魔法戦争最終幕 開戦

 認められたかった。

 両親に、兄妹に、先生に、友達に。

 私の魔法は、使うと他人を苦しめるものばかりで、事実危険視ばかりされていた。両親も先生も固く使うことを禁じてきたし、友達も冗談交じりで使わないでよと念を押してくるくらいだった。

 だからというわけでもないが、使うつもりはなかった。

 使えば一瞬で、せっかく築き上げてきた関係が一気に崩壊するとわかっていたから。両親との、兄妹との、先生との、友達との関係をを壊したくなかったから。

 だから魔法のテストでも、個別が得意とするものじゃなくて誰にでもできる簡単な物だけを使った。なんの問題もなかったし、担任の先生も魔法のことを知っていたから、何も言わないでくれた。

 だからなんの支障もなかった。魔法使いとして認められれば、別に自分の魔法が使わせてもらえなくたってよかった。危険なものをわざわざ使ってまで、のし上がろうなんて思ってもなかった。

 だけどそれは、仲良しこよしが通じる小学生まで。中学生になると、環境は大きく変わっていった。

 中学からは、高校受験のための学生の階級制度が始まった。

 よりよい高校、よりよい大学、そしてよりよい就職先へとエスカレーター式に決まっていくこの世界で、初めから躓くわけにはいかない。魔法学校に通うのなら、必ず立ち会う関門である。

 それに早速躓いた。

 皆、約十年の時をかけて磨いた自身の得意魔法にさらなる磨きをかけ、より高い序列に食い込もうと努力奮闘している。そういう環境だった。

 そんな中で自身の得意とする魔法を見せない自分が、浮く存在だったのは言うまでもないことで。

――全力出さないとか、マジで舐めてんの? ふざけないでくれる?

――俺達真面目にやってんだよ。遊んでるならあっち行けよ、バカ

 酷い罵詈雑言が、テストで飛んだ。

 自分が誰にでもできる下級魔術のみでテストに臨み、それで成績を残してしまったことが原因だ。他のみんなが努力している中で、自分だけ楽をしているように見えてしまったようだ。

 そんな彼らにいくら自分の力が危険かを説明しても、理解してもらえなかった。理解されるどころか、そんなの言い訳だと、力を操れないのは努力してないからだと言われた。

 辛かった。孤独だった。

 家族に話しても、小学校の先生に話しても、何も解決しなかった。自分が魔法を解禁しようとすれば、全力で止める。それくらいしかしてくれなかった。

 だが言葉だけの制止も振り切らなくてはならない事態が起きた。

 小学校からの友達が、強姦されそうになっている現場に立ち会ってしまった。助けようとしたけれど、誰にでも使えるような魔法で歯が立つ相手でもなく、返り討ちにされた。

 服を脱がされ、男性器を突き付けられる友達。自分は無様にも抵抗できず、何度も何度も顔を殴られる。

 本気も出さない正体不明な女など、まるで魅力的ではなかったのだろう。顔が歪んでしまうこともお構いなしに、何度も何度も殴られた。

 痛めつけられる自分と、汚される友達。痛みは麻痺を始め、感覚の鈍りが起こる。それが現状理解能力と状況判断能力を奪い、思ってしまった。

 もういいや。

 現状を打開しようとするのを、諦めたわけではない。助かることを、助けることを諦めたわけではない。

 ただもう、いいと思った。

 何が――もう、語るまい。

 久し振りだった、自分の魔法を使ったのは。

 久し振りだった、他人に怖がられるのは。

 久し振りだった、生き物を殺したのは。

 初めてだったのは、その殺したのが人間だったということくらいか。

――な、なんだよてめぇ!

――ば、化け物!

