第4話 たくさんのお月さま

 先ほどまでの喧噪が、嘘のように静まり返ったバーを貫く長いカウンターの端に、十和子は席を移した。カウンターは白木のように磨き込まれていて、縁を彩る金色の金具も、バー全体も明るく輝いていたが、真珠のような落ち着いた輝きだった。


 「何かお代わりをお持ちいたしましょうか」と若いバーテンダーが声をかけながら、メニューを差し出した。十和子はゆるゆるとページをめくりながら、いつもなら選ばないハーブ系リキュールを使ったカクテルを選んだ。フルート型のシャンパングラスに薄黄色のカクテルが運ばれて来た。シェクされたらしく全体が淡く濁っている。カウンターの光を乱反射してグラスの中で発光しているかのようだ。
 


(本当に名前どおり満月やね…)

 十和子は一口飲み干すと、大きなスモークグラスの窓から外を見た。

生憎、外は細かい雨らしい。せっかく月に因んだ名前のカクテルが並んでいるのにと思った十和子は、若いバーテンダーに声をかけた。

 「このカクテル、確かハーブのカクテル…」

 「はい、エルダーフラワーというハーブとフレッシュグレープフルーツを使っております。女性の方には人気です」とバーテンダーは少し気取ったような、照れたような顔つきで答えた。

 静かになった店内を改めて見回した十和子は「さっきまではうるさかったけん。迷惑やったでしょ」と苦笑いをしてみせた。

 「いえ、そんなことは。女性のグループの方は結構多いですし」とバーテンダーが受ける。

 (女はおしゃべり好きやけん、にしても…)と十和子は最前までの自分たちを思い出していた。



 「十和子さん、…って、やれんよぉ」

 「ほうよ。十和子さん、Fさんに優しすぎよ」

 そう言う二人の声に、残りの一人も大きく頷いた。


 三人が文句を言っているのは、この四月から配属された社員の事である。十和子の務める部署は対外的には「総務係」と言われているが、社内では「総じてうるさ係」と陰口をささやかれる部署である。社内のあらゆる文書が定められた形式に則っているかどうかをチェックする役目を担っているせいだ。関係省庁の文書形式や注意点がコロコロ変わるものだから、昨年通りに作成したのに!と部署に怒鳴り込んでくる社員がいたりと、結構気を使う部署である。加えて関係省庁の検査のための書類の準備や、法令・行政指導の変更があれば毎日残業。逆に定時退社まで漫然と書類整理をしている日もある。仕事量の変動は半端ではない。結構ストレスのたまる部署でもある。この部署に4月から異動してきた藤村は、陰ではFさんと呼ばれている。藤村という姓とFランクをかけたあだ名である。仕事が出来ない訳ではない。規程を暗記しているのではと思うぐらい、精通している。ただ、全てを規程の文言通りに遂行してしまうのだ。外国人への謝金支払いで「口座名義人の振り仮名がついていません」といって、書類を突き返してしまった事がある。たしかに書類上は口座名義人の名前に振り仮名が必要なのだが、事前に「本人が口座名義はアルファベットでしか作成していないと言っている」とその部署の担当者から連絡が来ていた。ところが彼女は振込先の銀行に振り仮名が必要かどうか確認をとり「外国の方でもカタカナで振り仮名を作成して登録されている場合が有りますと、銀行の方から言われました」といって書類を突き返してしまったのだ。担当者から再度「御本人の○○氏がアルファベットでしかバンクアカウント名を作成していないと断言しておりますので、一度振り仮名もアルファベットで入力していただけませんでしょうか」というバカ丁寧なメールが来た。翌日振込の確認に総務係にやって来た当人に藤村は「教えていただいた通りに入力しましたら、送金できました。有り難うございました。」と真面目な顔でお礼を言って退けたのである。

 その後、当該部署の長から電話がかかって来たのは言うまでもない。

 一事が万事この調子なので、十和子は藤村に振り当てる仕事は相手側がなるだけ「意をくんでくれる」部署にしている。それが他の係員に取っては不満の種になっている事も薄々知っていた。


 ただそれだけではないらしい。先刻までシート席で三人が述べ立てたのは、藤村がそれ以上に迷惑の種になっている事だった。キツい子に言わせれば「Fさんは歩く規程書!規程書通りにしてれば問題ないって思いこんどるけん、何言っても右から左よ」らしい。規程は確かに守らなくてはいけない。が、そこはそれ、何事にも融通というものがある。規程にはなくとも、今までなんとなく通ってきたものが、藤村には通らない。申請したきた方は規程通りだから反論できない。が、反論ができない不満は得てしてもめ事の種になる。その種が藤村の所で芽吹けばいいのだが、よりによって他の係員の所で花を咲かしてしまう…らしい。

