第14話 プシュケーラ

「今日はプシュケーラですね」


 休前日の昼下がり、アオイに母乳をあげていたカエデは、替えのオムツを持って来たメイドがそう声を掛けてきたことに、首を傾げる。あれ?っと少し動作を止めて考えていたそのメイドは、「あっ」と声を出すと、にっこりと微笑む。


「この半島に言い伝わる伝統というか、風習というかそういうものなんです」

「そうなんですかぁ」

「そうなんですっ」


 とても嬉しそうに返事をしたメイドは、そのままウキウキと、アオイが寝る小さなベッドのシーツを交換し始める。あまりにも心を躍らせているメイドに、どんな風習なのか気になり始めたカエデは、思い切って聞いてみる。


「あの、よかったらどんな風習か教えてもらっても?」

「もちろんです」


 そう言って近づいたメイドは、少しだけキョロキョロと周りを見回すと、何故か小さい声で囁くように伝える。


「愛の告白の日なんですよ」


 キャッといって顔を赤くするメイドに、疑問だらけのカエデであった。




 一方、厨房でも同じ話題が同時進行していた。


「本来は、男性が女性に告白する日なんだよ」

「ほぉ」


 シェリー酒の入った瓶を受け取りながらアルトは頷いて先を促した。


「そのときの贈り物がお酒なんだ」

「…うん」


 火に掛けた鍋でニンニクを炒めているアルトの生返事に、セリノがはぁっと溜息を零す。


「それが何故か聞きたいんだろ?」

「あ~、そうだった、ごめん」


 ぺこりと頭を下げるアルトに肩を竦めて見せると、水を張った自分の鍋も火に掛けるセリノ。


「まぁいいや…それで、なんでそうなったかっていうと、昔の神話が由来なんだ」

「ほぇ~」


 なんともいえない返事を返すアルトであった。




 カエデとアオイがいる部屋では、さすが女性というべきか徐々に盛り上がりを見せていた。


「その神話って長いんです?」

「カエデ様、聞きたいです?」

「うん」


 花が咲くような笑顔を向けられては断れないメイドであった。カエデの腕の中で眠ってしまったアオイをそぉっと小さなベッドに移す。その間にカエデはベッドの側にある丸い椅子を自分の横に準備すると、「どうぞ」と促した。ここに長時間コースの完成である。


「それでは、お聞かせいたせましょう」


 コホンと一つ咳払いをしたメイドは、昔から伝わる神話を語り始めた―


 遠い遠い遥か昔のこと、それはそれは美しい霊人族の娘がおりました。その美しい娘は噂となり、性別も種族も関係なく、多くの人に慕われるようになっていきました。

ある日のことです。そのあまりの美しさに人々の敬意を集め始めてしまった娘に“美を司る神”が、嫉妬をしてしまいます。そして、あろうことか息子である“愛を司る神”に嫌がらせを命じるのです。悪戯好きの彼でしたので、喜んでそれを受けるのですが、その途中で彼自らが傷ついてしまいました。その時に側にいた美しい娘は、嫌がらせをされていたのも忘れて、彼を助けます。そのことに感動した彼は、こうして助けてくれた美しい娘に恋をしてしまうのです。

その美しい娘には姉妹がおりました。日頃から比較され、持て囃されるその娘のことを良く思っていませんでした。そこへある噂が届きます。それは、神が霊人族に恋をしたという噂でした。その姉妹は思います。あの娘と似た容姿である私たちならば、出し抜けるかもしれないと。あわよくば、自分たちが神と結ばれるのではないかと。

