、地面大丈夫か?」
と、男が下を向いた瞬間。気づかなかった魔法陣から針のような尖ったものが突き出してきた。よけようとするが、剣をニューヘル女王に持たれているため、剣を離して高く後ろに飛ぶ。ワイヤーで吊り上げられているかのようにゆっくりと。笑顔を崩さず。
「ほう?よけたか」
「危ない危ない」
と男がパラパラと服をはたいている。ヘルはその間に、男の剣を手に取り男の方に向く。
男の顔をしっかりと見て、覚えた。春義丘高等学校の制服を着ている――いや、どこかで見たことあるような。
「貴様……この学校の奴か」
「あれ、顔を見られるのは予想外だったな。それにこんなところで捕食するのもなんだしね」
「捕食……だと?」
「まぁ今日のところはここらへんにしておくよ。遊べたしね」
そう言って男はこちらに背を向ける。やはり、優しい雰囲気が出ているが、実際は違う。こんなの優しさじゃない。
「じゃあね。楽しかったよ」
「ま、待て!」
「くれぐれも、僕が捕食するまでは死なないでね」
地面に魔法陣ができ、男はその魔法陣の中に消えていった。
剣を残したままだったが、地面の魔法陣が消えるとともに剣も同じく消えていった。――あの男、マジで危険だ。これからは気をつけないと。
残されたヘルは手の傷を魔法で治したあと、自分がぶっ飛ばした蓮雄に近寄る。どうやらまだ蓮雄は気絶しているようだ。めんどくさいが、ヘルは家に連れて変えることにした。
★★★
どうやら、今日行くはずだった異世界No.9ニコラス王国には行かないようだ。この世界にいるゴーストを消すことが最優先らしい。今日の夜はこの町の見回り。できれば今日のうちに全員ぶっ殺したいが、そんな余裕はない。相手は大人数なので時間をかけて消していくしかない。それに、都茂龍架もあれからまだ会っていない。話を聞くため殺したくはないが、場合によってはそれはただの願いになる。ゴーストはまだこの町にしか侵食してないはずだから、うまくいけば、ほかの町に行く前に処理ができる。龍架もこの町からは出ていないはずだから、この町にいる間に片付けれるだろう。時間をかけて消していくしかないと言ったが、やはり早く潰さなければならないだろう。もう今日中には半数以上のゴーストを消さなければならない。どう考えても無理があるが、今の蓮雄の力があれば簡単に行けるだろう。
夜になると、俺とヘルは家を抜け出して近くの山、龍架の神社の前に来ていた。龍架目的ではない。どうやらゴーストがこちらの世界とニコラス王国との出入口がここらしい。まぁ龍架が作り出したんだろう。
俺も昔の記憶とかどうでもいいが、これからのことを考えるとこの力を使うしかない。俺とヘルは剣を出現させる。顔を見合わせると神社の裏の山の中へと入っていく。思い出すあの戦い。龍架が襲ってきたあの場所。俺が記憶を取り戻したあの場所。この都合のよすぎる出来事がどんどん思い出してくる。
その場所も越え、どんどん山奥に入っていく。1歩踏み入れると、すぐにゴースト達が現れる。めんどうだな、とヘルが言うと2人は飛び込み連携プレーのように次々と殺していく。最後の1体を殺すと、何事もなかったように奥へと進む。どんどんゴーストが横や前や後ろから襲いかかってくるが、前進する足を止めることなくそのまま切り殺していく。どうやら腕は鈍っていなかった。奥に行くにつれ、どんどんゴーストの数は多くなっていった。やはり、ここが拠点らしい。すごいありがたいな、と思いつつ襲いかかってくるゴーストを殺していく。
だが、ここにベール司令官がいるとは思っていない。せいぜいここにいるゴーストは、この街にいるゴーストの3分の1ぐらいだろう。まぁ1日でこんだけ潰せれるのなら上出来だろう。
ゴーストがこのことを知らせに行くことはまずできないため、援軍が来ることはないし、ニコラス王国からもくることはない。ヘルの魔法を使えばこんなもんたやすいもんだ。おいやっぱこいつチートだわ。チート確定。もうここにいる時点で、ここのゴーストは全滅するのは確定している。
殺しつつ前進していくうちに、どうやらここにいるゴーストの拠点地に着いてしまった。ここの主らしきゴーストが声を上げるとともにゴーストが一斉に切りかかってくる。数は約500ぐらいだろう。――ここのゴーストを全滅させるのに10分もかからなかった。
ちなみに俺はもうとっくに自分を取り戻してるから。あんなホモ蓮雄俺じゃないから。あれが本当の俺だったら今頃話終わってるか変わってるし!てか話ってなんだよ!
この調子なら1日で全部潰せそうだ。と思っていたら、ベール司令官と龍架はまた後日にするとヘルが言い出した。なぜかはわからない。でも、ヘルに従うしかない。
そのあと、結局ゴーストは現れなかった。
★★★
次の日、の昼の放送室。俺とヘルはマイクを前にして座っていた。
まさかの今日担当だったよぉぉぉぉぉぉぉ!しかもなんで俺までぇぇぇぇぇぇぇぇ!?なんで強制的に放送委員?しかもなんでヘルと一緒なの?なんで前の俺は放送委員なんて選んだの?あ、好きな曲が流せるからか。じゃねーよ!