 この類いの愚痴や不満、はては怨嗟とさえ言える言葉を十和子はこの2時間程、頷きながら聞き続けたのだった。人間というものは人の悪口程楽しくて仕方がないものなのか、三人の声が大きくなるたびに十和子は宥めるのに必死だった。そして最後に「とにかく、なんとかしてくれんと」と言い残して、三人は店を後にしたのだった。


 十和子はそのまま帰る気になれずカウンターに席をうつして、杯を重ねたのである。


 カウンターからぐるりと店内を見回した十和子はトロフィーに目を留めた。何枚も重ねられたリボンに同じ名前が書いてある。

 「あのトロフィーって…」

 「あ、店長のです。バーテンダーの技能大会のものでして」と答えた声が誇らしそうだった。

 「バーテンダーの技能大会って…?創作カクテルの大会みたいなん?」

 「僕らみたいな若手は創作カクテルだけですけど、店長が出るシニア部門には規定部門が有ります。」

 「カクテルの規定ってどんなん?素人には見当もつかんけん、教えて」

 「フルーツカットと規定カクテルです。フルーツの方は使える果物も量も決まっていて、その中でどれだけ綺麗な盛りつけやカッティングが出来るかを競います。規定カクテルって言うのは…」とそこで、うまく説明が出来なくなったのかバーテンダーは、ちょっと上を向いていたかと思うと、メニューブックを開けた。

 「ここにオールドパルってカクテルがありますけど、これ、今年の規定カクテルでした。3つのお酒を同量入れて出来上がるカクテルなんです。ただ競技大会やと、5人分をいっぺんに、それもメジャーを使わずに作らなあかんので」

 「へぇ〜規定やのに目分量っていうか見当で測るん?変わってるっていうたら変わってるけど、見当で同量やて相当難しかろぉ」という十和子の言葉に

 「…実は自分、一番苦手なんです。来年からシニアにチャレンジするんですけど」とバーテンダーは眩しそうにトロフィーを見上げた。

 「見当ゆうて、実際には手の感覚とかで覚えるん」

 「そうなんですけど…競技に使うんが真っさらな瓶ですし…なんか、こう手の感覚がつかんっていうか…」と暫く自分の手を見ていた。

 そんな若いバーテンダーに「そんな凄いマスターがおるけん、オリジナルカクテルが多いんやね。月に因んだネーミングのシリーズやって、ほんまに素敵やわ」と十和子は改めて声をかけた。

 「ありがとうございます。実はマスターが僕ら若いもんに、同んなじ所で満足したらあかん、お月様みたいに沢山の顔をもたなって。僕らが考えて作ったやつでも良えのが出来たら店に出してくれるんです」と言ったかと思うと「あ、すいません。お客さんに内輪の話ばかりで」と謝った。

 「そんなん、面白い話やったよ。頑張って今度は自分の名前をトロフィーにつけなね」と十和子が続けた所に、3〜4人の客が入って来た。十和子はそれを潮に勘定を済ませて、外に出た。

降り続いていた雨はやんでいたが、相変わらずの曇天。月も星も姿を見せていなかった。「せっかくお月様のカクテル飲んだのに…」と十和子はつぶやきながら、家路を急いだ。





 「とう子ちゃん、とう子ちゃん」夢の中でそう呼ばれた気がして、十和子は目が覚めた。(いったい誰の声だろう?大人の声なのに…)。十和子はいぶかった。両親が好きな十和田湖にちなんでつけた名前を、わざに「とお〜ちゃん」とか「とう子ちゃん」と呼ぶ大人に心当たりはなかった。が、その声は奇妙に懐かしく暖かだった。目が覚めたものの、起き出す気にもなれずぼんやりとしていると細かな雨音がしていた。
 


 (今日も雨…有休やけど、予定もないしええけど。よう降るわ。そうそう、今頃の長雨を確か…)頭の十和子の声に被さるように「とう子ちゃん、卯の花腐しってゆうんよ」という声がひびいた。


 「あ、佐紀姉ちゃん」。十和子は声の主の事を思い出した。十和子がまだ小学校の低学年の頃、祖母につれられて曾祖母の家に何度か行った事がある。その家で当時、短大かなにかに通っていた遠い親戚の人のことを、十和子は何時となしに「佐紀姉ちゃん」と呼んでいた。佐紀姉ちゃんはあまり人前に出てこなかったし、特に子ども好きという事もなかった。けれど、佐紀姉ちゃんの部屋に行くとたくさん本があって、幾らでも読ませてもらえたから、曾祖母の家にいくと挨拶もそこそこに、二階の佐紀姉ちゃんの部屋にあがるのが癖になっていた。佐紀姉ちゃんは十和子の事を「とう子ちゃん」と呼んでいた。名前を間違えられると「と、わ、こ」と言い返すのが常だったのに、佐紀姉ちゃんにそう呼ばれるのを十和子は嫌いではなかった。


