シナリオ 「奥ゆかしきバレンタインデー」

ヒロ・トミー

シナリオ  「奥ゆかしき バレンタインデー」

Scene1

オフィス街

 広告・宣伝・企画 ヒロコンサルティング㈱ の 看板


Scene2

ヒロコンサルティング㈱ 企画室

オフィス内 20数名働いている

OL 朝田 恵(あさだ めぐみ26歳) パソコン入力している

窓近くの丸テーブル

打ち合わせ中の男性社員4名

係長   甲斐 正一(かい まさかず 29歳 リーダー的存在)

営業社員   門田 浩一(かどた こういち 24歳 大柄 前歯2本欠けている)

 〃  A

〃  B


Scene3

朝田 恵   甲斐 正一 を見つめている

突然、恵の目の前に 手のひらが振られる

手のひらを辿っていくと、和田 まり子(わだ まりこ26歳 恵とは高校時代からの友人)


和田 まり子「用事ってなに?」

恵「あっ まり子 明日の夜 家に来てくれない? 」

まり子「あのね 私 今 新しい企画で 頭が一杯なの! 恋愛相談受けてる 暇無いの! 」

恵「お願い! ご馳走するから! ねっ!!」

手を合わせて拝む 恵

まり子「くそーー 痛いとこ 突いてくるなーー 

恵ママの 手料理には 弱いんだよな~~~」

男性社員C「まり子さ~ん 和菓子のマヤ堂さんから 4番電話で~す」

まり子「ハ~イ 」


Scene4

夜 恵の実家 和風一軒家 

玄関 恵と母親 訪ねて来た まり子


母親「いらっしゃい(笑顔) 寒かったでしょう 

いつも恵が お世話になってます」

丁寧に頭を下げる。

まり子「ハイ ちょっと お世話してます(ウィンク)」

恵「さぁ! 一人暮らしの女性用ディナーが お待ちかねよ!」

母親「まぁ おおげさね! 大したもの ありませんけど どうぞ お上がり下さい」

まり子「楽しみに 来ました。 お邪魔しま~~~す」



Scene5

ダイニング 柱時計8時50分を指している

食べ終わった まり子 だらしなく座っている


まり子「う~~~… もう 何も食えね~~… …」

恵「当たり前でしょ! あれだけ食べれば(笑い)」


Scene6

キッチンで洗い物をしている 母親

ダイニングで向き合うまり子と恵


まり子「でっ! 用事って なに?」

まり子にすり寄って

恵「実は… あさって 甲斐さんに渡す チョコケーキの仕上げを頼みたいの」


呆れて ため息をつく まり子を無視して 

冷蔵庫から無地のチョコケーキを 持って来る 恵


まり子「そんなことで このクソ忙しい私を呼び出したの? カンベンしてよ… あんた中学生か?」

恵「お願い! 私 致命的にセンス無いの知ってるでしょ? まり子に断られたら 甲斐さんに チョコケーキ渡せない… 今年ダメだったら もう… おしまい… …」しくしく泣き始める

まり子(小学生だな… …)