 ある夕暮れのこと、姉妹は暗くなる前に屋敷の明かりを点けるようにと美しい娘に命令をします。渡された蝋燭に細工が施されているかもしれないなどという疑問は何一つ持たなかった娘は、何の疑いもなくその蝋燭を受け取ると、言われたとおりに明かりを灯すため、屋敷の階段を上り始めるのでした。その時でした。フッと階段の上から“愛を司る神”が現れたのです。その気配に気づいた娘は、蝋燭から目を離して、彼を見上げます。手にしている蝋燭が真ん中から折れるようにゆっくりと倒れ始めていることに気づかずに…。しかし、“愛を司る神”は気づいてしまいます。娘を助けるために慌てて近寄るのですが、身を挺して娘を庇った彼は、なんと大火傷を負ってしまうのでした。

 これに怒ったのが彼の母である“美を司る神”でした。件の噂だけでも許せなかった彼女の怒りは、美しい娘を捕らえてきた者には、自らの接吻を褒美に与えるという褒賞を掲げるほどでした。その話を人伝に知った美しい娘は、恐ろしくなって逃げ出すのですが、しかし相手が神ということで、誰も手を差し伸べてはくれませんでした。最終的に諦めた娘は、自ら出頭するのでした。“美を司る神”は、捕らえた娘に自ら折檻するのですが、それだけでは腹の虫が収まらない彼女は、その後も次々と無理難題を押し付けるのでした。

 一方、傷が癒えた“愛を司る神”は、母の行動を知ることになります。すぐに娘を助けに駆けつけた彼の眼に飛び込んできたのは、押し付けられた無理難題をどうにか乗り越えようとする健気な娘の姿でした。心を打たれた“愛を司る神”は、神の酒を取りに帰ると、すぐに戻って彼女の前に現れました。傷ついた身体を癒す飲み物だと言って、その酒を飲ませた彼は、そのまま彼女に求婚するのでした。しかし、美しい娘は、身分違いを恐れて断ります。そこで、彼は、傷を癒した飲み物は、神の酒であったこと。その酒を飲んだということは、神々の仲間になったことなのだと伝えるのでした。それを知った美しい娘は、それならばと涙を流し、喜んで結婚することを引き受けたのでした。


「―この“愛を司る神”の妻の名がプシュケなのです。そして、神の酒を飲んだとされる日が2月第3週の休前日。この神話が基になって、プシュケーラの日には、男性から女性へ酒を送るのが習慣になったそうです」


 話し終えて満足そうにメイドがふぅっと息を零す。そんな彼女に「ありがとうございます」とカエデは頭を下げるのだった。




 曇っていた空がだいぶ晴れてきた夕方の少し前、階下にある厨房でも、神話の全貌がアルトへと伝えられていた。


「だから、酒なんだねぇ」


 そう言って、厨房の椅子に腰掛けているアルトが、パスタを突く。この二人、器用に料理をしながら神話トークをしていたのだ。


「今では求婚っていうのは廃れちゃったけどね」


 ははは、と笑うセリノが、じぃっと見つめる視線に気づき、そっと視線を逸らす。


「セリノは、誰かにあげないの?」

「ん~、どうだろう」


 そういってガタっと立ち上がると、慌てるように夕飯の準備を再開する。一人になってしまったアルトは、遅すぎる昼食を再開するのだった。




 所変わって二階の一室では―


「カエデ様はいいですよねぇ、旦那様がもういますから」


 ガールズトークが盛り上がっていた。


「ギジェルミーナさんは―」

「皆、ミーナって呼ぶのでミーナでいいですよ」

「それなら、私も様はやめてね」

「はい」


 楽しそうな話し声の中、アオイはスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。


「改めて、ミーナはそういう人いないの?」

「ん~、どうかなぁ」


 小首を傾げて、心当たりを探していたミーナは、パッと顔を上げると


「男性から来るのを待つ身としては、貰えたらとりあえず嬉しいですね」


 と言って、かわいらしくはにかんだ。しかし、カエデはその答えでは納得しない。


「それじゃ、質問を変えて、贈って欲しいなって人はいないの?」

「えっ」


 途端に頬を染めてあからさまに動揺するミーナ。


「やっぱり、いるわよねぇ」

「えっ、えっ」

「言っちゃえっ」

「っ!!」


 顔を赤く染めたミーナは、下を向いてモゴモゴと何かを自問自答し始める。それをかわいいなぁと、カエデは眺めていると、急にガバッと顔を上げたミーナが少し前のめりに詰め寄ってきた。