 今さっきまで、自分のことを恐れるどころかなんとも思っていなかったはずの彼らの焦燥顔に、笑った。なんて無様、なんて滑稽。失禁しそうになるくらいに笑えてキた。

――死ねよ、豚野郎共

 死者七一人、一〇六人。

 自分の魔法一つで、これだけの被害を叩きだした。校舎も半壊。そんなことをしでかした自分は、当然周囲から忌み嫌われる存在となった。

 だがそれでもよかった。友達さえ、無事だったなら。

――来ないで! 来ないで! もう二度と、私達の前に出てこないで! ……化け物!

 あぁ、酷い。酷い。酷いなぁ。

 あのときの友達の顔は、どんなだったっけ。

 あのときの友達の声は、どんなだったっけ。

 あのときの友達は、どんな感じで私をはたいたっけ。

 もう、思い出せない。

 思い出すことも難しいくらい濃厚で、最悪の少年院生活を送った自分は、晴れて新宿魔法学校に入学したわけだが――

 ムカついた、嫌いだった、死ねばいいのにと思った。

 何もできないくせに、何も取り柄がないくせに、何もいいところがないくせに、しかし一つの才能だけを持っている女子生徒がいた。

 自分の力を隠しながら、それでも他の力を使いながらも他人に認められようとしている奴がいた。それはまるで、かつての自分のようで――

 ――吐き気がする。

 さっさと死ね。

 ってか殺す。殺す殺す殺す殺す殺す。

 てめぇの存在は罪だ、最悪だ、罪悪だ。死ねばいいんだ、おまえみたいに大した理由もなく認められたそうにしてる奴なんて。満足するためだけに認められたいだけの奴なんて、さっさと死ねばいいんだ。

 有名な芸術家の大半が死んでから認められるように、てめぇも死ねば認められるだろうから。だからさっさと死ね――

 ――ケットシー・クロニカ。

「名前はえっと……エレファちゃんでよかったかな? じゃあ、象ちゃんでいいかな」

「ミーリ、象ちゃんはどうかと思うわ、失礼よ。彼女全然太くないじゃない」

「あぁ……そだね、ごめんねエレファちゃん!」

 あぁ……るせぇ……あいつの召喚獣、嫌い。ちゃんと説明すれば召喚獣じゃないところとか、チャラいところとか無駄にカッコいいところとか、あとあいつの召喚獣だってところとか。

「ぁぁ……ちゃん付けすんじゃねぇよ殺すよ? 殺す。てめぇもう死刑執行決定済みだから、マジ逃げたら殺すからね? ってか死ぬよ? 俺が本気出したらさぁあ?」

「……一つ思ったんだけどさ」

「あ”?」

「君、俺が知ってる限りは全然狂ってないね」

「は?」

「仕草とか考えるとことか、正直すごい思考回路してるなって思っちゃうけどさ。話したら案外普通だよなぁって思って。ちょっと中二病感すごい感じるだけで、うん、全然」

 ミーリとエレファの間で沈黙が抜ける。

 絶えずイっている目と顔、そして言葉遣いを彼女だったが、このときばかりは忘れてただ茫然と立ち尽くしてしまった。まるで本当に、中二病と言われてショックを受けている中学生である。

 その姿を見ていて笑いだしたのは、ミーリの隣のリストだった。エレファを指差し、笑い飛ばす。

「聞いたか貴様、中二病だそうだぞ! 可愛そうだなぁ、可哀想だ! あれは一度発症するとなかなか治らぬ代物らしいぞ! 貴様もこの先苦労するな! せいぜい頑張るがいい! 何かあったときは、この死神の一番弟子たる私が――」

「いや、君も中二病だからね?」

「はうあ?!」

 何故だと言いたげな眼差しで、リストが見つめる。それに対して、ミーリとロンゴミアントの記憶を持つロンギヌスは当然でしょという眼差しを向けた。

 今まで言われたことがなかっただけあって、リストは大きくショックを受ける。明らかにわかりやすく、大きく俯いて落ち込んだ。というか、自覚はなかったらしい。

「死神の一番弟子たるこの私が……厨二……? ど、どこがだ?! どの辺がだ?! 具体的に言うと、どの辺が病っぽい?!」

「「格好と口調と仕草?」」

 ミーリとロンギヌスが揃って言うと、リストは完全に硬直してまるで砂になって消えていくように崩れ落ちる。そしてわなわなと震えると、涙目でミーリに訴えた。

 そんなことはないであろう? 私は本当に、死神の一番弟子なのだ……狂言ではないし、事実死神の霊力も持っている……なぁ主よ……私は、中二病などではないよな? な?