仕方なく デコレーションに取りかかるまり子


まり子「今 私が 抱えている企画 知ってるでしょ?チョコの敵 和菓子の売り上げ倍増計画なんだョ! なんで こんな手助けしなきゃなんないの?」


見事な手さばきで デコレーションするまり子

瞳を輝かせて 見つめる 恵


まり子「和菓子って 奥ゆかしいからなー… … アピールに欠けるんだよなーー… …」


手を止めて 独り言を言う まり子

恵の視線を感じて 仕上げにかかる まり子


まり子「まぁ こんなとこで いいか!」


素晴らしい 出来上がりに 目を丸くする 恵


恵「すご~~~い まり子 ありがとう!」

まり子「ねぇ この上に 大福餅 一つ乗せちゃ ダメ?」

恵「あっ もう いいです いいです!本当にありがとう!! 一生恩にきるヮ(笑い)」

まり子「そのセリフ 何度聞いたことやら… 

 恵ママの手料理に免じて サービスしとくヮ(笑い)」

恵「企画書 頑張ってね!」

まり子「お前もな!」


Scene7

翌朝 

企画室 誰もいないオフィス

一番に出社した 恵 甲斐の机にチョコケーキを運ぼうとする


突然ドアが開き


男性社員C「おはようございま~す」


慌てて 自分の机に戻り 一番下の引き出しに チョコケーキを隠す 恵


Scene8

壁の時計AM 9時

慌ただしい企画室

恵 課長に呼ばれる


Scene9

壁の時計AM10時

恵 自分の机に戻る


恵「ん? 甘い匂い… … まさか!」


机の下 足元ヒーターが作動している

慌てて 一番下の引き出しを開ける

包装紙からチョコが滲み出ている

恐る恐る 開けてみると ドロドロに溶けたチョコケーキ


恵「あ・ア・あ・アンビリバボー・・・」


Scene10

夜景のオフィス街

恵とまり子 企画室に二人だけ

パソコンで仕事中の まり子

隣の机で号泣する 恵


恵「ヒーーーーッーーーーーー・・・」

まり子(お前は幼稚園児か… …)

恵「私みたいな ドジは死ぬしかない ヒーーーーッ・・・」

まり子(それも失敗するね… たぶん…)


壁の時計PM 8時45分


壁のカレンダーを見る まり子


まり子「… … 今年は 閏年か… … 」


考え込む まり子


アイディアが閃き 壁のカレンダーにダッシュする まり子


驚く 恵。

カレンダーの2月と3月を何度も見る まり子。


派手なガッツポーズをする まり子


茫然とする 恵


恵「… どうしたの… だいじょうぶ… ?」

まり子「お前に 言われたくない!」


振り返り、不気味に笑う まり子


まり子「ふっ・ふっ・ふっ・ふっ・ふっ・・・・」


後退りする 恵


まり子「 これだっ!! 」

恵「何? 何? どうしたのーー?? 怖いーーー…」


恐怖でまた 泣きそうな 恵


まり子「お前のような ドジな女の 救済策… で・も・ある・・」


机に戻り、狂ったように キーを打ち、マウスを動かす まり子

恐怖と、不安で、また シクシク泣き出す 恵


まり子「さっさと帰れーーー! 保育園児! 邪魔だーーー!!」


Scene11

翌朝 

企画室 

徹夜で企画書を作成して、プリンターの前に座っている まり子

ねじり鉢巻き 目は真っ赤 鬼気迫る形相

遠巻きに眺める 社員数名

ピーーー  プリント終了の 信号音


まり子「ケッ・ケッ・ケッ・ケッ・ケッ・ケッ・・・・・・・」


ガバッ と 立ち上がる まり子

オオーーーーーーッ っと 飛び退く 社員数名


まり子「出来た!!!」


絶叫して 完成したパンフレットを頭上高く差し上げる まり子

ヒェーーーーーーーっと 逃げ惑う 社員数名

窓近くの丸テーブル

打ち合わせ中の男性社員4名 目指して ダッシュする まり子


まり子「和菓子の企画書 出来たヮ!」


企画書を覗き込む 社員A


社員A「おく・ゆ・か・し・き・バレンタインデー…??」


自信満々に説明を始める まり子


まり子「2月14日に何らかの事情で チョコを渡せなかった ドジな いや 奥ゆかしき女性は、2月29日に 愛しき男性に、和菓子を プレゼントする。 もらった男性は、その日か、翌日に 和菓子を返せば、オメデトさんって わけ! つまり! “奥ゆかしき バレンタインデー” 皆と 同じ日に、同じチョコを大騒ぎで渡したくない 少し、日をおいて、静かになった頃、そっと渡したい 和菓子の しとやかさ を届けたい… そんな 女性の心情と和菓子を合体させた 企画!! いいでしょ? どう??」