 「そういえば『たくさんのお月さま』が佐紀姉ちゃんの部屋にあったけん…それで佐紀姉ちゃんの事…」。

 「あぁそうや、佐紀姉ちゃんとの最後の宿題忘れたままになって…」と十和子は懐かしく思い出した。
 

 佐紀姉ちゃんの所にあった『たくさんのお月さま』は色んな話が入っていた本だったが、十和子のお気に入りは表題と同じ「たくさんのお月さま」。病気のお姫さまがお月様が欲しいっとねだる話で、学者も、偉い人も、魔術師も、誰もお月様なんてとても取って来れません、作れませんと言う。そのなかでフールが独りお姫様に「お姫様の欲しいお月様はどれくらいの大きさで、どうすれば取ってくる事が出来るのでございましょう」と聞きにいく話だった。十和子は佐紀姉ちゃんの部屋で、繰り返しその話を読み返していた。

 「とう子ちゃん、そのぁなし、好き」

 「うん。みんな偉いのにバタバタして、フールって変な人だけ賢いけん」「

 ゥール、道化師ね」

 「けどちょっと哀しそうやの。この挿絵」

 「ゥール?」

 「お姫さんも」

 「とう子ちゃん、どぉして」

 「…ようわからん、けど…」

 「おしぃてくれる」

 「わかったら?うん、きっと佐紀姉ちゃんだけには教えたげる。けど秘密にして、な、約束」。
 

 そういった十和子の顔をゆっくりと眺めながら、佐紀姉ちゃんはゆっくりと微笑んでくれたのだった。それから間もなく曾祖母がなくなり、十和子が佐紀姉ちゃんの家を訪れる事もなくなり、何時しか約束も忘れてしまっていた。



 一旦思い出して見ると、案外話の筋を良く覚えていたのに十和子自身が驚いた。そしてお姫さまの周りでバタバタしている王様や、エライ学者や、魔術師の長々とした台詞の繰り返しのリズムが好きだったことも思い出した。でも…バタバタ喜劇のはずのお話の中で、お姫さまとフールだけはいつも寂しそうに見えた。最後に、銀のお月さまを胸に飾りながら、空のお月様を見上げているお姫さまと、その横にひざまずいて月を見ているフールの姿が、十和子の脳裏に甦った。

 「可愛がってはくれるけど、話は聞いてくれん…」。

 十和子は誰に向かってつぶやくともなくつぶやいた。

 そしてふと自分も周りの社員も、藤村さんに「どうして規程通りにしかせんの?」と尋ねた事がなかったのを思い出した。



 十和子の職場は4月5月が忙しいので、逆に6月半ばをすぎると有休願が出てくる。有休願を調整して部署内の業務が滞らないようにするのが係長、つまり十和子の役割である。十和子は藤村自身に希望を聞いた後、それとなくその日程を係員に匂わせておいた。十和子の狙い通り、十和子と藤村と二人きりで仕事を回す日を2日間確保できた。十和子はこの2日間に藤村自身が何を思っているのか、聞き出すつもりでいた。

 ところが事は思い通りには運ばなかった。藤村が無口だとか、人を避けるというのではない。昼ご飯に誘うと嬉しそうに一緒についてくるし、話にも乗ってくる。ただ、どうも話が続かない時がある。

 趣味を聞いた時に藤村が「プラモデル作りです」と答えたのに、十和子が一瞬ポカンとした顔をしてしまった。ところがそんな十和子に気がつかないのか、藤村は淡々と「キチンと手順を踏んで、『バリ』って部品の端っこの余分のところを綺麗にヤスリをかけて…時間かけてもピッタリ合うまで工夫して、塗装も本物通りの塗装をして完成した時は本当に嬉しいけん。この頃部品から作ろうっていう人達とも知りおうたんで、余計面白いです」と続けた。

 (どうしよう。女にしては珍しいとは言われんやろ…何作ってるやろ)と話を聞きながら十和子がどう返事を返していいのか、戸惑っているうちに会話が途切れてしまう。かといって藤村は会話が切れたことに気を悪くしたり、戸惑った様子もない。

 こんな調子で十和子は一人で出鼻をくじかれる思いをしていた。最初は搦め手からと思っていた十和子だったが、これはズバリと聞いたほうがいいなと思い出した。それで2日目の昼に

