第28話 旅の再開。親愛と愛情の絆

ズルリと音が聞こえるのではないかという、立派な逸物が自身の身体から抜き出され、ぶるりと一度身震いを起こした。相手の砲身はまだ身を擡げたまま硬度を保っていた状態であったが、その持ち主は続きをするそぶりを見せない。


アドフは身体やシーツについてしまった精液をタオルで拭き取ると、ガーディを抱きしめベッドに横たわった。


「幸せだ…」


どちらが出したかわからない溜息のような声音で思わず零す。


本当は腸内に出された精液を出さないと後が大変だとわかっているが、今はこの甘い空気に酔いしれていたい気分だ。


セックスは相手を最愛の人と思うことでより盛り上がると言われているが、そう思わなくても目の前の人が最愛の人であると心からそう思う。例えそれが契約の力だとしても、今はこの感情は偽りのものではないと証明は出来ないが、断言できる。それだけお互いが愛おしいのだ。


「アドフさん。改めて言います。僕はアドフさんが好きです」

「今言われると、一度じゃ止められなくなる。もちろん俺もディーを愛している」


アドフさんが抱きしめる腕の力を強めた。より密着感が増したことで、彼の砲身が臨戦態勢に入っているのを認識してしまった。






この後、一緒に浴室へ行ったが、アナルに残った精液を掻き出す作業中、お互い少しムラっときてしまったので、お互いのものを扱きあって発散させた。最後まで致していないがそれでも盛り上がったのは内緒の話だ。


体を洗いお互いさっぱりし、寝室に戻り一緒に寝ることにした。ナチュラルに腕枕をしてもらっているガーディは内心ドキドキしている。自分がこんなにも夢中になった相手は、長い間も生きていても滅多にない。その中でこうして一緒にいられる事は本当に幸せだと思う。それと同時に失った時の悲しみは計り知れないのだと、避けられない別れに一つの覚悟を決める必要がある。それは暫く先の話であったとしてもだ。

思わずギュッと彼を抱きしめた。


「どうした?」

すぐに優しい声が降ってくる。


「アドフさん、どこにも行かないですよね」

「あぁ、どこにも行かないさ。それはディーも同じだろ」


そうだ。お互い一緒に行くと決めてから、すこしの間ではあるが一緒に過ごした。その中で意図的に離れた事はない。それは小さな積み重ねではあるが、一つの実績でもある。今後は勿論どうなるかわからないが、互いを信じるには十分ではないかと思う。


「アドフさんの側が心地良いからずっと一緒ですよ」


そうか、と呟き片腕でガーディを抱き込みそのまま少しの静けさの後、小さな寝息を立てたのだった。






翌朝、ノーザンホーク家の皆に挨拶をして、旅の再開をする。

別れ際、長女のソニアとも顔を合わせたが彼女は妙に肌をツヤツヤさせていたが、何かあったのだろうか。何故だろう、怖くて聞けない。


少しの恐怖を持ち越したまま、旅は再び始まる。





再開場所は先日転移テレポートした場所からだ。街道に伸びてゆく道は山脈に向かって続いている。山脈の麓からは二つに道が分かれており、先日決めた通り、西のルートを使う事になっている。


「この山って確かドラゴンが住んでるんですよね」


遠くにそびえる山々を見ながら、今朝少しの調べた情報を口にした。


「あぁ、彼処には大小十数もの名のある山があるが、それぞれ一匹のボスドラゴンを筆頭に、様々な種のドラゴンが生活している。知能はあるそうだが、人間と一度出会うと運が良くない限り無事ではいられないと聞くな」


それはなんとも恐ろしいドラゴンだことで。

是非とも背中に乗りたいところだったが、かなり厳しいらしい。こんな事だったらテイム魔法を習得しておけば良かった。今からでも間に合うだろうか?


「ドラゴンと人間は昔から仲が悪かったんでしょうか」


生理的にお互い受け付けないとかだったら、そもそもテイムできない気がする。


「いや、そういう訳ではなくてだな…これは人族が圧倒的に悪いのだが、ドラゴンの卵が妙薬なるとされている」


あー、成る程。このネタは何処の世界でも一緒なのかな。つまりあれだ

『たまごドロボウ』

だった。こんな所でテンプレートに出会うとは思わなかったが、確かに人間が一方的に悪い。

そしてフラグが立った気がする。


「確かに人族が悪いですね。それで人間を警戒しているのでしたら納得がいきます。僕たちもできる限り接触を控えて行きましょう」


「そうだな。わざわざ竜種を怒らせる道理もないしな。接触は最小限で行こう」


山の越え方の方向性を大まかではあるが決められた事だし、これからは少しの移動のスピードを上げる事にする。そこで召喚獣を呼び出す。呼び出すのは勿論富の運搬者コレステロールこと、ステである。相変わらずのネーミングセンスに溜息が出る。数日ぶりに現れた彼女は元気そうだ。元気というよりも元から幻獣であった彼女は元々病気にはならない。

しかし勿論物理攻撃は効くので、強い攻撃を受ければ消滅してしまう危険はある。対策として御守りを付けさせているが、それでも可能性はある。消滅しなければ、幻獣界に戻ることで回復できるので、重症を負った場合は強制送還の魔法陣を持たせているが、たまに心配になる時がある。それでもガーディも、ステもお互いに信頼しているから不安を表に出すことはまず無い。それぐらい付き合いが長いのだ。



「ステ、よろしくね」

ブルルと任せろと言わんばかりに嘶いた。

ステと馬車の荷台を同時に召喚し、ステに引いてもらえるように準備する。馬車を準備した所で早速旅の再開をした。


馬車での移動は結構楽しい。時速は10〜25kmとそこまで早くは無いが、景色を楽しむのにちょうどいい上に、ステも疲労が溜まりにくい。急ぐ旅でも無いのでこのまま長閑のどかに旅を続けた。


そんな気ままな旅から数日かけて、山脈の麓の村に辿り着いた。

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