第56話 嵐の面会

「はぁ……」


 鉄格子を見ながら思わずため息が漏れる。


「はぁじゃねぇよ貴様ー! 何で裁判やって量刑増えて帰ってくるんだー! お前に少しでもマシな証人がいると思った俺がバカだったー」


 グリスの叫び声が聞こえる。


「黙れ! お前の弟子が見境なく暴走するからこんなことになってんだろうが! 弟子の教育は師匠の務めだ! 量刑増えてしかるべきだろが!」


 むかついたので反論してやった。


「何だと貴様ー! 絶対に殺す、絶対に殺す―!」


 はいはい……


「おい、ジーク面会だ」


 また面会か!?


                ・・・




「ジークてめー貴様クソ野郎! 何でろくな証人がいないんだよお前は―!」


 水晶玉越しにシエッタ先生の怒号が響く。


「連れて来たのあんたでしょうが! 何とか口裏合わせることぐらいしろよクソ弁護人が」


 むかついたので反論した。


「口裏合わせてたんだよ直前まで! 直前になって裏切りやがってあの女ー。ろくな奴がいない。お前の周りにはろくな奴がいない」


「お願いします! あんた奇跡の弁護士って呼ばれてんでしょ!? こんな逆境ぐらい何とかしてください」


「できるか―! 今のところ100対0で負けてんだよ、どこに勝算落ちてんだよ!? 0は幾つかけても0なんだよー! はぁ……はぁ……とにかく、今からオータムに繋ぐから、さっさと仲直りしろよ!じゃなきゃ俺が貴様を訴えるー」


 そう言い残して水晶玉の映像はこと切れた。

 続いて出てきたのは、オータムだった。


「おい、テメー……やってくれたなぁ!」


 逆にオータムの方がキレてきた。

 ――ええっ! 俺が怒るところじゃ……


「お、おいお前何を怒って――」


「誰が容姿だけだって! 性格いいとこ無し? 言葉づかい最悪? 何より胸と教養が無い? あんた公衆の面前でよくもそこまで女に恥かかせたわねー」


「お、お前あの時現場にいて-―」


「水晶玉で見てたのよ! お前のことが大嫌いだ? 上等じゃない、死ね!」


 ぶちっ……映像はこと切れた。

 なんて短気な女なんだ……いや、もはや絶対に女ではない。

 終わった……色々なことが、終わってしまった。

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