 「藤村さん。いつも規程通りに書類を処理しているけれど、何か理由でもあるん?」と切り出した。

 藤村は心底驚いた顔をした。

 「規程通りに処理したらいかんのですか?」

 「そんなん言うとらんのよ。ただちょっと手心というか、融通というか…」とかえって十和子の方が受け手に回ってしまう。

 「融通って…どのくらいの融通ですか」と藤村が真正直な顔で答える。(それが決まってないから融通っていうやけん)と十和子は思いつつ

 「藤村さんは、規程通りの処理の方がやりやすいん」と質問を変えた。

 藤村はその質問にも不思議な顔をして「規程通りの処理がやりやすいとか難しいとか、考えたことないです。規程は規程やから、その通りにするもんと思ってますけん」と答えた。その答え方は、裏も表もなく、藤村にとってはそれが自然なことなのだと十和子にもよくわかる答え方だった。

 二人で仕事を回す最後の日、仕事が立て込んで残業をする羽目になってしまった。それも終わろうかという時、藤村がすっと十和子の前に立った。

 「係長。ここの書式、違ってると思います」藤村が差し出した書類は関係省庁に出さなければならない書類だった。十和子が慌てて確認すると小さなミスだが、全書類に渡って同じミスがある。しかも一括変換ができそうにない。内心舌打ちしながら、十和子は「明日朝、申し送りしとくけん、藤村さんはもう帰ってええよ」といった。ところが藤村は「これぐらい簡単ですから、やってから帰ります」という。時間はもう9時半を回っていた。

 「明日から有給やろ。かまんけん」と十和子は重ねたが、藤村は「かえって気持ち悪いですから」というと自分の席に戻っていった。十和子が他の書類の再確認を終えた頃、藤村がやってくると「係長。全て訂正しました。ですけど、見落としがあるかもしれません。明日申し送りお願いします。失礼していいですか」と言った。見ると先ほどの40ページもあろうかという書類を藤村が差し出している。

 「藤村さん。これ全部…30分もかからんでできよるん?」

 「こういうの、得意です」という藤村の顔はにっこりと笑っていた。

 次の日の朝一番に「藤村さん、今日から有休やけど、引き継ぎ事項大丈夫?」と声をかけた。引き継ぎの書類を見ていた係員が「バッチリ。優先順に色分けできてます」とクスッと笑いながら答えた。昼休み前に申し送り書類を見ていた係員に「訂正事項はなかった?」と尋ねると「はい。バッチリ。さすが〜です」と答えが返ってきた。昼休み、古株の鈴木が十和子を食事に誘った。藤村のことを聞こうというのだと察した十和子は気が重たくなった。

 「有休の間、二人でお仕事お疲れさまでした」と口で言いつつ、彼女の顔は(大変なのが分かったでしょう)と言わんばかりだった。

 十和子は「う〜〜ん、まぁ〜」と口を濁した。それから鈴木はなにやら旅先でのことやら、藤村の普段の様子やら、あれこれとなく喋っていた気がする。十和子は聞くともなく聞きながら(藤村さんのあの取りつく島のない正直さもええかも)などと思って、藤村と二人で仕事をしていた2日間が妙に懐かしく感じた。

 申し送りを済ませ、明日からの有休に備えて引き継ぎ事項をまとめていた十和子は、昨晩の藤村の笑顔が忘れられなかった。


 その日、一旦帰宅した十和子は、会社に私物を忘れたのに気づいて慌てて戻る羽目になった。守衛さんに頭を下げて入れてもらった8時前の職場にはさすがに誰もいない。やっと探し当てた忘れ物をバックにしまった十和子は、ふと藤村の席を見てみたくなった。さすがに整理整頓が行き届いている。感心しながら眺めていると、書類の分類と並べ方にルールがあるらしい。彼女が休みの間、他の係員が必要となる書類がわかりやすく分類されて手前に置かれているのはもちろんだが、それ以外の書類も一定のルールに沿って並べられているらしい。今まで藤村のことを、決まったルールにしか従えないと思ってきた十和子にとって、その机は藤村の別の顔を表しているように見えた。


 「マスター、バーテンダーの競技大会の規定科目、目分量で決まったレシピのお酒を5人分作るって」

 「はい、そうですが…何か」。

 十和子は行きつけにしているバーのカウンターにいた。仲間に誘われたバーと同じく長いカウンターだが、あちらが満月とすればこちらは新月の趣である。バーカウンターの向こうの水槽の灯りがぼんやりとカウンターを照らしていた。

