魔法少女☆カナエ&マキナ
サゐコ氏
第一章 春~女子大生魔法少女の誕生
第1話 今さら過ぎる実現
・は場所
・公園、夜
二人の少女がベンチに座っている。一人は黒髪でショートヘアーの少女、
叶「そろそろ来ると思うんだけど……桃はお願いすること決めてる?」
桃「バッチリ決めてるよ! 」
叶「どんなお願い? 」
桃が何かを言おうとした瞬間、夜空に流星が見えた。
桃「あっ! 来た来た……流れ星!」
叶は空を見上げた。
叶「桃、もうちょい高いところに行こっ!」
桃「うんっ!」
二人は走り出し、ジャングルジムに登った。ジャングルジムの頂上に座り、空を見上げた。無数の流星に見とれている。
叶「あ、お願いしないと!」
桃「忘れてた!」
二人は目をつむって、星に願う。しばらくして目を開け、互いの顔を見た。
桃「これくらい祈ったら大丈夫だよね! 」
叶「なにをお願いしたの? 」
桃は頬を赤く染めて、恥ずかしそうにモジモジしている。
桃「えっとね……素敵なお嫁さんになれるようにお願いしたんだ~。叶ちゃんは? 」
叶「わたしは……ほいっ! 」
叶はジャングルジムから飛び降りて、地面に着地した。そして、マキナの方に笑顔を向けた。
叶「秘密だよ~」
叶は公園の出口に向かって走り出す。
桃「あっ、ずるい!」
桃は飛び降りずに一段一段しっかりと降りて、叶の後を追った。
(ここから12年後の叶の語り)
あの頃のわたしは魔法少女の出てくるアニメにはまっていた
困っている人を魔法で助ける彼女に……
キラキラしていた彼女に……
あこがれていた。
魔法少女なんてテレビの中だけの存在で、本当はいないことなんてわかってる。
だけど、あの流れ星に願ったら叶う気がしたんだ。
どんな願いでも叶う気がしたんだ。
だから、わたしは願った。
「魔法少女になれますように……」と
(以上、叶の語り)
・
テロップ(12年後)
正門の端には大学二回生になった
叶(わたしは現在、19歳。大学二回生になった。まだ、魔法少女にはなれていない。まぁ、今さらなりたいとは微塵も思わないけど……)
叶は『はぁ……』とため息をつく。
叶「桃、遅いなぁ……」
叶は携帯をカバンから取り出して、NINEというアプリを開いた。『はやくこーい( ゚Д゚)』と打ち、桃に送信した。正門を抜けて帰っていく学生を見たり、携帯をいじったりしながら桃が来るのを待つ。
テロップ(10分後)
叶は少し頭をかく。
叶「あー、もう遅い! なにしてんのよほんとにもう! 」
叶は正門を抜けて、校舎に向かって歩き出す。道を挟んで両脇には満開の桜が何本もある。
「ごめーん! 」
髪の色は茶色で髪型はお団子ヘアーの女子大生が大きな胸を揺らしながら叶のいるところまで全力で走ってきた。大学二回生になった
叶「なにしてたの? 」
桃は膝に手をついて息を切らす。
桃「ほんと……ごめんね……なんか……一回生五人に……告られちゃって……」
叶「一回生って……最近入ってきたばっかじゃん! いつものファンクラブの人たちならわかるけど……で、かっこいい人いた? OKした? 」
桃「かっこいい人いたよ。でも、全員お断りいたしました! 」
叶は両手で桃の肩をつかんで、グラグラと揺らした。
叶「なんで? 何が気に入らなかったの? 教えてよ! 教えなさいよー! 」
桃「叶ちゃん止めて、目が回る……」
叶は桃の肩から手を放した。
叶「あ、ごめんごめん。じゃないわよ! なんで断ったりしたのよ! ちゃんとわたしに説明しろー! 」
桃は叶に敬礼した。
桃「隊長、一回生の子たちはイケメンで人柄もよさそうでした! しかし、断ったのにはちゃんとした理由があります! 」
叶「ふむ、瀬戸内二等兵、その理由とやらを述べよ! 」
桃「はい! ぶっちゃけ、わたしが恋愛に興味がないからであります! 」
叶はうつむいた。そして、小さくつぶやく。
叶「神さま、どうして恋愛に興味がない人にあんな大きな胸を与えたの? (桃に向かって)小2のあんたが聞いたら泣くよきっと……」