今はみんなが昼食をとっている時間だ。その間に音楽かけたり、連絡をしたり、イベントをしたりすのが放送委員の役目。1日交代制で、今日は俺らの番だった。
すっかり忘れてたからCD持ってきてねーよ。チッこうなったら適当にやるしかないな。
ヘルの心配をしつつ、マイクの電源ボタンを押す。これでもう校内に聞こえる。
「え、えー今日の放送委員は」
恒例の紹介。
「優凪ヘルと」
「爆颶蓮雄だ」
俺そんな口調じゃないからぁぁぁぁぁ!
「えーと、今日初めての放送で、緊張していますがよろしくお願いします!」
と、可愛く言ってみる。反応はわからないが、まぁどうでもいい。
「えーと、今日CDを忘れてしまって、トークかなんかをしようかと――」
ジャラン!
とギターの音が鳴り響く。見ると、ヘルがギターを持っていた。え?
「というこで、俺の歌を聞いてくれ!」
と、勝手に言い出す。待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!ふざけんなよ!?生演奏だと!?ていうかお前ギターひけるんかよ!?すげーなおい!力だけでなく何もかもがチートだなおい!
と、ツッコミする暇もなくヘルの歌が始まる。
歌が終わると、どこからか拍手が聞こえてきた。
「ありがとな!ありがとな!」
と、放送越しにヘルが言う。もうやめて。絶対先生に怒られる。あ、ここの先生頭狂ってるから関係ないか。
もう俺の評判が。
「れ、蓮雄君ありがとうございました〜。で、では次に――」
「ランデブーっていつするんだ?」
これ放送中ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!ここで下ねたはやめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!
すぐに話を変える。
「ちょっと、トークでもしてみようかな〜なんて思ってます」
もうこれしかにい。トークと言ってもヘルには喋らせん。ガムテープを無理矢理貼り付ける。
「昨日の朝礼で言いました通り、私アメリカと日本のハーフなんです。父が日本で母がアメリカです」
「そしてランデブー」
バコン!ドゴドゴ!ビリッ!ベタベタ!
「……えー、もう話変えます。みなさん!学校楽しいですかぁぁぁぁ!?」
シーン。
当たり前だけど。聞こえないから。どうせ教室とかではイエェェェェェェイ!とか叫んでるんだろうな。
実際はシーンとなっている。当たり前。
「ま、まぁ楽しくはないでしょうね。で、でも!わ、私が来たからにはこの学校に来て楽しい!と思えるような学校にしたいなーって思ってます」
なぜか選挙の演説みたいになってしまった。
「てめぇーら性欲乱れてランデブー!」
「……まぁね。別に」
「ヘルちゃんお家で個人レッスン♪」
「……生徒会に入りたいわけではないんですけどね」
「★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★!」
「てめぇーうるせー!黙れ!いい加減にしろよ!?ここは下ネタ言うところじゃねーんだよ!下ネタ言うなら心の中で言っとけ!」
あ……と気づいた時にはすでに遅し。俺はマイクの電源を切って叫んだ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★!ってね。
放送室からはマ★★と叫んでいる変人の声が聞こえてきていたという。
もうどうでもいいやっ!テヘペロ☆彡
その日、俺とヘルは学校中から冷たい目線で見られた。え?ちょっと待って?君達だって叫んでるでしょ?え?何がおかしいの?何がおいしいの?なにそれおいしーの?
だが、放送室を出た直後もう危険人物と出会ってしまった。出会ったというか待ち伏せしてたよね?出てくるの待ってたよね?
「さすが触手でオ★ってるヘルちゃんだ」
「どの部分でそう思ったんだ!?」
禰津幽香先輩だった。もうやだ。死にたい。
「蓮雄だっけ?君、最高にオけてるね!」
「どういう意味だ!?どういう意味だ!?」
「だろ?」
だろ?じゃねーよ!何がだろ?だよ!ふざけんなよおい!
「最高に、オ★★ーイけてるね!」
「もう略すのめんどくさなったんだよな!?そうだな!?だけどこっちもこっちでめんどいから!」
「今日のオカズは幽香先輩で決まりです」
「あらマジ!?ちょーうれしーわ!」
こいつら頭がおかしい。特に幽香先輩。
「なんなら生奪ってもいいのよー?」
「なら、今日夜9時に公園待ち合わせで」
「了解」
「何ホテル行こうとしてんだよ!」
「幽香先輩、ヘルも連れてきます?3★します?」
「おー!それはそれで興奮するね〜」
くそッッッッッタレがぁぁぁぁぁぁぁ!
「そういえばさ、国語とかでP154とかP53とかよく先生言うじゃん?ページ数のやつ。これさ、考え方変えればちょーエロいことない?……SMプレイ」
「どこからでてきた!?普通154Pとか53Pとか考えんだろ!」
「S、Mプ、プレイだと!?」
「おめぇーは反応すんな!」
「こ、興奮するぅぅぅぅぅ!」
と言いながら校内をヘルと走り回った。
もう死んだ方がいいわ。ちょマジ。俺の評判汚しやがって。
もう俺知らない。こんなクソ変態野郎どものことなど知るか。そろそろ真面目にやめないと。
俺は教室に帰った。と思ったら、幽香先輩が教室に来て、
「あっ!あうっ!い!い!いぅ!い!い!★くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
とか、
「そこはらめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
とか、
「はぅ!あん!あ!あん!あん!あん!は、は!激しいっ!」
とか、
「もうひゃめてぇ〜」
とか、
「ウへ!ウへ!ウへへへへへへへ!」
などと言ったことは一生忘れられないだろう。そろそろ警察に突き出してくるから。覚悟しとけよこのクソ変態野郎。もうそろそろクラスの男子、いや、全校生徒の下半身が暴走しちゃいそう。
もう、下ネタはやめてください。
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