男性社員4名に 挑みかかる まり子


社員A「どうかなぁ… 無理やりって 感じがするなぁ… 」


形相が変わり、社員Aに近づいて行く まり子

門田が突然 立ち上がる

驚いて見上げる 甲斐


門田「僕は すごく いいと 思います!」


声の大きさと 迫力に驚いて立ち止まる まり子


門田「今でも 渡したいけど 勇気が足りなくて渡せない女性だって いると 思います。 もう一回 チャンスがあるって 優しくて 和菓子と 合うんじゃないでしょうか」

まり子「あんた 顔に似合わず いいこと言うじゃない 見直したヮ」

門田「ど・どうも… 」


顔を真っ赤にして笑う 門田。前歯2本無い


社員B「閏年しか 出来ないの?」


激怒する まり子を 手で制して。


甲斐「いや 普段の年は 2月28日でいいだろう。ちょうど 2月14日と3月14日の 折り返し点ってことで」


そう そう と頷く まり子


門田「閏年の2月29日にプレゼントしたら それは結婚のプロポーズって 意味にしたら どうでしょうか?」


オ・オーーーッ と 小さく 感嘆の声を上げる 3人(甲斐、A、B)


まり子(門田のどこから こんなロマンチックなことが…)


甲斐「面白いね。既にあるバレンタインデーを逆手に取るユーモアも感じる。

どうやってPRして行くか課題はあるけど

クライアントにプレゼンする 価値はあると思うよ」


力強く頷く 門田

ホッとしたのか だらしなく座り、眠り込んでいる まり子


甲斐「まりちゃん 徹夜したんだろ? もう 帰って休んだら?」

まり子「えっ?」


飛び起きて、机に戻り、カバンに企画書を詰め始める まり子

あっ! と気づいて 恵の机を見る まり子


まり子「あれっ! 恵は?」

女性社員「今日は お休みです」

まり子「根性無しめ… まぁいい もうじき 救ってやる!」


カバンを抱えて 出かけようとする まり子


門田「大丈夫ですか?」

甲斐「まりちゃん!」


立ち止まる まり子


甲斐「鉢巻きは いらないと思うよ」

まり子「あっ ど・も… 」


バタンと ドアの音

心配そうにドアを見つめたままの 門田


甲斐「オイ! 門田 いつになく 熱心だったな(笑顔)」

門田「えっ? 何がですか??」

社員A「僕は! 僕だけは まり子さんの味方です!!って」(3人笑い)

門田「何のことですか…? 本当に いい企画だなと思ったから… …」

社員B「いや 愛 を感じたね… 

まり子さん 僕は あなたのことが……です!! って 聞こえたなぁーー…」(3人笑い)

門田「やめて 下さいョ… そんなこと… もし… まり子さんに聞こえたら… 僕… 殺されますョ…」

甲斐「いいじゃないか 好きなら好きで(笑顔)  まりちゃん 口は悪いけど、思いやりのある いい 女だぞーー」

社員A「今 彼氏いないみたいだし、告っちゃえよ(笑い)」

門田「カンベンしてくださョ・・・ ・・・」


大きな体が 小さくなる 門田


Scene12

2月29日 

夜景のオフィス街

壁の時計PM 9時10分

企画室 

まり子一人 丸テーブルで仕事をしている


◎~~~~~ スマホが鳴る


まり子「(… 保育園児か…) はい… 」

恵(まり子 ありがとう 今日 彼に マヤ堂さんの 渡したの そしたら ちゃんとイチゴ大福を返してくれたのョ。 私 泣いちゃったの・・・ それでね・・・ )

まり子「恵 とにかく おめでとう よかったネ。でも 今 ノロケ話に付き合ってる暇無いの ワルイけど 切るよ」


スマホを置き、仕事を始める まり子


◎・・・・・スマホが鳴る(メール) 開く ディスプレイを見る


恵<まり子 ありがとう 机の中 おすそわけです。食べて 頑張ってネ>


机に戻り、引き出しを開ける

マヤ堂の包装紙。大福3個


まり子「ア・リ・ガ・ト 」


机に置いて、丸テーブルに戻る

バタン ドアの開く音。


門田「只今 帰りましたーーー」


疲れ切った顔で 門田 帰社


まり子「びっくりするだろ!ったく!」

門田「みんな 帰っちゃったんですね… 

まり子さん いつも大変ですね… おっ!」


まり子の机 大福を発見した 門田


門田「これ いただいて いいですか?」

すでに 大福をつかんでいる

まり子「門田君… 何してもいいから 静かにしてくれない?」

門田「すいません… 腹ペコペコで… … …」


大きな口で 頬張る 門田

背中を向けたまま 冷たい口調で


まり子「それと 門田君 あんた 前歯無いんだから ノドに詰まらせて 私の‼︎ 机の上で‼︎ 死ぬのだけは やめてね…」

甲斐「モグ モグ・・・ でも まり子さん 

企画上手く行って よかったですね!」

まり子「まだ 上手く行ったというワケでもないヮ… 勝負は これから!…」


門田 大福を食べながら マヤ堂の袋を見る

“奥ゆかしきバレンタインデー”の企画書が目に入る


机のカレンダー


門田「今日は 2月29日か… 」


食べかけの 大福を見る。

仕事中の まり子の後姿を見る・・・・


門田(お・く・ゆ・か・し・き・バレンタイ

ン・・・・・ )


