第23話 ルンルン日和編(1)

日曜日、ジュンペイは午前七時四十分にベッドから起き上がる。朝食を済ませ、身仕度をすると、アヤと会う為の準備は整えた。後は家を出て待ち合わせの場所へと向かうのみである。(おっと、このズボンなんだか短かい気がするぞ)彼は慌てて今穿いているズボンを脱ぎ、他のものに穿き変えようとした。



「あれ? きょうのパンツ、なんか気合い入ってるね」



戦士は完全に油断していた。ユキのセリフにジュンペイの心は慌てふためいた。



「そっ、そっかぁ? だってよ、考えてもみろって。万が一、事故にでも巻き込まれてコアラ柄のパンツでも穿いててみ。『アニマルなご主人の奥さん』て言われちゃうんだぜ!」



二十三点の出来の言い訳である。



「大丈夫だよ、そんなに焦らないでよ。帰りは遅くなりそうなの?」



「えっ、そうだな、映画観てくるだけだし、もしかしたら昼も食べて来るかもしれないから……遅くても五時までには帰るよ」



「そっか、分かったよ。楽しんできてね」



ジュンペイはズボンを穿き変えると、玄関に移動し靴を履いた。



「じゃあ、行ってきます」



「行ってらっしゃい、気をつけてね」



挨拶を済ませると、ジュンペイはドアを開き家を出た。扉が閉まり彼の姿が見えなくなると、ユキはため息をつき、寂しそうに微笑んだ。



ジュンペイは約束の時間よりも、三十分近く早く現地に到着した。すると、そこにはすでにアヤの姿があった。慌てた彼は、駆け足で彼女のもとへと向かう。



「ごめん! 待ったよね」



ジュンペイは、顔の前に両手を合わせてごめんなさいのポーズをし、申し訳なさそうに言った。



「ううん、私も今来たところだよ」



アヤは嬉しそうに言った。



「上映時間までまだ時間あるけど……鬼ごっこでもしてる?」



ジュンペイが冗談で言うと、アヤは楽しそうに笑った。



「この人混みの中でやったら、逃げるほうはホントの犯罪者だと思われるよ」



二人はしばらくの間雑談を交わした。上映時間が近づいてきたので館内へと入り、売店で定番の『ポップコーン』と、よく分からないネーミングの『俳優の麦茶』を二人分買い席に座った。



「なんかさ、ポップコーン食べながら映画観るのって、中学生の初めてのデートみたいだね」



アヤはジュンペイの顔を見てハシャギながら言った。  



「もちろん未成年だから塩抜きだよね」



「アルコールじゃないんだから」



ジュンペイが冗談を言うと、アヤはポップコーンを持っていない左の手の平で声をひそめ、笑いながら彼の右肩を軽く叩いた。暗闇の中、ジュンペイは顔を赤くして照れ笑いをした。



映画が始まると、二人は同時に『俳優の麦茶』を口にした。



「……普通の麦茶じゃん。どこが“俳優”なんだよ」



ジュンペイがそう言うと、アヤは何かに気がついたみたいである。



「……これ、もしかして“ストロー”の飲むところがとんがってない?」



アヤが言うと、ジュンペイは画面から出る光りにストローを照らして確認してみる。



「ホントだ、この“ストロー”、飲み口も下のほうも両方ともとんがってる」



「ひょっとすると、このとんがっている所が“俳優”なんじゃない?“ 俳優”のイメージで“男気”があるとか」



「なるほど、たぶんそういうことだよ。てか“麦茶”関係ないじゃん」



二人は分かりづらく、寒い演出に苦笑いした。

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