 と訴える目だ。涙ながらにとはまさしくこのことと言える。

 だがそこで助け舟を出したのは、意外にもロンギヌスだった。

「でも、そんなあなたをミーリは受け入れているのよ?」


「だってそうでしょ。気に入らないことは大嫌い、ちょっとでも気に入れば大好きってゼロか百かのメーターの人間よ、この人。あなたの能力とか容姿だけを気に入って、大嫌いな部分まで我慢して隣に置く人じゃないわ」


「だから安心なさい、リスト。あなたは正真正銘、ミーリのパートナーの一人よ」

 元々、ロンゴミアントとリストは特別仲がいいわけでもないし、逆もまたない。普段から隣にいる方でもないので、六人の相関図の中では一番接点がないと思われる。

 だがそこは、さすがロンゴミアントということか。リストを信じているミーリの意中など、筒抜けである。

 ミーリがリストのどこを気に入り、隣に置くことを決めたのかは定かではない。まだ特別を認知できないミーリの選択根拠は、すべてフィーリングだ。言葉で表現できるところにない。

 それすらももうわかっている。ミーリの過去の話を聞くまでもなく、ロンゴミアントはもう、ミーリと言う人間の深いところまで理解しているように思えた。

 そう、認めているのだ。自分の主人を。愛しているのだ、自分の主人を。

 それを感じたミーリはちょっと嬉しく、そして聞いたエレファは寂しさと苛立ちをごちゃ混ぜにした感情の瞳で睨みつけた。

 交わされる視線と視線。それによる感情のやり取り。言葉を必要とせず、呼吸するように伝わり合っている。以心伝心、実に素晴らしい信頼関係と言えるだろうが――

「おもしろくねぇ……」

 相手はただの召喚獣――いや実際は違うらしいがどうでもいい。この世界においてはただの家畜のくせして感情を持ち、誰かと繋がり合い、信頼し、今このエレファ・バックショットと戦おうとしている。

 実に目障り。

 なんでこんな家畜のリア充ぶりを、わざわざ見せつけられなくちゃならないんだ。

 なんで自分の求めているものを、こう目の前で転がせる奴と戦わなきゃならないんだ。

 なんで自分の求めるものを手に入れるのに、その求めるものと戦わなきゃならないんだ。

 ムカつくムカつくムカつくムカつく。

 あのクソ教師マジで殺す。欲しいものが手に入るというから誘いに乗ってやったのに、こんな思いをするのならこの女を手に入れた瞬間に殺してやればよかった。

「……何か?」

 黒と白のゴシックドレスの召喚獣。ミーリ達と同じ世界の何かとは聞いているが、その正体までは聞いていない。

 事実、こちらで言う異世界で神となる所業を成し遂げた――もしくは犯した人間のことなど知る気もなかったし、知ったところで結局知らないとなるだけだからである。まったくもって、ウザったい。