 「ほやけん、バーテンダーの人は目分量?練習するんやね」

 「あ、はい。目分量といいますか、私どもではハンドメジャーなどと言っておりますが、訓練しております」

 「マスターも私のお酒はハンドメジャー?やけん、全部ハンドメジャーで作るん」

 「いえ、ショートカクテルの場合はメジャーを使います。この頃は全てメジャーを使われるお店もございます」

 「ふぅ〜ん…」。

 十和子はおもむろに両手で頬をついた。

 「どうかなさいましたか」とマスターが聞く。

 「ハンドメジャーで作れるのに、メジャー使うんは、やっぱりレシピ通りに作るからかなって」

 「いえ、必ずしもレシピ通りに作っているわけでは…」

 「え、メジャー使こてて?」

 「いえ。別に量をごまかすとかとは違うわけでして。同じメーカーの同じお酒でも味が変わることもございますし、お客様の好みがわかってきますと、少し甘めにするとか逆に甘さを控えるとか、レシピを尊重しながら、時と場合に合わせるといいますか、そういう時の目安としてメジャーが役立つ時も多いものですから。」

 「けど、結局融通きかしてる。ほやのにレシピ通りとかメジャーとかおかしかろ」。

 今日の十和子はしつこかった。


 と、マスターはちょっと居住まいを正してこう言った。

 「失礼になると思いますが、規定、基本を守るのは極めて大切なことだと思っております。」

「私どもも、ハンドメジャーで5ミリをきちんと測ることができるようになるのが基本です。こういう基本ができていないと、お客様の好みに合わせるといっても、いい加減なものしかできません。規定とか基準とかいろいろ難しいとか、面倒だとか言う若い人もいますが、基本は基本できっちり守っていかないと、何事もぐずぐずになってしまいます。基準、私どもの世界では基本のレシピになるかと思いますが、これがきっちりと分かっている。その上で塩梅をきかすとか、お客様の好みに合わせるとか、そういった応用があるのだと思っております。その世界、その世界で基準とかは変わってくるのだと思いますが、どの世界でも基準というものを崩してしまうのはどうかなと私は思っております。」


ぽん、ぽん、ぽん…と静かで穏やかな拍手が少し奥から聞こえてきた。


 「さすがはマスター。お前さんがおる限り、松山のバーは安泰というわけだ。」

 「また、からかわないで下さい。先生。」あっという間にマスターは顔を赤くした。

 「ほれ、また先生といった。お前さんが先生という限り、わしは真っ当にお前さんを褒め称えるから、覚悟せい。」



 「どれ、お嬢さん、側に座らせてもらって構わんかね。」

 十和子がかすかに頷くと、ひとつ置いた席に座ったのは「初老」というには若く「中年」というには脂ぎったところのない奇妙な白髪の男性だった。小太り、といったところだろうか。髪は白いまま後ろに束ねている。この頃流行のスタイルだが、今日、昨日始めたという雰囲気ではなかった。


 「何かお困りの様子だが…。職場に規程一辺倒の上司か部下でもいらっしゃるのかな」男性は手に持ったチューリップ型のグラスを緩々揺らして一口、口に含んだ。

 「え!…そうです。まるでホームズ見たい」

 「あんな吸血鬼のような顔はしていないつもりなんだがね。もっともモルヒネならぬこれはやめられんのだが…吸って構わんかね」と細巻きの葉巻を取り出した。

 「ま、インタビュー歴の長い元編集者の得意技といえば、格好がつくんだろうがね。なに、ホームズもいっている通り、手品でもなんでもない。お嬢さんは見たところ30すぎ。しかしとても専業主婦には見えない。となると普通の勤め人。マスターの扱いを見ても、ここでは常連で、酔っ払って迷惑をかけたりしない極めて良い客であるはず。であるのに、今日は妙に規定とか基準にこだわってマスターに絡んでいる。となると職場で…となる。あとは、ま、年の功、ということにしておいてくれないかね。」

 そういうと男性は細巻きの葉巻をゆっくりと燻らせた。少し甘い燻した香りが漂ってきた。


 十和子はふっと肩の力が抜けたような気がして、例の外国人講師への銀行口座払い込み手続きの話を思わずしてしまっていた。


 「ウ、ふふ、いや、それは傑作」と続けて男性は大笑いをした。

 「いや、失礼。しかしユニークな性格というか、言葉に余分な飾りのない人だねぇ」えっ?という顔をした十和子に向かって男性は続けた。

 「こういっちゃなんだが、大概そういう時は『銀行に確認しましたら、外国人の方で振り仮名をカタカナで登録されている方もいるとのことですので、お手数ですが…』とかなんとか、まぁ言葉を飾るわな。そうすりゃ相手がたも文句は言えまい。面倒なと思いつつも、確認を取るだろう。場合によっちゃ、存外カタカナで登録していて、一件落着。感謝されこそすれ…という場合だってありえんではない。そういう意味でいやぁ、疎漏のない仕事ぶりってわけさ。ところが、飾り無しに『カタカナで…』ってやっちまったもんだから、相手もカチンときた。…だが」と言葉を切って、十和子の顔を改めてみると「お嬢さんの困り様を見ると、言葉に飾りがないってだけじゃぁなさそうだ。どうだい、同じカウンターに座ったのも縁、酒の上の話は扉の内だけ。お互い見知らぬ者同士、ちぃっと話をしてみりゃ、心も晴れるかもしれないよ。」