「カエデさんっ!男の人ってどうしたらいいですかっ」

「……………え?」

「あっ、そのっ、いえ…」


 シューッとまるで湯気でも出ているかのようなミーナの真っ赤な顔に、苛めすぎたかと反省するカエデ。


「…少しだけ相談に乗りましょうか?」

「お願いしますっ」


 スヤスヤと眠るアオイには、まだまだ早すぎるカエデの恋愛講座が開始されるのであった。




 空が赤みを帯びてきた頃、サンタンデルでも有数の物販店が並ぶペルダ通りを二人の青年が歩いていた。


「えーっと、どこに向かっているのかは聞いてもよろしいか?」

「…もう少しで着くと思う」


 ほんのり頬を染めたセリノと、その少し後ろを困惑気味に歩くアルトであった。




 街へ出る少し前、食事を終えたアルトが食器を洗っているところへ、セリノが俯き気味に声を掛けてきた。


「…アルト、少し時間あるかな?」

「ん?」


 軽く返事をしたアルトは、深刻そうなセリノの様子に、少し驚いた。


「洗ったらでいいかな?」

「…うん、できたら外で話がしたい」


 こうして連れ出されたアルトは、どこへ行くかも知らされず、とりあえず着いてきて欲しいと言われて今に至る。時はプシュケーラの夕方…もっともカップルの多い時間帯である。


「…そろそろ教えてくれても―」

「着いたよ」


 アルトの言い掛けた言葉を遮るようにセリノが到着を知らせる。


「……ここって」

「そう、料理道具が豊富なお店」


 嬉しそうに笑うセリノに少しドキッとしたアルトの背中に冷たい汗が流れる。


「…なんで今日?」

「ん~…今日だから?まぁ、いいから入ろう」


 セリノに手を引かれて入った店の中は、アルトの予想通りカップルでいっぱいであった。そのままぐいぐいと奥へ進むセリノを一旦静止させる。


「ちょっと待った、セリノ」

「あっ、ごめん…ちょっと急ぎすぎた」


 アルトの声に振り返ったセリノがちょこんと頭を下げる。と、周りから微かに黄色い声があがった。


「ちょっと手を離そうか」

「あっ…ほんとにごめん」


 そう言って恥ずかしそうにするセリノは、またも黄色い声を呼び込むのだった。当たり前である。眉目秀麗の銀髪青年が、見た目クールなイケメン灰色お兄さんに頭を下げているのである。