桃「小2のわたし? あ、それって流れ星にお願いしたときのこと? なつかしいね! そういえばあの時、叶ちゃん何をお願いしたんだっけ?」
顔を上げた叶は頬を赤く染め、恥ずかしそうに桃から目をそらした。
叶「わ、わたしのお願いの話はいいの! それより、あんた恋愛に興味ないって結婚とかどうすんのよ?」
桃「いやいや、今の時代お見合いというものがありますからね~ 心配ないよ~」
叶「あんたがそれでいいならいいけど……」
桃「てか、まだ大学生なんだし結婚なんてまだ考えなくっていいっしょ! 」
叶「それもそうね」
二人は校門の方へ歩き出す。
桃「胸なんかなくても叶ちゃんなら、きっといい人見つかるよ」
叶「それ、あんたが言うと宣戦布告と思われるからこれから言わない方がいいよ……」
・天界
雲の上のような場所。天使やらペガサスやらが飛んでいる。金髪のロングヘアーの女性と銀髪のベリーショートの少女がいる。金髪の女性は神さま。銀髪の少女はデウスエクス・マキナ。
神さま「マキナ、やることはわかっているな? 」
マキナ「神さまが言っていた人間を魔法少女にすること。そして一緒に戦うこと。正月には乙女ゲーを買って天界に戻ること……」
神さまはマキナに向けて、親指を立てた。
神さま「完璧だ! グッジョブ! 」
マキナ「もう、行っていいか? 」
神さま「ああ、構わない」
雲の中から大きな門が現れる。その門はゴゴゴゴッと音を立てて開いた。門の向こうは青い光で見えない。マキナは神さまに背を向けて、青い光の方へ歩き出した。
神さま「マキナ! 」
マキナは振り返る。
マキナ「まだ、何か? 」
神さまは何かを言いたそうにウジウジしている。
神さま「やっぱりいいや。下界での生活、楽しんで来いよ! 」
マキナ「それは命令? 」
神さま「命令じゃないさ。これはアドバイスだ。なんだって楽しんだ方がいいに決まってるさ! 神が言うんだから間違いない」
マキナ「わかった。楽しんでくるよ」
マキナは再び神さまに背を向け青い光の方へ歩き出した。やがて、光の中へ消えていった。門は閉じ、再び雲の中に消えた。
マキナが行ってしまったのを見て、神さまは空を見上げた。
神さま「ごめんな、マキナ……」
・電車内
吊革を持ちながら立っている叶と桃。電車には学生やサラリーマンがいる。
桃「そういえば叶ちゃん、明日提出のレポート終わった?」
叶「あっ! やってない! 全然やってない! ヤバい、どうしよ」
桃「わたしはあと少しなんだ……でも、叶ちゃん今日バイト入ってないしなんとかなるんじゃない?」
叶「はぁ……せっかくバイトないからゆっくりしようと思ってたのになぁ……」
運転手によるアナウンスが聞こえる。
運転手「次は~藤巻~藤巻~」
藤巻駅で電車が停車し、扉が開く。叶と桃は電車を降りる。
・藤巻駅改札
社会人、学生、カップル、いろんな人が歩いている。
桃「それじゃあ、わたしバイト行くから~」
叶「うん、バイト頑張ってね」
桃は走っていた。
・マンションの下
桃と別れて、駅から歩いてきた叶。マンションの前を歩いている叶の前にマキナが腕を組んで立ちふさがる。
マキナ「確認するが、お前は宮城叶だな? 」
叶「そうだけど、わたしに何か用かな? 」
マキナは叶に近づき足の先から頭までをじろじろと見て、叶の後ろに回ったり、ダッシュで25mほど離れたりして叶を見た。
叶(すごい見られてるんだけど……)
最終的に、マキナは叶から5mほど離れたところで止まる。
マキナ「やっぱり、わからない……なんでこいつなんだろう……」
叶(年上に向かって『こいつ』って……)
叶「えっと……わたしに何の用なのかな? 」
マキナはぐいぐいと叶に近づく。そして叶の目に向けて指をさした。指が目に触れそうになり、叶は少し後ろに下がった。
マキナ「単刀直入に言うよ……お前は選ばれたんだ……」
叶「選ばれたって、何に? 」
マキナの目がぱっと大きく開いた。その目は青く輝いている。
マキナ「魔法少女にだよ……」
しばらく沈黙が続いた。
叶「は……はい? 」
マキナ「もう一度言う…… 」