 十和子はなんということもなく、これまでのことをポツリポツリと話し始めた。自分が話している言葉を聞きながら、十和子は不思議に自分が藤村の側に立っているような気がしてきていた。それでも最後はやはり「年上のメンバーに苦情が集中して『若いモンならともかく。あんたぐらいになったら塩梅いう言葉知っとぉ』なんて嫌味まで言われるらしくて…とにかく事情を汲み取って、もうちょっと融通きかせて欲しいんです。それでのうても、うるさ係って肩身の狭いとこがありますから。」と締めくくった。


 男性は黙って十和子の話を聞き終わると、最後の一口をゆっくりと飲み干して、こう切り出した。

 「お嬢さん、『塩梅』を漢字じゃぁ塩に梅って書くことは知ってるかね。」
 「え?塩に…梅ですか?なんだか料理用語みたいですね、そんな風に書かれると。」

 「あぁ確かに『あんばい』にこの漢字をあてるのは、料理からだから当たらずとも遠からず。ま、そうは言っても、いろんな説があるんだがね。俺が気に入ってるのは、梅干しの塩加減からきてるって説でね。塩がきつすぎると、とんでもなく塩辛くてとても食べられねぇ。逆に塩が甘すぎると…黴が生えて梅干しにならねぇってやつさ。『ちょっと塩梅、きかせてくれや』なんて言われっちまうと、甘目に見るって意味になるがね。俺は甘すぎるってのも、良くねぇっんじゃねぇかってね、思っちまうのさ。ほれ、近頃の梅干しなんぞ、減塩、減塩で、ちぃっとも梅干しらしくねぇ。ぶよぶよ、フニャフニャで、甘漬だぜ、ありゃ。」 

 「ま、それは置いといて。さっきのマスターの話じゃないが、お嬢さん、自分の職場の塩梅の基準ってあるのかね。」

 「あんばいの基準…?」

 「まぁきっちりどこってわけじゃないと思うがね。さっきの梅干しでいやぁ、これ以上塩を利かしてもダメ、逆にこれ以下の塩加減じゃ黴るってやつさ。」


 十和子は返事に詰まってしまった。そんなことを考えたことがなかったからだ。大概配属されたときに、いちいち先輩に聞きに行って、ああこんなもんなんだなぁと自分でやってみて、それが通るから、これでいいんだろうという具合で過ごしてきたからだ。そしてそれは十和子だけでなく、他のメンバーも例外ではなかった。十和子はじっと考え込んでしまった。


 「お嬢さん。酒飲みの戯言で、そんな深刻な顔をさせちまって申し訳ない。どうだい、良かったら一杯、奢らせてくれないかね」そういうと男性はマスターにちょっと目で合図をした。

 「こちらのお嬢さんに、お好きなものを。お酒がもうダメなら、遠慮なくノンアルコールでも言ってくれるとありがたいからね。俺もグラスが空いたから…」

 「同じものにいたしましょうか」

 「いや、せっかく女性が横にいるのにブランデーのストレートじゃぁ色気が無い。サイドカーをもらおうか。」

 「さっきまで飲まれてたの、ブランデー?なんですか?」


 「あぁ、近頃は流行らんがね。年寄りが緩々飲むには一番さ。」

 「とんでもございません。ウィスキーもよろしいですが、ブランデーにはブランデーの奥行きの深さがございます。近頃はウィスキーやジンベースのカクテルが多いですが…。」

 「マスター…私もブランデーベースのお酒が飲んでみたい。けど…。」

 「それでしたら、お好みの一つになっているゴッドファーザーのベースをブランデーに変えたものはいかがですか?甘めではございますが、華やかですし、いつもお飲みのウィスキーとの違いもよくお分かりになられるかと。ただ結構度数は高いですのでゆっくりお飲みください。」

 「それでお願いします。」

 「お嬢さんはウィスキーが好みかね。」

 「いえ、それが…父が昔飲んでたのが…」と十和子が昔の話を話し出した頃、二人のカクテルが運ばれてきた。

 「サイドカーとフレンチコネクションでございます。」

 「あ、ベースが変わってもギャングが絡んだ映画の名前なんね。」

 「ほう、お嬢さんの年頃でフレンチコネクションを知ってるとは珍しい。」

 「ウィスキーのカクテルで初めて飲んだのが、ゴッドファーザーだったので…。映画も見てみようかなって。それ以来、あれこれと。勿論レンタルですけど…」

 「いやいや、これはこれは、思わぬところ同門の氏に会ったもの。俺もギャング映画、それもキチンとした、というと言葉は悪いが、アクションだけで見せるんじゃないやつが好きでね」


