12 〈異賊暴〉第1使徒〈神炎〉第3使徒〈神友人〉第4使徒〈神命令〉第5使徒〈神人〉襲来
★★★
蓮雄と亜透は遠くの山に来ていた。どうやら、ここから地下に入り国王――女王のところに向かうと言うのだ。どうやって男に戻すのかはわからないが、動かないことには何も始まらない。とりあえず、会いに行くだけだ。
「ほられるんですかっ!?」
とはまぁこいつはBLネタが好きなもんだ。俺はとりあえず、無視する。
「ほられるんですかっ!?」
それでもこりないようで。
「ほられるんですかっ!?」
「しつけーわ!」
もう面白くもない。だって相手幼いもん。幼女だもん。そんなボケても面白くないし、俺のツッコミもつまんない。もうつまらない。
「それより亜透、やっぱり俺らがこの異世界救ったらお前は消えるのか?」
「……わたしはきえるかもしれません。でも、コンピューターウイルスはきえることはないです」
「そうか……」
それはラノベ定番の、「例えいなくなったとしても、私はあなたの心の中で生きていますっ!」とかいうやつのことだ。正直俺はそのネタ飽きている。いや、だってさだからなんなの?ってならない?ヒロインの言う言葉ならまだアリだけど、ヒロインでもない脇役がそんな言葉を言っても正直俺は興味無い。
この異世界救ったら、さっさと元に戻る手段を探さないとな。ほんと、異世界なんてどうでもいいから先に俺を救えよ――そう思った瞬間、ドン!という衝撃とともに地面や空が動き始める。
空がビリビリと壊れ始める。
それと同時に亜透の体が電気を浴びたかのように、電流が走る。
「きやぁぁぁぁぁ!」
と悲鳴をあげる。
「どうした亜透!?」
と亜透の肩に触れると、亜透をまとっていた電流が蓮雄に流れ込んできた。
すぐさま離す。その時押してしまったのか、亜透が横に倒れ込む。
「大丈夫か!?どうしたんだ!?」
「……な、なにかが……む、むりやり……このいせかいに……はいり……こんで――きゃぁぁぁぁぁ!」
言葉の途中で、空が機械のようにパーツごとに落ちてきたかと思うと、亜透に流れていた電流の電力が増した。
その時悟った――まさかコンピューターウイルスを破壊しながらこの異世界に何者かが侵入してきているのか!?
「亜透大丈夫か!?なにかってなんだ!?」
「きゃぁぁぁぁぁ!」
亜透が答えられるわけがないとわかっているのに、どうしても聞いてしまう。
くそっ!このままこうしていても亜透が消えるだけだ!どうすればいいんだ!俺には……何ができるだ……!
――その時、久しぶりに誰かのために動く、という感情が芽生え始めた。だが、蓮雄はそんなことなど知るよしもなく。
「お、おにいちゃん……」
と亜透の言葉に現実に戻される。
「い、いや……ば、ばぐれおん……」
「なんだ!?」
「どうか……どうか……このせかいをすくってくだ……さい」
その言葉の最後とホリスモ王国全体が光に包まれたのは同じタイミングだった。その光とともにとてつもない音量の爆発音が響く。
目開けると、目の前には大きな船が浮かんでいた。
壊れた空から現れたのは赤色と黄色の大きな船だった。
空はビリビリと電流が走っている。
なんだ……あれ……?