叶「いや、言わなくていいけどさ」
叶(この子は何を言ってるんだろう……)
マキナ「そっか、じゃあさっそく
叶「え? なにその業界用語? てか、わたしが魔法少女になる前提で話が進んでるんだけど、やらないよ。わたしやらないからね」
マキナは『はぁ……』とため息をついて、自分の頭をかいた。
マキナ「お前、僕の話を聞いてた? これは使命であり、義務だよ? お前に選択の余地はない」
叶「いやいや、いきなり義務だ使命だ言われても困るんだけど……そもそも、魔法なんてあるわけないでしょ……」
叶(魔法少女なんてものが実際に存在しないことくらいずっと前から知っていた。妄想であり、空想であり、デタラメである魔法少女。まぁ、それでもあの頃のわたしはそんな魔法少女になりたかったんだけど……)
マキナ「ぼくが魔法を使えば、信じてくれるのか? 魔法少女になってくれるのか? 」
叶は少し黙り込んだ後に小さくつぶやく。
叶「もし、本当にわたしが魔法少女になれるとしても……今さら遅いわよ……」
マキナ「遅いだの早いだの言われても何も変わらない。お前には選択の余地はない。いいから
叶「悪いけど、わたしあんたに構ってる暇ないから」
叶はマキナの横を通り過ぎ、マンションの入り口の方へ歩き出す。マキナは叶の右足にしがみつく。叶はふらついてこけそうになった。
叶「ちょ、なにしてんのよ! 」
マキナ「君にここで逃げられては困るんだ、さぁ
叶「しないわよ! 離しなさいよ! 」
マキナを引き釣りながら叶は歩き出す。それを見た近所の主婦たちはひそひそと話している。
主婦A「ちょっと、あれ大丈夫なのかしら…… 」
主婦B「あれきっと虐待よ! 」
主婦C「警察に通報した方がいいんじゃない? 」
叶は主婦たちの方を見る。
叶(いやいや、なんでそうなるの~?)
叶が足を見るとマキナは悪い笑みを浮かべていた。そして、棒読みでこう言う。
マキナ「お姉ちゃんやめてー、いい子にするから体のあざを増やさないでー」
それを見て主婦たちはスマートフォン取り出す。
叶「わかった、わかった、もうやめるから! やめさせていただくから! もう一度ちゃんと話そう! うん、それがいい! 」
マキナは叶の右足から手を放す。叶はマキナをにらんだ。
叶(このガキ、殴ってもいいかな……)
叶はマキナの手を取り、歩き出す。
マキナ「どこにいくつもりだ?」
叶「ここじゃ、話しにくいのよ」
・マンションから少し離れた公園
叶と少女がいる場所から少し離れたところで小学生がサッカーををしている。叶のところにサッカーボールが転がってくる。一人の小学生が取りに来る。
叶「はい、どうぞ」
叶はサッカーボールを手に取り、取りに来た一人の少年に渡す。少年はボールを受け取る。
少年A「ありがとうございます」
少年Aは走って戻っていく。叶は走っていく少年の方を見る。少年がッ走っていく方はかつてジャングルジムがあった場所だ。叶の目にはかつてあったジャングルジムがうっすらと映る。
叶(ジャングルジム……無くなっちゃたんだよね……危ないからって理由で……)
マキナ「
叶「なってない。そもそもあんた何者なの? 」
マキナ「あれ? ぼく名前言ってなかったっけ? ではでは自己紹介。ぼくの名前はデウスエクス・マキナ。神様が作った人型の使者で、今日からお前の家に住むことになった」
叶「えっ!? 聞いてないんだけどそんなこと! 」
マキナ「今初めて言ったからな。ちなみにお前の父親はもう知っているぞ」
それを聞いて、叶はスマートフォンを取り出し、マキナに背を向けて父に電話をかけた。
叶「もしもしお父さん? えっと……なんとかマキナっていう子がウチに住むってほんと?」
父「あ、その話か……なんかその子を居候させるだけで大金がもらえるらしいんだよ。父さんびっくりだよ! そのお金で母さんが帰ってきたら回らないお寿司でも……」
叶は父が話している途中で通話終了のボタンを押す。スマートフォンを持っていた手をゆっくりおろした。
叶「ウソ……でしょ……」
