吉村美代子の憂鬱&国木田の野望

@hinotomoki

第1話 きっかけ

「あ、ミヨキチじゃないか!久しぶり!」


今から思えば、あれが、きっかけなんだと思う。


客観的には、親友の兄と、すれ違う際に、ちょっと、挨拶をしただけ。


だけど、その日から、私の人生は変わった。――春休みの、あの日から。






「美代子ちゃん、久しぶり。僕のこと、覚えている?」

そういわれても、美代子はすぐには反応できなかった。

どうして、この人は、私の家を知っているのだろう?という疑問が、第一に浮かんだ。

不思議に、「この人は誰?」といったたぐいの疑問は、浮かばなかった。

なぜなら、一度しか会っていないにもかかわらず、不思議と、彼の顔を見ると、名前が浮かんできたからだ。

「キョン君の、お友達の、国木田さん?」

「そうだよ。よく覚えているね。やっぱり、美代子ちゃんだね。」

どういうことだろうか?美代子には、国木田の言う言葉の意味が分からなかった。

「さっき、君はキョンとあったよね?」

「あ、はい、キョン君とは、少しすれ違いましたけど・・・・・。」

「君は、それを、偶然だと思うかい?」

「え?どういうことですか?」

「二人は、偶然、すれ違ったのか、必然的に、すれ違ったのか――ほら、よく、運命的な出会い、という言葉があるでしょ?本当にたまたまだったのか、何かの運命だったのか、どっちだったと思う?」

他人にあまり恐怖を与えない、中性的な容姿の国木田だったが、ここまで意味不明の質問をされると、美代子の心に若干の警戒心がわいてきた。

「そういわれても・・・・たまたま、だったと思います。だって、すれ違っただけで、何も起こりませんでしたから。」

「そうか・・・・。ねぇ、佐々木さんのことは、知ってる?」

「佐々木優佳ちゃん?」

「いや、君のクラスメイトの話じゃなくて…。」

「あ、キョン君の彼女さんですね!前に、三度ほどお会いしたことがあります。」

「そうそう。その、佐々木さんが、一年ぶりぐらいにキョンと、先ほど再会したんだ。それで、少し、気になってね。」

「どういうことですか?」

「君とあって、さらに、その直後に佐々木さんと会う――しかも、その時、僕は図書館に向かうために、キョンと同じ駅の方へ向かっていたんだ。キョンは僕の存在には、気が付かなかったようだけどね。」

そういった後、国木田は続けた。

「キョンと美代子ちゃんがあったこと、キョンと佐々木があったこと、僕とキョンが同じ駅に向かっていたこと――それは、それぞれ一つだけだと、何の問題もないよ?だけど、それが三つも重なった。それで、僕は嫌な予感がしたんだ。」

「どういうことですか?」

「う~ん、なんといったらいいだろう・・・・いつかは君にも話すと思うけど、佐々木さんは普通の人間じゃないんだ。それで、僕が家に帰ろうとすると、周防九曜さんに出会った。あ、君は周防さんのことは知らないよね?このことを言ったらややこしくなるんだけど・・・・まぁ、とにかく、色々と変わったことがあって、今日、美代子ちゃんに会いに来たわけだ。」






「古泉一派の動き、おかしくないか?」

「どういうこと?」

私は、上村君に聞いた。

「ここ最近、涼宮ハルヒの精神状態は安定しているのに、殊更に『神人狩り』をしているらしいことと、どうも、北高の新入生全員の身体検査を行おうとしている節がある、ということだ。」

「ああ、そっかぁ~。」

「そっかぁ~、じゃないよ!また、何か大きな動きが起きたら、どうするんだよ!」

「大きな動き?それなら、関わらないほうがいいんじゃないの?」

「え?」

「キョンと佐々木、この二人が再会したことは、知ってるでしょ?キョンの手元には、佐々木とハルヒ、この二つの切り札がある――そんな今で動くのは、得策じゃないわ。」

そういった後、私は呑み込みの悪い上村君に続けた。

「なんのために、国木田君に美代子ちゃんの家に行かせたと思っているの?おそらく、4月ぐらいに大きな変動が起きる。その時に、下手に動くと、世界改編と同時に私たち自身の存在が『なかったこと』にされてしまうかもしれないでしょ?――ここは、その大変動で、キョンが涼宮さんと佐々木さんのどちらを選ぶか、見極めてから動く方が、得策ね。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

吉村美代子の憂鬱&国木田の野望 @hinotomoki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