涼宮ハルヒの神国

タビノ・ヒト

第1話 涼宮ハルヒの神国

俺が、何故いつもハルヒに振り回されているのか疑問だった。

SOS団のメンバー及びその関係者には周知の事実だが、涼宮ハルヒという存在が普通の人間ではない、特殊な存在という位置付けだからだ。

SOS団は宇宙人、未来人、超能力者及び俺(一般人)によって構成されており、俺を除く、3名から涼宮ハルヒの特殊性についてはある程度説明済みの現状だ。

そして、SOS団のこの現実離れした仲間たちと決して短くない期間一緒にいて、俺の感覚も現実離れが生じていたらしい。不可思議な現象に遭遇したり、非日常的な事件に巻き込まれても、あぁ、またハルヒ関連の現象・事件であると仲間達から説明されれば、特に疑問に思うことなく納得してしまっている自分がいつの間にかいた。

ちなみにハルヒは神になった。

世界の神の座に涼宮ハルヒはいつの間にか座っていた。

一応いつも定石でSOS団のメンバー全員に確認をとった。

もはや俺にとって万能の辞書と化してる長門 有希が言った。

「涼宮ハルヒはこの世界の神になった」

頼む、長門。その回答はシンプルで分かりやすいが、シンプル過ぎて俺にはこの不可思議な世界を理解することができない。なぜこうなった。俺は経緯を知りたい。

「涼宮ハルヒは神。世界を支配している。彼女はこの宇宙の真理。世界の法則」

お前んとこの親玉はこの状況とどう認識してるんだ?

「情報統合思念体は涼宮ハルヒを神と認識している。彼女が我々をどのように理解しているかは不明。彼女への物理的又は精神的なアプローチがこの世界にどのような影響を出すかは、かつての彼女以上に危険」

危険って何だよ長門。俺にとってはお前らも万能の存在ってカテゴリーに含まれているんだが。

「かつての涼宮ハルヒに対し、情報統合思念体は興味を示してはいた。しかし、現在の彼女は理由は不明だが、かつての彼女とは根本的に違っている。その為、情報統合思念体は興味を示していると同時に危険視している」

・・・・・・なんだか怖くなってきたんだが。ゴクリ。

そんな時、SOS団のマスコット兼俺の天使である朝比奈さん(ナース服)がお茶を運んできてくれた。ありがたい。ずずっ、うめぇ。

そうだ、朝比奈さんは何か知ってませんか?その、上司的な誰かさんから。

「ごめんなさいキョン君・・・・・・」

あ~、禁則事項ですか?

「はい、禁則事項です。それも超が付きます」

超禁則事項って・・・・・・ちょ、っと・・・・・・ゴクリ。

今までも禁則事項ってそこそこ出ていたけど。えっと、何、超が付くってことは今まで以上の現象が起きてるの?教えて朝比奈さん。

「実は私達も何も分かってないの」

分かりました朝比奈さん。そんな申し訳なさそうな顔をしないでください。この状況はかつて経験したどんな場面とは種類が違う。明らかに異常ですし。だから朝比奈さん気にしないでください。

「あっ、お茶もう一杯貰えます?喉がカラカラになってしまって」

さーてどうしよう。

「おい、古泉。お前はどうだ?この状況について知っていること話せ」

「すみません。実は私も機関も何も把握してないのが現状です」

こいつ・・・・・・こんな状況でもさわやかに笑えるんだな。俺には無理だが。

本当のところお前んところの機関では何か把握してるんじゃないのか?

明らかにおかしいだろこの状況は。俺達SOS団の面子以外の不特定多数にも、わけの分からん影響が出ているんだぞ。身辺で何も分からないのなら、更に広範囲の状況を調査して情報収集した後、現状を分析しないのは不自然だぜ。

組織力があるお前らの機関とやらなら尚更じゃないか?

「確かに。仰られることは分かりますが、本当に組織も何一つ現状を把握してないのですよ。調査しても何も分からないのです。まぁ涼宮さん本人に聞けば話が早いとは思いますが、先ほど長門さんが仰られたとおり、うかつに涼宮さん本人に接触すれば何が起きるか分かりませんし。それに・・・・・・」

「それに・・・・・・何だよ」

「涼宮さん、いなくなっちゃいましたし」

そうなんだよな。ハルヒいないんだよ。どうすりゃいい。

俺がこれからの事をあれこれ考えて始めてまもなく、外から大勢の人の声が聞こえ始めた。

時刻は終業時刻から少し経っていた。

俺は窓を開けて、声が聞こえてくる方向に耳を澄ませた。

どうやらSOS団の部室からだいぶ距離があるグランドの方から、かなりの数の学生がハルヒを讃える言葉を唱えているらしい。かろうじて聞き取れる。

俺は朝比奈さんが入れてくれたお茶を飲みながら、聞こえてくる声を聞き、外の風景を眺める。

下の方を見ると、少し離れた所からSOS団部室に向かい何かしらの祈りを捧げている学生が何人かいる。ここからでは何を唱えているか分からないが、恐らくグランドにいる連中と同じようなこと唱えているのだろう。

ハルヒが消えてからしばらくして知ったのだが、ハルヒが神となって以来、SOS団のメンバーも神聖視されるようになり、他の学生との接触がかなり困難なものとなった。

もし今俺がこの窓から下でお祈りしている連中に会釈をしたり、手を振ったりしたもんならどうなることやら。俺の今までの経験上、感激の極みで泣き出すか、大声でハルヒやSOS団のメンバーを讃える言葉を連呼するだろう。

初めの頃はさすがに引いたよ。だって俺は一般人を自称してるからな。

今は俺を含めたSOS団の面子も、彼らへの対処方法を独自に学び、その方法や情報を団内で共有している。

それにしても・・・・・・

ハルヒが神。

神。

そうか、あいつ、モノホンの神になったんだな。

おかげでハルヒ率いるSOS団の俺達も一蓮托生でこの不可思議な現状に巻き込まれている。

ハルヒ、もしくは神様お呼びしたほうがよろしいか。

俺も祈ろう。

心のそこから。

ハルヒよ、我等を救いたまえ。

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