マキナ「本当のことだ。ぼくが神様に作られた使者だということも、お前の家に居候することも、そしてお前が魔法少女にならなければいけないことも……」
叶「えっと……お父さんは魔法少女とかの話は知らないよね? 」
マキナ「安心しろ。言ってない」
叶(よかったぁ……)
叶「もし仮に……仮にだよ? わたしが魔法少女になったとして……何をするの? 」
マキナ「それは…… 」
爆発音(ドカーン)
叶「なにが起きたの? 」
叶は周りを見回す。木や電柱に止まっていた鳥が一斉に飛び去った。
マキナ「始まった……」
叶が道路の方を見ると、消防署やパトカー、救急車などがサイレンを鳴らして走っている。
少年A「おい、みんな見ろよ! 駅の方から煙が出てるぞ! 」
少年B「ほんとだ~」
少年C「火事だ! 火事だ! 」
叶とマキナは駅の方を見ると煙が出ていた。マキナは叶の手首をつかむ。
叶「えっ、なに? 」
マキナ「いくぞ」
マキナは叶を連れて走り出す。
叶「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 」
叶はマキナの手を振り払う。
叶「行くって……まさか駅じゃないよね? どうゆうつもりか知らないけどやじ馬とか危ないって! 」
マキナ「いいのか? 駅の近くでお前の友人が働いてるんじゃないのか? 巻き込まれているかもしれないぞ」
叶(そうだった! 桃は今日シフト入れてたんだ! でも……なんでこの子がそんなこと知ってるの? )
マキナ「ほら、早くいくぞ」
マキナは走り出す。
叶「うん……」
マキナのあとを追うように叶も走り出す。
・駅周辺
叶とマキナは駅の近くまで来たが、人だかりができていて警察が駅に人が近づかないように先頭で通行止めをしている。二人がいる最後尾からは灰色の炎が少し見えるくらいだ。
灰色の炎を見て人々は写真を撮ったり、現在の状況を電話で誰かに伝えたりしている。
叶「……桃、大丈夫かな……」
マキナ「はやくいくぞ」
マキナは人と人の間をズカズカと進んでいく。
叶「ちょっと! 待ちなさいよ~! 」
叶もマキナに続く。
・とある研究所
大きなモニターがあり、そこには駅周辺の様子が映っている。
それを見ている迷彩の服を着た金髪の男と白衣を着た緑色の髪の少女。
金髪の男は
喜助「詩音ちゃん、これあきらかに
詩音は口からキャンディーを放した。
詩音「そーっすね~99パーセント
喜助「俺ら行った方がよくね? 」
詩音「でも、姿が見えてないんだよな~っと、おおっ!」
喜助「どうした? 」
詩音「見てくださいよ! あの女の子! 」
詩音は画面に映る、マキナを指さしてはしゃぐ。
喜助「その子がどうかしたのか? 」
詩音「銀髪っすよ! ぎ・ん・ぱ・つ! こんなのアニメでしか見たことない! それにめちゃくちゃ可愛いし! あ~ほおずりしたいっす~! なでなでしたいっす~! いろんなところ触りたいっす~! 」
詩音は目を輝かせ、よだれを出しながらマキナを見ている。それを見て、喜助は苦笑いしている。
喜助「あ、あはははは……」
詩音は画面に映った叶を見た。
詩音「おや……おやおや……」
喜助「今度はどうしたんだい? 」
詩音「喜助さん、今日はわたしたちは待機でいきましょう」
喜助「え、なんで? 」
詩音「もしかしたら今日、新たな魔法少女の誕生を見ることができるかもしれませんよ」
・駅周辺
人ごみの先頭になんとかたどり着いたマキナと叶。警察が通行止めしている向こう側では灰色の炎に包まれた多くの店やビルがあった。消防士による鎮火と救助が行われている。何人かが救助されて、救急車に乗せられている。ここから見る限り、桃の姿はない。
叶「桃、救助されてたらいいんだけど……」
警察A「この先は危険ですから通すわけにはいきません。早く戻ってください」
マキナ「危険なのはお前たちの方だ。こんなところにいてないで、さっさっと逃げた方がいい」
警察A「きみ、警察にむかってなんだその口の利き方は! 」
叶「ちょ、なにやってんのよ! すいません妹がわけのわからないことを言って」