 その後は二人して映画の話で盛り上がり、楽しい一時を過ごして十和子は帰途に着いた。



 翌日、久方ぶりのからりとした晴天に満艦飾の洗濯物をはためかせ、これまた久しぶりに部屋の隅々にまで掃除機をかけ…と、十和子は放ったらかしにしておいていた家事に勤しんだ。一息ついて、なんとか片付いた部屋を眺めながらコーヒーを飲んでいた十和子は、昨晩の話を思い出した。塩梅の基準という言葉と、藤村が言った融通ってどのくらいの融通ですか?という問いが、互い違いに浮かんでは消えた。

 「基準か…確か『断捨離』とか流行ってた時も、ルールを決めたらそれを守って思い切って捨てましょうとか…ほやけどねぇ」と独り言を呟きつつぼんやりしていた時、十和子の脳裏に藤村の机が蘇ってきた。


 週明け、係内ミーティングの時、十和子は思い切って自分の思いつきを話すことにした。

 「みんな他の部署からよう文句言われてると思う。一番多い文句、一番困る時ってどんな時か話してもらおうと思うんよ。そら、この部署は文書が規程に沿っているか点検する部署やから、文句を言われるんは無理ない。けど、重なってる文句というか苦情って…」。と十和子が切り出した途端、皆口々に言いだし始めた。

 「ちょ、ちょっと待って。書くのん追いつかん」。

 「結局、前の人と対応が違うというのと、前からこうやったのにいつ変わったというのが、多いような気がしますけど…」。

 的確にまとめたのは藤村だった。他の係員は藤村の顔を一斉に見ると納得したように頷いた。

 「ほうよ、ほうよ。そんなん言われても前の時どないやったなんかわからんけん、言い返す事も出来ん。あれって、やられんわ」

 「規程どうりです、ゆうても聞かん人もおるし」

 「強面で、こっちより勤務歴が長い人相手やったらなおさら言われん」…。

 「いっぺん、その辺り整理してみえへん?5年間は書類保存してるわけやし」と十和子が言うと、みんな黙ってしまった。やっぱりなと十和子は思った。そこがネックになって今まで思っても実行できなかった事だったんだろうと当たりをつけていたのだ。十和子はおもむろに藤村に尋ねた。

 「藤村さん、書類いつも色付けして整理してるけど、あれ、何かルールあるん?」

 「はい。すごく単純ですけど、旅費は赤、財産登録品は緑、消耗品は青…そんな感じで、書類の端に付箋つけてます」

 「関係省庁への申請文書は?」

 「あ、それは別扱いにしてファイルボックスを分けてます。規程が違うんですけど、付箋の色は変えたぁないですけん」

 「聞いたら簡単そうやけど…」

 「面倒ないです。考えんと旅費は赤って付箋貼るだけ。見直すんは付箋つけ終わってからにしてます。」

 「みんな、どない。とりあえず関係省庁へのは別になってることやし、社内の文書だけ、特に文句の多い旅費と消耗品の書類に付箋貼ってみえへん。それだけやったら、今暇な時やし、何人かで手分けしつつやったらそんなに手間でもないと思うんやけど」という事になって(実は十和子は内心しめたと思ったのだが)その週、昼休みの前後を使って整理をすることになった。

 藤村が付箋の貼り方、旅費と消耗品が同時に申請されている場合にどうするか等、ルールを手順に沿って説明した文書を拡大コピーしたものを書類整理棚に貼ってくれた。最初は面倒くさそうにしていた係員も、仕事が単純なだけに書類の中身を見ながら、その時に言われた文句を言い合ったり、なんでこれが通ったんやろと文句を言ったりしながら、作業を進めた。お互いに愚痴を言い合いながら単純作業を進める、そのこと自体が作業を楽しいものにした。そしてどうしても分類に迷う時は、自然と藤村に質問をするようになっていた。結局その週の内に5年分の旅費と消耗品の書類が整理されただけでなく、どうもこれはズレている、なぜ許可したのか(されたのか)わからない書類に特別付箋まで貼ることができた。