「てめぇぇさぁあ? 俺のために戦うんだろ? そのために来たんだろ? え?」

「あなたのためというよりは、あなたの先生のためですか……偉大なる先輩の頼みなので、断れなかっただけです」

「あ”ぁ……そうかよぉぉお? まぁ理由なんてどうでもいいや。とにかく……あれ、殺せ」

「仕方ないですね」

 ゴシック女性が一歩踏み出す。すると彼女の丈の長いドレスの下から粘着質の液体が流れ出し、ミーリ達に波になって迫って来た。

 ロンギヌスはリストを脇に抱え、即座に跳ぶ。ロンギヌスにリストを運ばせるために少しとどまっていたミーリは脚を取られ、そのまま這い上がって来た液体に捕まった。

 ロンギヌスが街灯の上に着地したのを確認し、ミーリも抜け出そうとする。しかし液体の凄まじい粘着質に絡め取られ、泥にはまったように動けなかった。

 ゴシックの女性が、ドレスの裾を持ち上げて会釈する。

「初めまして。わたくしはあなた方の世界で魔神と呼ばれる存在に当たる者。名を、マリー・マドレーヌ・ドルー・ドブレー。ド・ブランヴィリエ公爵夫人と名乗った方が、ご理解されますでしょうか?」

「いやごめん、誰?」

「花の都の連続殺人鬼。自分の父親と兄弟、娘に夫を遺産目的で毒殺した後、斬首刑で首を落とされた女よ」

 ロン……解説はありがたいんだけど、まずこの状況なんとかできないかなぁ。

 毒と効いて、自分を縛っている紫色の液体が毒液だと察する。しかもそれがまるで自立しているように動くので、厄介極まりない。

 もがけばもがくほど、底なしの泥沼にはまったような束縛力。そして、触れられた箇所から服を通り越して体に染み込んでくる。

 肌の表面から、芯へと染み込む猛毒。まず脚から、次に腰、腕と回っていく。それが致死性の超猛毒であることを、直に体感した。

「この度は魔女メディア殿にこの世界に呼ばれ、参戦した次第。すべては、あなた方を殺すため……そして、私の神としての将来のため、あなた方に死んで頂きたく思います」

 うわぁ……確かに自分のことしか考えてない人だぁ……。

「ミーリ、動ける?」

「見た通り、動けません」

「先駆者よ……先駆者よ……」

 ロンギヌスの脇に抱えられたリストが、いつになく元気のない声で問う。まぁもっとも、脇に抱えられた体勢は、実に辛そうなのだが。

「先駆者は、私のことを実際どう思っているのだ?」

 中二病なんて、年齢と共に訪れる事象のようなもの。すべての人間が通過する場所であり、それが色濃く出るかどうかというところに、個人差が生じるだけである。

 なのに他人は、色濃く出る人間を――異質を恥ずかしく感じ、馬鹿にし、認めない。

 異質とは人間にとっては認めがたく、受け入れがたい物。故に異質そのものは自身のそれを恥ずかしく感じ、委縮し、最悪、個性という自身にとっての宝物を破壊することを糧に生きていく。

 個性の死んだ人間の生は、生とは呼べない。個性の死とは、まさしくそれその人の死である。生を謳歌しろ、楽しみを見つけろ。自分達が殺したそれにそんなことを言ったところで、ただの死屍は語らない。だってもう、死んでしまっているのだから。

 だからいわゆる中二病と言われてしまったその個性が助けを求めているのなら、それは卒業白だとか大人になれだとか、そういう矯正の言葉ではなく、まさしく救いを与えるべきだろう。

 少なくとも、ミーリ・ウートガルドはそう思う。だからこそ、全身に毒が回っている状況で、優しく微笑み手を差し伸べる。

「本当に困った人。構ってちゃんだし、お金の使い方荒いし、ダメって言ったことやりたがるし、なんか子供みたいで……でも、そこがなんかほっとけないんだよね。まるで、自分の子供といるみたいでさ……だから――」