弾かれたように 部屋を飛び出す 門田


まり子 驚いて振り向く

まり子「何だ あいつ??・・・」


Scene13

コンコン ノックの音

振り返る まり子


門田(失礼します…)


ドアを開け、部屋に入って来る 門田


まり子「びっくりしたーーー・・・」

門田「エッ? 驚かせないようにと思って ノックしたんですけど…」

まり子「よけい びびる でしょ!!ったく 

どういう 頭の構造してんの?」 

門田「すいません… コーヒー 買って来ました… 」


礼儀正しく コンビニコーヒーを テーブルに置く


まり子「サンキュウ~ (笑顔) 気がきくねー ついでに とっとと 帰ってくれると ありがたいんだけどなーー」


門田 大きく 深呼吸をする


門田「あの… … これ… 受け取って ください… … 」


意を決して コンビニの袋を差し出す 門田

まり子 袋をのぞく

みたらし団子が 入っている


まり子「あんた まさか これ 私に食えっていうんじゃないでしょうね…」


下から 門田を睨む まり子

頭を下げている 門田


門田「これだって 和菓子ですから… 受け取って下さい!!」


深々と 頭を下げる 門田


まり子「はぁっ?… …? ……???」


自分の机の マヤ堂の包装紙と

深々と 頭を下げている 門田を見る

コンビニのみたらし団子と

頭を下げたままの 門田を見る


ハッ!と 気づいて 目をまん丸くして 

門田を見る


まり子「まさか… あんた… 何… 勘違いしてるの… ちょっと… 待ってよ… あんたが… 勝手に食べたんでしょ… 止めてよ… … 」


門田 頭を上げる

しっかり 目をつぶって


門田「僕は!! 僕は!! まり子さんが… 好きです!!!」


門田 真っ赤な顔 目をつぶったまま 強く拳を握りしめている


まり子 真っ赤な顔 下を向いてしまう




沈黙の まり子 門田

まり子 下を向いたまま 震える声で


まり子「だいたい・・・ あんた・・・ 年下でしょ・・・ 」

門田「下って言っても 2歳と2か月です!」

まり子「 ⁉︎ …… 」

門田「 あの…… これ 今度の日曜日の 試合のチケットです!  観に来てください!!!」


深々と頭を下げる 門田

震えて下を向いたまま チケットを渡される まり子


門田「それじゃあ お邪魔しました 失礼します!」


荷物をまとめ 部屋を出る 門田

バタン ドアの閉まる音


まり子「ハッ! 」

我に返る まり子


まり子「ちょっ! ちょっと 待ちなさいョ!!」


チケットを握り ドアの方へ走る まり子



Scene14

オフィスの廊下

階段にさしかかった 門田

追いかける まり子


まり子「コラ!! 待て ゴリラ!! 

この忙しい時に 行けるワケないだろがーーー!!!!(声が響く)」


どんどん 階段を下りていく 門田


まり子「オーーーイ! 寒いだろがーーー!!

ばかーーーーーーーー!!!!(声が響く)」

門田「暖かくして 来てくださいねーーーー(声が響く)」


人なつこい笑顔で手を振る 門田 前歯2本無い

口が開いたままの まり子




Scene15

球技場・グラウンド

スクラムを組んでいる ラガーメン

スクラムを押す 必死の形相 門田


バックスの選手 ボールをキックする

空高く 飛んで行くボール 


Scene16

ボールを見上げる マフラー 防寒コート姿の まり子

微笑みながら 試合を見ている 


懸命にボールを追う 門田



Scene17

まり子の背中越しに グラウンド全景




E N D

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