第4話 魔王と勇者

第4話-1 時の回廊 Side???

魔王。

あれが魔王だとは、とても認められない。

和平、だと?

人間と共存?

全くもって意味がわからない。

なぜ、あんな脆弱なアホどもと馴れ合わなければいけないのか。

あのような下等な生き物など、我々と共に生きる資格などない。

魔族と違って無駄に増えるから、労働力としてなら使えないこともないが。

とはいえ、すぐに壊れてしまうから、結局はあまり役に立たないが。

…ふむ、そう考えると、なぜあんな生き物がいるのだ?

なぜ、あんな生き物が我が物顔で世界中に広がっているのだ?

滅んだ所でなんの問題もないだろう。


「お前の思想は危険だ!

 我ら魔族は闘争の歴史の上にあるが、その結果が今だ。

 もう、千年新しい魔族が生まれていない。

 これでは、滅びに向かうだけだ!」

「はっ?何をヌルいこと言ってやがる。

 俺らは数千年を生きる。千年生まれなかったから何が問題なのだ?

 滅び?そんなものは起こらん。どうしても起こるというなら…

 そうだな、俺が滅ぼしてやろうか?」

「…やはり、お前は危険すぎる」

「てめぇが無能なんだよ」


魔王と俺とでは、どう考えても俺のほうが力は上だった。

タイマンで負けるなど、考えられないほど実力差があったはずだ。

だが。

俺は負けた。

なぜだ。


――そして、俺は時の回廊に封じられたのだった。




あれから…いったいどれだけの時が過ぎただろうか。

今にして考えても、なぜあの時”私”が負けたのか理解できない。

だが、恐らく、私には何かが足りなかったのだろう。

力こそ全て、ではなかったということだ。


策略、か。


最も縁遠いと思っていたものだが、必要なものなのかもしれない。

ふむ、少し、頭を使ってみるとするか…。

なにぶん、時間だけはいくらでもあるからな。


さらに、1000年は経っただろうか。

気がつくと、私を封じた魔王は、先代魔王になっていた。

現魔王は…おおい、これは信じがたいが。

あの甘ちゃんマグラニスト、だと??

滅びに向かっている、というが、自ら滅びようとしているようにしか見えないな。

やれやれだ。


さて。

十分に時間は費やした。

なるほど、確かに”力”だけではないのは間違いなさそうだ。

それに、この時の回廊も、仕組みがわかればいくらでも抜け穴がある。

少し、試してみるか…。


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