第五章 グロッケンの記録

 不思議な、感覚だった。

 今の地球ではどこもかしくもBMIで溢れかえり、そこに電子信号(意志)が絶えず流れている。

 その電子の大海原に、揺蕩っている。そんな、不思議な感覚。

 あの、アイコンの通りだ。

 電子の海で、林檎は揺蕩う。

 俺は、林檎だった。

 林檎なのに、俺は『そこ』で果実を受け取った。

 受け取って、思った。

 こんな貧素な果実しか育てられないようなら。

 どうやら『そこ』は、もう随分と寂れてしまったみたいだ、と。

 それでも。

 それでも、俺は、その果実を――

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