第3話

(1112、1113・・・)

「・・・・1116・・・・あった」

受かった。

国立大学付属高校。

これで、あの家を出れる。

「ちっさと!」

「・・・・・・颯斗はやと

颯斗は千里の幼馴染で、家の事情も知っている数少ない人だった。

「受かったか?」

「もっちろん!俺をなんだと思ってるんだ?

 ほら、書類もらいにいこうぜ」

「あぁ」

周りには、受かって喜んでいる者、落ちて残念がっている者など様々だったが、千里はすっきりとした顔をしていた。

「これで、三年間また一緒だな」

「おぅ!それでな・・・」

颯斗は今まで明るく話していたが、ふと黙り込んだ。

(どうしたんだ・・・?)

颯斗は昔から明るい所が長所だ。まぁ、人の話を聞かないという短所もあるが・・・

急に黙り込むのは何か考え事のある時だ。

千里は立ち止まった颯斗の手をつかむと、ずるずると引っ張った。

「ちさ・・・・」

「考えるのはいいけど、立ち止まるのはやめてくれ。お前らしくもない。」

書類を受け取り、家への帰り道、颯斗は一言も話さなかった。

『千里』

(またか)

今回は名前だけらしい。

「ふぁ・・・・・・」

眠い。

受かって、安心したらしい。

「な・・・なぁ、千里」

「なんだ?」

「お前、家、出るんだろう?」

「?・・・あぁ」

何が言いたいのか・・・

「昨日から・・・いや、けっこう前から考えてたんだ。それで・・・その・・・」

「だから・・・!」

何が言いたいのかはっきりしてくれ!

そのときだった。

『もう、面倒くさい。』

「「?!」」

その声に、颯斗がびくりと体を震わせた。

(颯斗に聴こえている・・・?)

颯斗は千里の話を信じてたみたいだが、声は聴こえていなかった。

それが今、はっきりと聴こえている。

このままだと、颯斗自身も巻き込んでしまうかもしれない。

千里はそのまま走り出した。

あの時のように、かもしれない。

「ちょっ・・・・待てよ!千里!!」

「ついてくるな!お前はさっさと帰れ!」

「嫌だ!」

「なっ・・・・」

この・・・・人の話を聞かない奴がっ!

『今回は逃げても無駄だよ?あんまりハヤトくんは巻き込みたくなかったけど・・・まっ、いっか』

いつになく長文の声。

その瞬間。

「わっ?!」

「っ!?」

足の感覚が消える。

(落ちるっ・・・)

そう考える間もなく、2人は闇のなかへ消えていった。




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