「俺は今の君のこと、とても

 好きだよ。

 そう言わないのは、あえてだろうか。それとも、自然にだろうか。

 少なくとも、前の彼ならそう言った。誰だろうと自身が気に入れば、好きだと言った。誰だろうと、好きならば、好きという。

 しかし今言わなかったのは、彼なりの成長だろうか。それとも後退だろうか。

 しかし彼にとって、特別を抱くというのは進歩だった。そう思えるほど、彼の今までには特別がなかった。

 好きな食べ物はハンバーグ――と答えるだけ。

 好きな異性の容姿は、黒い長髪の女性――だとは思っている。

 好きなことは、昼寝することと食べること――しか思いつかないからそうだと思う。

 そんな彼が、自分にとっての好きを自分で探そうとしているのだから、これはきっと、成長だろう。

 そんな風に、一番付き合いの短いリストですら思うほど、今の一言は短く太かった。

 故に、今まで中二病などと言われて傷付いていたことなど完全に忘却して、にんまりと口角を持ち上げた。

 そしてロンギヌスの脇から抜け出し、鎌を器用に使って跳ぶ。そして猛毒に捕まるよりも数段速い速度で、ブランヴィリエへと肉薄した。

「我は死神の一番弟子にして漆黒の魔鎌! 冥界を従える狂気の神霊武装ティア・フォリマ! 枕元に立てばその首を奪い、足元に立てばその生に充実を与える! これがその絶命の一撃!」

 大きく鎌を振りかぶり、刃の形状を大きく鋭く作り変える。

 対してブランヴィリエは指を立て、波立つ毒をそびえさせる。厚く高く聳えた毒の壁が、ブランヴィリエの姿を隠した。

「喰らえ文字通りの我が必殺! 我が絶命の一撃! “死神はやがて其方の首を絶つため枕元に立つデッド・エンド”!!!」

「リスッチ、ストップ!!!」

「はぅ?!」

 すでに振ってしまっている鎌を、止めることはできない。故にリストはミーリの声を聞くと斬撃の軌道を変え、わざと空振りした――はずだった。

 毒の壁を両断し、その先にいたのはギリギリ空振りされた鎌の目の前にいたブランヴィリエ、だったのに、いつの間にやらそれはエレファに変わり、軌道を変えたはずの斬撃はエレファの首筋を真一文字に掻き斬っていた。

 自身が対象外を斬ったことにリストが驚いているその隙に、背後に回り込んだブランヴィリエは毒針を取り出してリストの首に突き刺そうと突き出す。

 だが二人の間を聖槍が通過し、地面に突き刺さった衝撃で爆風を広げると、その威力で二人を引き離した。

「どうなっているのだ……」

 確かに目の前にはこやつがいた……それに、あの緑髪に斬撃が当たるはずもない……何が起こっている?

「リスト、下がっていなさい。ここは、私がやるわ」

「聖なる槍――ではなかったな……槍持つ者、そなたがやるのか?」

「心配はいらないわ。聖職者だった私には、あなたが操る暗黒物質や、彼女の操る猛毒の類には耐性があるの。むしろ相性はいいくらいよ。それに……」

 首の傷は浅い。むしろ少し切れたくらいだ、致命傷ではない。

 だがエレファにとっては首に傷がついたということが重要で、流れ出した血に触れて濡れた手を見つめ、イかれた――いや、イかれたように自身を含めて惑わせていた頭は、衝撃を受け硬直、そして暴走した。

 いじめられた過去。自身が殴られ続け、友達が犯されそうになっているその情景が、脳内に再生される。

 嘔吐しそうなほどの気持ち悪さに襲われたエレファは、声を枯らしながら絶叫した。ロンギヌスはうるさそうに頭を振るい、新たな槍を握り締める。

「あの子を先にどうにかした方がいいわ。ミーリ、行けるわね」

「簡単に言うなぁ……まぁ……ッ」

 今さっきまで出るのに苦労していた毒の沼。今までのそれが演技だったかのように、ミーリは易々と抜け出して脚を払う。痺れも他の症状も、まるで現れていなかった。

「やれるけど?」

「……なら、二人で行きましょうか」

「そだね……じゃ――」

 リストと手を繋ぎ、それに抱き寄せられたリストと口づけを交わす。上位契約である魔鎌を握り締め、感触を確かめるため大きく振り回した。

 無論、異常はない。今のところは、だが。

「行くよ、ロン」

「えぇ。大丈夫、あなたの槍の使い手に、敗北はないわ」

「……こ、ろすっ!!!」

 

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