第59話 最高のプレゼント①


 正拳突き100発の刑を喰らった後、何とかシャバに戻ってくることができた。どうやら先の刑で気絶させられている間に、グリスもジャシャーンも俺より早く出所したらしい。

 ふっ……太陽がまぶしいぜ。


「何を黄昏てるんですかジーク先生。患者さん待ってるんで、早く行きましょう」


 げっ、オータム……よくこいつ普通に接してくるな……あれだけ殴っといて。まあいつものことっちゃあいつものことか。


「なあ、オータムには今回の件世話になったな」


「なんですか気持ちの悪い」


 ……言って損した。


「じゃあ、何か下さい。感謝してるなら」


 そう言ってオータムは手を差し出した。


「何かって何をだよ?」


「そこを考えるのがあなたの役目でしょう? 私が何を欲しいと思ってるか考えて私が欲しいものを下さい」


 何という、我儘な女なんだ。


「わかったよ、とびっきり凄いプレゼント、買ってやるから。期待しておけ」


「約束ですよ」


 オータムは嬉しそうに小指を出してきた。

 そうだな、たまにはプレゼントも、いいのかもしれないな。


                 ・・・


 そう思ったのは、最初の1日だけだった。プレゼントって、何をあげたらいいんだ。お金持ちのダメなところは大抵、何でも買えてしまう。苦も無く、労も無く。そんなプレゼントを贈ったところで、オータムが喜ぶとはどうしても思えなかった。でも、今回はどうしても喜んでほしい。


 診療所の治療中に、それとなく助手の女の子に聞いてみる。


「ねえ、アリエは何か貰って嬉しいものとか、ある?」


「ええっ、嬉しいものですか? 何でしょう……指輪とかですかね」


「指輪かぁ。どんなのがいい? 俺なら幾らでもいいの買ってやれるけど」


「あっ、でもジーク先生は止めた方がいいですね。普通はみんな苦労してお金ためて買うんです。金持ちが買う指輪なんて、好きな人からもらっても全然嬉しくないと思いますよ」


「じゃあ、何がいいんだ?」


「それは自分で考えてください、オータムさんにあげるんですよね? 頑張って下さいね」


 そう言って励まされてしまった。


                 ・・・


「なあ、サリー。君はプレゼントされて嬉しいものって、ある?」


「うーん……基本的には現物がいいかな。換金しやすいものとか」


 お前に聞いた俺がバカだったよ。


「嘘! 嘘ですよ怒んないで下さいよー」


 言っておくが、この前のこと、まだ許してないからな。


「ほらっ、やっぱり行動とかの方がいいんじゃないですか? 熱い抱擁とか、熱烈な告白とか」


「……キザじゃない?」


「キザだからいいんじゃないですか! 普段やりそうもないことを恥ずかしがってやるから意味があるんですよ。あっ、でも本番で照れながらやったら雰囲気台無しですからね。本番はしっかり恰好よく決めないと」


 意外にも、サリーから、まともなアドバイスを貰った。




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