魔王が勇者に恋をした
ただみかえで
プロローグ
第0話 それは一目惚れから始まった
「あれは、きっと一目惚れだったのだ」
彼女を前に、彼はそう語る。
彼――絶対にして不可侵の存在として恐れられ、その圧倒的な力の前に世界が屈した、あの魔王マグラニストが、である。
あまりにも唐突な話に、対峙していた者――勇者ユリンは言葉を失った。
「…一目惚れ??」
「ふ、なにがなんだかわからない、という顔だな。無理もない。
覚えてはいないか?今から10年ほど前の話だ。
俺は、貴様と一度会っているのだぞ?勇者よ」
圧倒的な存在感ながらも、まるで攻撃の意思を見せないその姿に、
(どうやら、こちらを油断させようとしているわけではないようだけど…)
そう判断し、だが一切の構えを崩さず、ユリンは思考を巡らせる。
10年前と言えば、まだ自分が駆け出しの頃だ。
そんな時期に魔王と出会っている?
ありえない。
年月を重ね、多くの経験を経て、ようやく対峙するに至った今でさえ、本当に自分の力が通用するのか震えが止まらないくらいなのに。
もし、本当に出会っていたとしたら、1秒も保たずに殺されていた…だろ…
「いや、待って?ちょっと待って?
今、10年前って言った??
嘘うそウソ…そんな、そんなことって…」
記憶というのは、一つキッカケさえあれば芋づる式に出てくるものだ。
10年前、駆け出し、というキーワードから唐突に浮かんだ顔は、果たして今対峙している魔王そのものであった。
「…マ、マグ兄…!?」
「久しぶりだな、ユリン」
「ええええええええええええええええええええええええ!?!?!?」
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