蓮雄には見覚えがないもの。いや、見覚えがないのではない。確かに見たことはある。だが、名前が出てこない。記憶に……名前だけがすっぽり抜けている。
そんな考えている暇はなく、その船からものすごい量の点が落ちていく。あれはなんだ?と思い、よく目を凝らすと、様々な異世界の人々であることがわかった。
船から次々と落ちていく。それは、ニコラス王国の時よりも酷いもんだった。一向におさまる気配はない。無限に排出されるのか、と思ってしまう。
それを見ているうちに、街が一瞬で戦場となる。いや、ホリスモ王国の住民は戦闘なんてものはしないから、逃げるだけで、一方的に攻撃されている。ただ、そんな中2人だけは立ち向かい戦っていた。ヘルとゼロだ。2人の圧倒的なる戦闘力は相手たちを次々と殺していく。が、相手の数が多すぎるがために、ヘル達も苦戦を強いられていた。
蓮雄はそれを見てすぐに、ヘル達のところへ向かった。亜透の姿はもうとっくになかった。
蓮雄は振り返ることなく山を降りていく。
いつの間にかふもとまで敵が押し寄せてきた。蓮雄は覚悟して剣を出現させる。
すると、敵のうちの1人が、
「バグ・レオンだぁぁぁぁぁ!首を取れぇぇぇぇぇぇぇ!」
なん……だと……?なぜ俺の名前を知っている?というより……なぜ俺の首を狙って――と考えているうちに一斉に攻撃してきた。相手も剣だ。
蓮雄もその集団に飛び込んで行った。
その頃、ヘルとゼロも圧されていた。
もう周りが敵しかいない。これはニコラス王国の時よりも多すぎる。
「おい貴様……これはどういうことか説明してもらえるか?」
「いえ、私にも何がなんだか……しかし、敵の正体はわかっています」
「何だ?」
「〈異賊暴〉第1使徒〈神炎〉です」
「な……!」
異世界海賊〈
「目的はわかりません……ですが、私達を殺すのは間違いないようです」
ゼロは空を飛んでいて、二刀流にしていた。
「くっ……ここが墓場にならなければいいがな……」
「そうはさせません」
2人もまた集団に飛び込んでいった。
★★★
ホリスモ王国が手下達で埋まっていくのを2人は見ていた。ゼロの予想通り、相手は〈異賊暴〉第1使徒〈神炎〉だ。だが、少し違うのはそれだけではないこと。ブラス、〈
「あーあ……あっという間に埋まっちゃったね」
「ふん……」
風など吹かないが、なぜか吹いているように感じる。
メーリスとレッカは楽しんでいた。
「だけど、いくら〈
「違うわ……〈
「わぉ……〈
〈異賊暴〉にはさまざまな使徒がある。その中でも1番強いのが第1使徒〈神炎〉だ。たまたま第1使徒となっているが、この数字ははっきりいって関係ない。強さを表しているわけではなく、使徒が作られた順番、と言った方がいい。
第1使徒〈神炎〉。第5使徒〈神人〉。第3使徒〈神友人〉。第4使徒〈神命令〉。この4使徒が集まったということは、かなり本気、というわけだ。道理で無限のように手下が落ちていくわけだ。……あいつらに勝ち目はない。
「言っておくけど、〈神人〉〈神友人〉〈神命令〉の全勢力があるわけじゃないから……あくまで1部よ」
それにしても多すぎると思うが。
「まぁそれに加えて僕達〈鷹蛇狼〉の分もあるから……累計1億ぐらいかな」
「流石にあの男も死ぬでしょ……ユーはどう思うのかしら?」
「僕はねぇ……」
戦う男を見る。
「……死なないと思うなぁ」
それは確信であり、確実である。こんぐらいで死ぬ男ではない。だが、まだ不完全だからもしかしたら死ぬかもしれない。
だが、その時は『あの人』が殺すときだ。それまでは、死にはしないし殺させはしない。
★★★
殺しても殺しても減ることはない。それはニコラス王国の時にもあった。だが、そんな優しいものではない。空を飛んで攻撃してくる奴らもいて、傷がつきまくる。だが、すぐに傷口が塞がる。それは『魔法』だった。
実は、ニコラス王国のあとヘルに『治癒魔法』ができるように、と鍛えられていたのである。大怪我までは治せないが、多少の怪我程度は治る。
だが、それは剣術に大きな影響をもたらす。
普通に剣を振るだけでなく、傷がついたらそれを『治癒魔法』を使って治す、ということにも気を回さなければならない。前より劣るのは確かであった。
しかしそれは、蓮雄の力不足である。ヘルはいつもの剣術を衰えさせずに『治癒魔法』を使っている。ある人では、自動的に治る『自動型治癒魔法』が使える者もいるらしい。その人達に比べたら、蓮雄はまだ下っ端のほうだ。
まだ、練習が必要になる。
しかしそれは、生きていたらの話だ。
この敵の数はさすがにわからない、と蓮雄は感じていた。
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