マキナ「事実だ! ぼくの発言に嘘偽りは……」
消防士がいるところに炎がせまった。救助する人も救助された人もすべて巻き込まれた。そこには、ただ灰色の炎が燃え盛っているだけ。
叶「……桃……桃ッ! 」
叶は爆発が起きた方へ向かおうとするが、警察Bがそれを止める。
警察B「危ないからやめなさい! 」
叶「離して! 桃が! 桃が! 」
マキナは灰色の炎の方を黙って見ている。灰色の炎の中からフードを着た男性が出てきたのがわかる。顔は見えない。
警察A「生存者だ! 」
警察Aが近づいた。
マキナ「よせ! やめろ! 」
マキナの言葉に警察が振り向く。警察Aの肩にフードの男の手が触れる。男はフードを外し、警察Aの耳元でささやく。
フードの男「生存者やないで……ワイは捕食者や! 」
フードを外した男の顔は人間ではなくトカゲのような顔で、肌は灰色だった。捕食者は警察Aの首に噛みつく。
警察A「あああああああああああああああああああッ! 」
警察はあまりの痛みに泣き叫ぶ。それを見ていた人々は恐怖で何も言えなかった。警察Aはどんどん痩せていき、肌の色は灰色になった。捕食者は警察を噛むのをやめて、頭をつかんで放り投げた。
捕食者「ごちそうさんでした」
捕食者がそういった瞬間、人々は悲鳴を上げて逃げた。捕食者に近づいて銃を構える警察たち。
警察B「動くな! 動くと撃つぞ! 」
捕食者「あーあーあー、せっかくようさん集まるまで待ってたのにこれじゃあ、台無しや……」
捕食者は両手を上げる。
マキナ「やめろ! そいつと戦おうとするな! 」
叶「なにしてんのよ! わたしたちも逃げるよ! 」
叶はマキナの手をつかみ走り出した。
捕食者がニヤリと悪い笑みを浮かべた。捕食者の体は灰となり、その灰は銃を構える警察官のもとに飛んでいく。警察官Bの目の前で灰は一か所に集まり、再び捕食者となった。
捕食者「驚いた? 」
警察官B「うわっ! 」
警察官Bは驚いて、しりもちをついた。
警察B「う、撃てッ! 」
その場にいた警察官が一斉に銃を捕食者に向けて引き金を引いた。銃弾は捕食者に当たると、そのまま地面に落ちた。警察官の銃の弾が切れる。
捕食者「あらら、もう終わっちゃったか」
捕食者は警察官Bの首を持って、持ち上げた。
捕食者「イリュージョン! 」
そういった瞬間、警察官Bの全身は灰色の炎に包まれた。
警察官B「熱い、ああ、熱い! 誰か、誰か! 」
警察官たちはその場から逃げてパトカーに乗りその場から離れようとする。捕食者は警察Bから手を放した。警察Bは地面でのたうち回っている。
捕食者「おいおい、おまわりさん……逃げたらあかんで」
捕食者は手のひらにソフトボールほどの火球を生み出し、次々とそれをパトカーに投げつける。火球が直撃したパトカーは灰色の炎に焼かれ、爆発した。
捕食者「あかんあかん、焼きすぎると食べる前に死んでまうがな」
捕食者が指を鳴らすとパトカー、警察、建物などその場のすべてを燃やしていた炎が消えた。運よく炎を避けたパトカーが叶とマキナを引きそうになる。
叶「うっ」
叶は目を伏せる。マキナは叶の前に立った。
マキナ「
マキナと叶は瞬間移動し、パトカーはビルに激突した。叶が
目を開けるとそこにはマキナの背中があった。
叶「あれっ? なんともない……」
マキナ「ぼくが魔法を使ったんだ」
マキナは叶の方に振り返った。マキナの目からは涙のように血が流れていた。
叶「マキナ、血が出てる」
叶はポケットからハンカチを取って血を拭いた。
マキナ「魔法……信じるだろ? 」
叶「信じるしかないよね……わたしの使命って、あの化け物と戦うことじゃないよね? 」
マキナ「残念だが、あれと戦うのがお前の使命だ。」
叶は足の力が抜けて、地面にひざまついた。
叶「そんなの無理だって! 警察だってやられちゃってるし! 無理だよ……絶対むりだよ! 」
マキナ「瀬戸内桃が死んでもいいのか? お前は見殺しにするのか? 」
叶「あの炎に巻き込まれてたら、もう遅いよ…… 」
マキナはしゃがんで、叶の肩を正面から両手で持った。
