第2話 文字数の壁。

 はい。小説を書き始めた人がまずぶちあたるのが、文字数の壁です。夏休みの読書感想文の原稿用紙三枚を書き上げられなかった覚えのある人もいるでしょう。反省文を書けといわれても、筆がまったく進まなかった方もいるでしょう。小説というのは、とにかく文字で構成されています。従って、文字数がなければ、小説として認められないという由々しき事態に陥ります。


 文字数の壁は、どうすれば突破できるのでしょうか。正直に申しますと、私も未だに文字数の壁を突破できておりません。一話五千字? 一万字? 読みごたえが無い? 冗談じゃありません。二千字、いや千字も書ければ調子のいいほうです。それもこれも、描写が足りないからです。


 描写。それはそれ一つとってみても、一冊の本が書けるくらいに、難しい問題です。そもそも小説というのは、文字を使って、イメージを相手に伝える方法の一つなわけで、いかに自分の脳内でリアルにイメージしていても、それを描写にまで落とし込めなければ、まったく伝わりません。


 勇者がいて、魔王がいる。なるほど分かりやすい構図です。カクヨムでも、よく見かけられる構成です。しかしそれだけでは小説にはなりません。小説はわざと回りくどく書く必要があるのです。ぶっちゃけて言うと、小説というのは、回りくどい描写のかたまりなのです。あのクリスマスキャロルを要約してみましょう。「拝金主義のスクルージが幽霊に会っていい人になる」どうです。これ以上の要約がありましょうか。


 しかしそれでは作品にならないのです。小説はともかく、回りくどく書く必要があるのです。とにもかくにも、石(描写)を積み上げて城(作品)を作るように、くどくどと、退屈な描写が続きます。時には眠くなり、時には読むのを止めたくなります。しかし最後まで読むと、読者はそれが壮大な城や教会であったことに気付くのです。


 もし最後まで読ませる力量が無かったら? ああ、それは悲劇というものです。あらすじバックや、一話目のブラウザ即バックのために、何人の作者が筆を折ったことでしょうか。数百? 数千? あるいは数万でしょうか。


 というわけで、私の経験上、文字数の壁を乗り越えるためには、ここまで述べたようなくだらない話を積み重ねるしかありません。くだらない話を延々と書けること。それは一つの才能かもしれません。もしあなたが、あふれんばかりの言葉を持っていて、それをキーボードに叩き付け、二千字、いや千字書けたのなら、あなたには立派な小説の才能があることになります。


「誰でも分かる!小説の書き方入門 カクヨム編」では、そのような小説の才能を、実際に形にすることに焦点を当てていこうと思います。

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