「ちょっと来いっ」


 急いでセリノの腕を掴んだアルトは、そのまま引き摺るようにして人目のつかない二階へと上がる階段の下までやってきた。


「…どういうつもりだ?」


 腕を放すと、少しきつめに問い質す。


「いや…あの…」

「いいから言え!」


 いつもの穏やかな雰囲気が消し飛んだアルトに怯えながら、セリノは怖ず怖ずと口を開く。


「…実は、前から好―」

「ちょっと待て!いいかっ、落ち着いてよく聞けよ」


 言葉を遮って捲くし立てるアルトに、うんうんと首を縦に振るセリノ。


「俺は、結婚していて奥さんもいるし、子供も産まれた」


 あまりの剣幕にセリノがぶんぶんと首を縦に振る。


「一夫多妻が認められているのは分かるがっ」


 アルトは、そこで一呼吸いれると少し落ち着きを取り戻したように後を続けた。


「今は奥さん以外と付き合うつもりはない」

「………は?」

「……え?」


 きょとんと顔を見合わせる二人。


「いやっ、だから俺はセリノとは―」

「ぷっ!ははははは」


 顔を真っ赤にしているアルトに、セリノが噴き出した。腹を抱えてひぃひぃ笑っているセリノをただ呆然と見ることしかできないアルト。


「はぁはぁ…ごめんごめん」

「あ~、理由を説明してくれると嬉しいかな」


 灰色の髪をくしゃくしゃと握ったアルトは、頬を染めて恥ずかしそうに少し上目遣いで聞いた。


「僕のほうこそ、なんかすごい勘違いをさせたみたいでごめん」


 そう言って頭を下げたセリノは、顔を上げると恥ずかしそうに打ち明ける。


「実は、前から好きな人がいてね。その人が料理を覚えたいって言っていたから、いいのがないかと…ね……あれ?アルト??」

「連れてくる前に言えぇぇぇ」


 店内にアルトの雄叫びが響き渡った。




「それでどんなのにするのかは決めてはいるんだろ?」


 商品が並ぶ店内に戻ってきた二人に相変わらず視線が集まるが、問題を乗り越えた二人は大して気にしていなかった。アルトの問いに少しだけ考えたセリノは、質問で返す。


「初心者には、やっぱり包丁がいいかな?」

「まぁ、鍋とか笊とか貰っても…一緒に料理するなら別だけどなぁ」

「一緒に料理もいいね」


 そう言って削り器を手に取るセリノに、アルトが溜息交じりに言った。


「一緒にやるにしても包丁がいいと思うよ?」

「…ん~、やっぱりそうだよね」


 笑顔を浮かべたセリノが削り器を元の位置に戻すのを待ってから、店内をまた仲良く物色するのだった。




 日も暮れて、外は寒くなってくる時間、執事長のバルドメロとメイド長は揃って領主の屋敷へ行っているため、領主別邸は緩い空気が流れていた。プシュケーラのこの日に、若者が多い別邸を気遣ってのことであるのは言うまでもない。


「「いただきます」」


 そして、食堂ではなくカエデとアオイが寝室に使っている部屋で、4人の男女が食事をしようとしていた。


「…どうして、この面子で御食事をすることになったんでしょうか?」


 食前の挨拶をして食べ始めたファーリス夫妻に、勇気を持って疑問をぶつけたのは、頬を少し赤く染めているミーナであった。


「ギジュルミーナさ―」

「ミーナって呼んでください。皆さん、そう呼んでくれていますので…アルト様も」


 ミーナの声に反応したのは、さっそく料理に手をつけている二人ではなく、少し緊張しているセリノであった。


「で、では、ミーナさん…お嫌でしたか?」

「あっ、いえっ、そんなわけではっ」


 セリノが悲しそうな顔で尋ねると、ミーナは慌てて否定して下を向いてしまう。一度、食ベるのを止めて、そんな彼女に優しい笑みを向けたカエデが、明るく声を掛ける。


「私とアルトは夫婦で、アルトは仮の主。料理長のセリノさんに、メイド長亡き今はこの屋敷のメイド責任者のミーナさん」

「勝手に殺さないようにね」


 アルトが食事をしながら、器用に合いの手を入れる。それを無視したカエデは、まだ手をつけていない二人に向かうと


「だから、無礼講で冷めない間に食べましょう」


 可愛い笑顔で言うのだった。そう言われてしまえば断る理由もなく二人は、軽く礼をしてから食事を始める。「食いしん坊の笑顔」と呟いたアルトは机の下で脛を蹴られて絶賛悶絶中だった。


 夕食はなんだかんだと和やかに進んだ。そして、粗方器も空になってきた頃、男性陣がすごすごと一度退室した。


「なんでしょうか?」


 二人がいなくなったところで、ミーナがカエデに問い掛ける。


「期待しちゃう?」


 ミーナが口をパクパクさせて慌てるのを楽しそうに笑ってから、カエデは片方の口端だけを上げて意地悪そうな顔をする。


「素直じゃない女の子は嫌われちゃうわよ」


 真っ赤な顔をして俯くミーナを見て、クスッと笑うカエデであった。


 程なくして、酒蒸しとシェリー酒を持って男性陣が戻ってくる。表面的には、男性二人から女性二人へという形を取ってはいるが、飲酒できないカエデにはアルトが酒蒸しを贈っているため、必然的にセリノがミーナへとシェリー酒を渡すことになる。