マキナ「あいつは、
マキナが叶に話しかけている間、
マキナ「だが、あいつは色を消化することはできない……蓄積することしか出来ないんだ。お前がここであいつを倒せばみんなの色は元に戻る。色を奪われる以外で命を奪われない限り、あいつさえ倒せばすべて元に戻るんだ! 」
叶は顔を上げる。
叶「ほんとに……? 」
マキナ「あの場にいる全員の命も、瀬戸内桃の命もお前にかかってるだ! それにこのままここにいてはお前もいずれは殺される! だから、戦え宮城叶! 自分のために、みんなのために! 」
叶「そんなの出来るわけないじゃん……わたし一人で出来るわけないじゃん……」
マキナ「戦うのはお前だけじゃない。ぼくも一緒だ」
そういうとマキナの体は突然輝いて、マキナは杖になり宙に浮いた。その杖は60cmほどの長さで、先端には目玉があり、その目玉から羽が生えていた。
叶(魔法少女の杖のわりにデザイン可愛くないなぁ……)
マキナ「今、失礼なこと思ってただろ」
叶が杖をつかんだ瞬間、腰にカードデッキが現れた。
マキナ「お前には戦うという選択肢しかないぞ」
叶は立ち上がり、杖をつかんだ。
叶「わかった……やるよ……やってみる。こんな最悪の状況を打破できるのはわたしだけなんでしょう? だったら、やってみるよ……」
マキナ「わかった。まずは
叶は言われたとおりイメージしてカードをドローした。ドローしたカードは
マキナ「そのカードをぼくの眼にかざせ」
叶「こう? 」
叶は杖の先端にある目にカードをかざす。
目は輝き、カードは消えた。
マキナ「これであとは……」
「ママー! ママー!」と叫ぶ声がした。
叶は声の方へ駆けつけた。そこには熊のぬいぐるみを持った少女が一人でいた。
叶「大丈夫? けがない? 」
少女はうなずいた。
少女「あのね、ママとはぐれちゃったの……」
叶「ここは危ないから姉ちゃんが安全なところに……」
なにかが近づいている気配がして、叶は後ろを振り向くと50mほど先に
彩無「よっしゃ~! まだ警官以外にもおったかー、人間! 」
彩無は手のひらに灰色の炎を生み出した。
叶「(少女に向かって)走って! はやく! 」
少女「うん」
少女は走り出した。
彩無「へー、感動もんやな! 自分を犠牲に他人を助ける! ええ行いや! 素晴らしいわ! 」
彩無の火球はどんどん大きくなっていき、運動会で使う大玉ほどの大きさになった。
マキナ「まずい! 」
彩無「まぁ、まだまだ射程範囲内やけどなー!」
彩無は大玉を放った。
マキナ「かなえ!
爆発音(ドーン)
大爆発が起きた。
・研究所
モニターで駅周辺の状況を見ている喜助と詩音。
喜助「あっちゃ~やられちゃったか~」
喜助はモニターを見るのをやめた。
詩音「面白いものが見れると思ったんっすけどね~」
画面には灰色の炎が映っている。
その中に小さな赤い光が見える。
詩音「喜助さん、今の撤回っす…… 」
喜助「え? 」
喜助はモニターを見た。
詩音「来ましたよ~赤色の魔法少女っす! 」
・駅周辺
灰色の炎に包まれた駅周辺の大路地。彩無には灰色の炎の中に何かが見えた。
彩無「誰や! そこにおんのは! 」
何か棒のようなものを持ったそのシルエットが棒を振った瞬間、灰色の炎が消えた。背中まである赤い長髪、白い服に白いスカート、その両方には赤いラインがはいっていて、その手には先端に目玉がついた杖を持っている。
彩無「ここで会うとは思わんかったぞ! 赤色の魔法少女! 」
彩無の叫びは大路地に響いた。
叶「よっしゃあっ! かかってきなさい放火魔! 女子大生魔法少女カナエちゃんが相手よ! 」
叶は杖を構えた。
マキナ「わりと乗り気だな」
叶「こうでも言わないとやってらんないのよ…… 」
叶(こうして、わたしは19歳大学二回生にして、魔法少女になりました。この先どうなるのやら……神のみぞ知る……いや、もしかしたら神さまも知らないかも……)
(つづく)
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