第3話 ・白玉様と崇めた日

《⌘悲しい事を考えていたのであろう?ボケ助…?》


白玉は八郎が悲しい顔をしていると必ずイタズラをしてしまうのだ


《⁑おい!白玉〜!…もう許さないぞ!これ!何かわかるか!?》


門塀の上で顔洗いをしながら白玉が鳴いた。


《⌘それが槍くらい猫にもわかりますが?どうかなさいましたか?…にゃぁ?》


八郎には猫の言葉はもちろん理解出来ない。しかし白玉とは不思議と意思を通わせることが出来てしまうと感じていたのであった。


《⁑にゃー!じゃねぇ!俺!し・ぬ・と・こ・ろだーったんだからな!》


《⌘必死に私に話しかける顔がなんとも…楽しそうよの〜》


白玉はイタズラされて喜ぶ〔焦ったである〕八郎を見て実際に笑っていたのだ。


《⁑絶対にわざとだよなぁ?俺にはわかんだぞ!この前も、その前もやったよな白玉!そこから降りてこい!》


目を細めた白玉が鳴く。


《⌘にゃ》


《⁑嫌々、、嫌々。っなんだー!その感情が無い普通の鳴き声は!》


《⌘んにゃー》


その瞬間、八郎は理解したのだ。白玉は普通の猫にすぎないと、強いて言えば、都合が悪かったり→面倒くさかったり←疲れていたりすると普通の猫の様になるのだと。


《⁑そ、そうだよな。白玉は普通の猫だもんな!そんな槍を倒して俺をヤルなんて事…考えるはずないもんな。。俺!大丈夫か?》


八郎はため息をついて白玉から目を背けた。


《⁑さっ。練習、練習っと!》


木刀を手に取り白玉に怒鳴ってしまった自分に反省をした。白玉に謝罪の笑顔を一度見せて、反転した。まさにその瞬間である《ガラガラん》背後で物音がした。


《⌘何度も同じ手を…馬鹿助よの》


《⁑白玉ー!お前.、グハっ!》


八郎は材木の下敷きになり身動きがとれなくなってしまった。


《⁑斬り捨てる!もう許さないぞ!白玉ー!》


材木が顔を隠して視界が無くなる。

辺りは真っ暗である。《カタ、カタ、カタ》辺りは真っ暗でも異音は猫の足音である事は明らかであった。


《⌘少し危なかったぞよ…でもまだまだお子様よの》


実は同じめに3度もあっている八郎は、この後に白玉が何をするか分かっていた。木の引き戸や板の山から飛び出る八郎の手足は白玉にとって最高の遊び道具なのだ。


《⁑分かった!白玉様…俺の負けだ。いやー今日の昼飯の魚は白玉様にあげちゃおうかなー?はっはっはー!美味しいぞ?》


《ザーッザーッガーッ!》この音が爪を研いでる音である事もすぐに理解出来た。


《⁑白玉ちゃーん?》


《⌘にゃ?》


《俺ね、白玉ちゃんの事大好きなんだー!》


この時の八郎は、もはや平常心のかけらも無く、ただ白玉を刺激しない事だけに全集中していたのである。もはや恥じもへったくれもない状態である。


《⁑あー。そうだなー白玉ちゃん?》


《⌘にゃ?》


《⁑俺ね、もっと大人になったらさ白玉ちゃんみたいな人と結婚したいなー。白玉ちゃんはさ、足も長いし尻尾も長いしさ、美白でしょ?もー人間だったら本当に美人だよね!》


《⌘…》


この瞬間の八郎は白玉がなかなか攻撃してこないので助かった気持ちになっていた。しかし…《カラン・ダン!》材木の一部が取れたのか?視界が突然明るくなった。

八郎は目が眩み一瞬何も見えなかったのだが目を細めて逸早く対応しようとしていた。


《八郎!お前いったい!何を考えておるのだ!?頭でもうったのか?一人でぼそぼそと!》


そこには国正の姿があった。


《⁑あ。いや、違う!》


《白玉と結婚するだの?なんなのと言っておったな?》


《⁑親父様!違う!違います!これにはわけ…》


八郎の言葉を抑え込む様に言葉をかぶせる国正。


《白玉が美白だの足が長いだの言っておったな?ん?!言っておらんのか!答えよ!》


どことなく口元が笑って見える国正の顔が気になるが、八郎は自分が変態とか異常者では無い事を理解して欲しかった。


《⁑確かに言いました。でも…で、》


また国正が言葉をかぶせる。


《お前…いつから変態になったのだ?ん?…答えよ!》


答えられるか!っと心では思いながらも八郎は…


《すみません!》


怒涛の勢いの国正を前に、八郎は謝罪しか思いうかばなかったのである。すると国正の顔が急に真剣になった


《そうか、、、お前が変態なのは分かった。》


国正の顔がさらに険しい顔になっていく


《だがな八郎…白玉が槍や木材を倒した時、、お前。何をした?》


《⁑…なんの事でしょう?》


その時の八郎は国正の話してる意味が分からなかったのだ。


《いや…もう良い。風呂に入って飯のしたくをしなさい。白玉に魚をあげるんだよな?》


すると国正は数枚の板を足でどけてくれた。


《待ってるぞ八郎…》


《⁑はい。今行きます。》


八郎は自力で起き上がり真っ先に白玉を探したが、白玉の姿は雰囲気を残して消えていた。衣服の砂や土を叩き落し木材を片付けようと辺りを見回して気がついた。


《なんなんだこれ?…これは…》


そこには槍のみが全て折れて、材木の山から逃げるように散らばっていた光景だった。八郎は右手に違和感を感じ目線を走らせると、握りしめていた木刀も粉々に粉砕されていたのだった。

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