「ありがとうっ」


 独身男性の告白の場と聞いていたカエデは、この風習をアルトが知っていたことにも驚いたが、わざわざ酒が飲めない身体を気遣って、こんな贈り物を貰えると思っていなかったため、感動していた。


「ちょっとしたものだけど…ね」


 そう言って髪をくしゃっと握るアルトに少女のような可愛い笑顔を浮かべるのだった。


「ど…どう、ぞ」

「あ、あ、あ…」


 その隣では、顔を真っ赤にした二人が何かの儀式を行っているようだった。ガッチガチに固まったセリノが瓶を差し出せば、ミーナはすぐに受け取ることもできずに、手を中途半端な位置で止めたまま、何か呪文を唱えている。


「二人とも緊張しすぎだ」

「うん…緊張しすぎ」


 すでに自分たちの世界から帰ってきた二人が、呆れたように呟く。ギ、ギ、ギと音でも聞こえるかのようにカエデの方へと顔を向けたミーナは、既に涙目であった。そんなミーナに、カエデは身体の前で拳を握ってエールを送る。一つ頷いたミーナが、再びギギギと顔をセリノに向ける。


「これ見てたほうがいいのかな?」

「う~ん…でも面白いからもう少しっ」


 すぐ近くで交わされるそんな夫婦の言葉も耳に入らないまま、やっとミーナの手が瓶に触れる。


「あ、あ、ありっ!!」


 そして、指が触れた二人が、真っ赤な顔で見つめあったまま固まった。


「あ~あ」

「ありゃりゃ」


 あまりの初々しさにほっこりする二人であった。その後、ミーナの聞こえるか聞こえないか分からないほど小さな「ありがとう」を聞くまで、このシェリー酒の授与式は続く。


「どれだけ時間かけるんだ」


 やっと席に座った二人に、アルトが最初に掛けた言葉だった。そして、その声に反応したのかアオイが泣き出すと、夕食はお開きの雰囲気が漂い始める。


「あ~、一度出てくるよ」


 そう言って、カエデに軽く笑みを向けてから、アルトはセリノを連れて退室する。そう、まだセリノの試練は続いていた。


「んで、渡す?渡さない?」


 厨房まで戻ってきた男性陣の作戦会議である。ただし、アルトに残されていた気力は、もう残り僅かである。


「…渡す!」


 睨み付けるように返事を返したセリノに、もう少し付き合ってやるかと、笑顔を浮かべるアルトであった。


―コンコンコンッ


「そろそろいいかな?」


 入っていいかを確認してから、男性陣が部屋に戻る。どうやら女性陣では、軽くお説教があったらしい。ミーナがしゅんとしていた。


「あ~…最後にちょっといいかな」


 アルトが、セリノの背中を押してやる。一度、極限までの緊張を味わったおかげか、セリノは先程よりかは硬くならずに、ミーナの前に立った。


「あ、あ、あ…」


 またこれが始まるのかとアルトは、げんなりするのだが、セリノはすぐにグッと顔を上げる。


「あの、これ、もらってくれませんかっ」

「え?…え??」


 突然のことに、ミーナは混乱している。一言言えたセリノは少し緊張が解けたのか、表情を柔らかくすると優しく伝える。


「料理覚えたいって言っていたから…ね」


 セリノが差し出している箱に手を伸ばしたミーナは、それを受け取ると胸に抱いて泣き出してしまう。


「ありがとう、ござい、ます」


 そんな二人を優しく見つめるアルトとカエデであった。




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