 そして翌週のミーティングで、疑問書類をみんなで検討することができるまでになった。

 「いややわぁこれ、やれんよ…」

 「どないしたん」

 「隣の県、ほら直通路線があるとこ、あそこへの出張やのに宿泊が許可されとん」

 「あれぇ〜。あ、これほら、東京とかの時と同じ計算してる…」

 「ちょっと、ここの消耗品の金額、おかしない?」

 「何時のん?あ、丁度消費税が変わった時と違うやろか」

 「内税やら外税やら…」等々、不審点や疑問点は多岐に渡った。

 「十和子さん、これ…」と係員たちが一斉に十和子の顔を見た。

 「ほうやね、このままではやれんね」と十和子は答えた。そして「どないしたい」と問い返した。

 「どないしたいって…。」

 「きちっとはできんとこはあるけん、キツイことは言えんけど…これはやれんっていう所はあるって思います」と答えたのは意外なことに古株の鈴木だった。彼女はどちらかというと融通を利かせる方だし、揉め事を避けたがる方である。鈴木は続けた「融通きかせるんも、向こうに『前はこうやったけん、できるやろ』って言われたら、証拠も何もないけんよう反論せん。なんかおかしいって思う時もあります。けど…。やけん、ここまでやって、これで終わりにするんは嫌です。」

 鈴木の一言がきっかけになったのか口々に

 「それはほうやけど、今まで通りでも…」

 「やけど、気持ち悪いわ。ここまでやって、変や、やれんのと違うか…って思いながら仕事するん」

 「そういうけど、今までのこと変えるん、難しかろ〜。何を根拠にって、そら規程やけど、今まで認めてしもうたけん」

 「そういうてズルズルべったり、どんどんいったら…」と各自がいろんな意見を言いだした。黙って30分ほども全員の発言を聞いていた十和子だったが

 「みんな、どっかでやれんって思うんやったら、なんとかする方法、考えんとあかんね」と声をかけた。

 「正面突破は難しいと私も思うけん、みんなが納得できるような形に収まるかどうかはわからんよ。けどいつまでたっても「総じて文句係」って言われとったらかなわんけんね。どうなるかわからんけど、やれることはやってみようと思う」と十和子は静かに言った。


 それからしばらくの間、十和子が席を外すことが多くなった。不審点や疑問点をまとめた文書を持って、直属の課長・部長、そしてそこから根回しすべき各部署の長と、アポイントメントをとっては説明と口説きにかかったのである。


 しばらくして十和子はいささか浮かない顔をして係内ミーティングを始めた。

 「…この前の不審点や疑問点の文書の事やけど…」

 「だめでしたん?」ザワザワとした声が起こった。

 「反対。あれはあれで、各部署で注意事項として回覧されることになったけん、それはええんよ。ただ…」十和子は口を閉じて周囲を見回した。

 「けど、あれに類することは他にもあるやろって言われてね。旅費と消耗品費以外の項目についても…使い方の指針?ハンドブックっていうんかな。この辺りはこういう風に取り扱うというものをしっかり作って欲しい。その上で上層部のOKが出たら全部署でそれに沿った申請をするって。ことが大きくなったけど…」

 係員全員が黙って十和子を見つめた。



 「ほやね、やらなね。案ずるよりってこともあるかもしれんけんね〜。」

 「まずは今回の文書やけど、若干わかりにくいって文句がついたところがあって、項目順をはっきりさせて欲しいということやけん、これは山本さんに担当して欲しい」。十和子の言葉にびっくりしたのは指名された山本だった。

 「私まだ入って1年かそこらですけど…」

 「わかってる、そやけん、向いとると考えたんよ。慣れていない人でもわかりやすい項目順を作ってみて。バックアップは私がするけん。あとの役割分担やけど、この前と同じ方式であらゆる項目を整理しながら、ハンドブックのたたき台を作る人がいる。もちろん一人では無理やし、通常勤務の合間にやることになるから、一緒にやる相棒はその人が指名するのが一番やと思う」そう言って十和子は一同を見回した。

 「私、やります。そして藤村さんに相棒についてもらいたいです」そう言ったのは鈴木だった。藤村は何も言わずにただ頷いた。

 その後のミーティングはもっぱら勤務時間帯の調整やら細かい打ち合わせに費やされ、十和子はほとんど黙っているだけだった。




 「マスター」

 「何でしょうか?」

 「世の中には起こらんように見えても、起こることがあるんやねぇ。」

 「はぁ〜まぁそういうことも…。」

 「そんな時に、お薦めのお酒ってある?」イタズラっぽく十和子は問いかけた。

 「はい。ございます。」


 いつもは十和子の前では使わないメジャーを使ってマスターが作り上げたのは、薄紫色のショートカクテルだった。


 「ブルームーンでございます。あちらでは滅多に見られないことをブルームーンというのだそうです。ジンベースですが、菫のリキュールが入っております。」

 「…ブルームーン……ね」十和子はくすっと笑った。

 「なにか?」

 「ううん、なんもないよ。」


 そう答えながら、十和子は『たくさんのお月さま』をまた買ってみようかどうしようかと考えていた。あのフールとお姫様は本当に寂しそうだったのだろうか。案外、分かり合うことができたもの同士の静かな悦びに浸っていたのだろうか。確かめたいような、確かめなくてもいいような、そんな気分で十和子はブルームーンを口にした。

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