電子の海で、林檎は揺蕩う
メグリくくる
序章
人間は、繰り返す生き物である。
それは人間がいかに知識を積み重ねても、気の遠くなるような時間を歩んだとしても変わることはない。変わるのであれば、変えられるのであれば、歴史は繰り返すなどという言葉は生まれてはいない。そして、それは技術の進歩も同じである。
トレードオフ、という言葉がある。何かを求めるには、何かを犠牲にする必要があるということだ。
例えば、PCの応答速度を上げるためにHDDを全てメモリに置き換えようとすれば、莫大な費用が掛かる。速さを取るか、費用を取るか、というトレードオフだ。
例えば、メールを第三者に盗み見られないように暗号化して安全に送り届けたいとなれば、メールの内容に加え本来送る必要のない暗号化を施すためのデータを余分にメールに追加する必要がある。安全性(セキュリティ)を取るか、通信速度を取るか、というトレードオフだ。
こうした、あちらを立てればこちらが立たずといった状況は、技術を進歩させようとする度人間たちの前に幾度となく大きな壁として立ちはだかってきた。
だが人間は、こうしたある種矛盾に満ちた選択を幾度となく乗り越えてきた。そして、これからもそうなるだろう。
人間は、繰り返す生き物である。
だから人間はこれからいくつもの矛盾を乗り越えて、技術(テクノロジー)を進歩させていくだろう。
歴史は繰り返す。
故に、人は繰り返す。
未来と過去。
進化と退化。
であるならば人が進めれる道、技術の進歩、その先にあるのはこの二つしかありえない。
つまり。
科学(ソフトウェア)と魔術(ハードウェア)である。
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