白い悪魔

 アルカが目を覚ましたのは、自分の屋敷の自分の部屋でだった。一番新しい記憶と居場所が合わず、少し混乱して体を起こす。

 ベッドの側では白衣の下の露出度が多い女と、肩幅の広い男がそれぞれ時間を潰していた。アルカが起きたことに、そこまで大きなリアクションを取らない。彼女が状況を把握しようとするまで、男も本を閉じなかった。

「何故戻ってきているのです? ファウスト、暗殺はどうなったのですか」

 ファウストと呼ばれた白衣の女がようやくアルカの方を向く。膝の上に置かれた鉱石に興味津々の様子で、アルカが声を掛けるまでその存在自体を忘れていたようだ。

「失敗じゃ。七つの大罪、色欲のアスモデウスを出したが、標的の護衛に討たれたわい。お陰で城は三割壊滅。外出公務も、中止になりおった。暗殺の機会を失ったわ」

「なっ……! だから、城を壊す必要はないと言いましたのに!」

「仕方ないじゃろ? 向こうは熾天使最強のミカエルを打倒する実力者を連れとるんじゃ。こちらもそれなりの実力者を呼ばねば、暗殺などできはせんよ」

「しかし、結局失敗したではないですか……」

「じゃが、これでやりやすくはなった。今度は暗殺ではなく、抹殺できる。それなら好きに暴れられるというものよ。わしも遠慮なく、強い悪魔を召喚できる」

「遠慮? 最初からしてねぇだろう、ファウスト。これは殺し、遊びじゃねぇんだ。生半可な奴で人殺しができるか」

「おぉ怖い怖い。でかい口を叩く紳士じゃのぉ。戦争に出た経験もない小僧が、粋がりおるわ」

 一瞬、本当に一瞬だけ電光が光る。その電撃はファウストの体を焼き、黒く焦がした。椅子から滑り落ちたファウストは、煙を吐きながら力なく倒れる。

「言葉に気を付けろ……悪魔使い。俺は創造主。生かすも殺すも、すべては俺次第。故に敬うことは許す。ひれ伏すことは許す。だが、この俺を愚弄することは許さん……それはこの天地ができた時代より、決められた法だ。それをよく覚えておけ」

 白煙を上げる、ファウストの体。だがその腹部が一瞬中から突かれたように盛り上がると、その腹部から体が持ち上がり、ついには立ち上がった。全身焼けているし吐血もしてるが、表情だけは平気そうである。

 というか笑っている。

「やれやれ、むつかしい男じゃのぉ。まぁいいわい。わかった、気を付ける。これ以上焼かれても困るしのぉ」

 そう言ってはいるが、困るどころではない。全身火傷に麻痺までしてるし、何より肌がズタズタに切れている。もう満身創痍だった。

 たったの一撃でその状態に持ち込んだ男は気が晴れたようで、懐から取り出した葉巻に火を点けた。

「さて、ではやるかアルカ」

「やるって……何をです?」

「決まっているだろう。殲滅だ。すでにファウストが召喚した魔神が向かっている。我々もすぐに向かい、目的を達しようじゃないか」

「殲滅って……それじゃあ私が目論んだとバレてしまうではないですか!」

「それがどうした。暗殺は失敗した、続けることはできん。ともなれば乗り込む以外手はあるまい。おまえだって、そうのんびりはしてられないんだろう? 今回の公務中止で期限が伸びたとはいえ、直に姫直属の補佐の座は決まる。それに間に合わないと意味がないだろう? おまえの計画は」

「それは……」

「なら行くぞ。ファウスト、準備はできているんだろうな」

「無論じゃ。お主がそう言うと思って、用意したわい」

 ファウストがカーテンを開けると、アルカの視界に飛び込んできたのは黒い群れ。それはカラスでも狼でもなく、大量の悪魔の集団だった。屋敷の庭に群がって、何かの血肉を喰らっている。お陰で、庭は黒と赤に塗れていた。

「数八〇。東の最大都市を襲った天使の数には遠く及ばんが、中級悪魔以上の連中ばかりじゃ。戦力としては申し分ないじゃろうて」

「よし。では行くぞ、アルカ。おまえも秘宝とやらを持っていけ。相手も追い詰められれば、秘宝を出すだろう。そうなれば拮抗できるのはおまえの秘宝だけだ」

「……わかりました……あの、ところで、彼らはなんの肉を喰らっているのですか?」

「見ない方がいいぞよ? 小娘には少々刺激が強すぎるからのぉ」

 そう言われたから、アルカは庭を見なかった。が、すぐに気付く。屋敷のメイドも執事も、父も母も、誰もいなかった。

 同時に気付く。もう後には戻れない。彼女達にこの計画を打ち明け、利用しようとしたその日から、引き返すなんて道はなかったのだと。

 そして同時刻、サクラの屋敷では空虚うつろの腕を治していた。アスモデウスとの戦いで折れてしまった空虚の腕を、リエンが元の位置にくっ付ける。そしてそのままの形で、肩から吊らせた。

 そして、ネキが霊力を与えて治癒する。腕の他にも、空虚は火傷や擦り傷を負っていた。オルアがいれば薬での治療もできたのだが、生憎と回復薬はネキしかいなかった。

「まったく……ミーリから聞いたぞ、ゼロ距離で砲撃したと。無茶なことをするものだ」

「相手は色欲の大悪魔、アスモデウス……私では、相討ちが関の山だった。むしろよく勝ったと褒めてくれ。ミーリは、よくやったと頭を撫でてくれた」

「何……? クソ、羨ましい……」

「マスター?」

 今のは失言だった。なんとか咳払いで誤魔化し、カラルドの追撃を止める。だが隣で寝ていたはずのエレインには、聞いたぞという顔をされた。彼女には、あとで口止めをしておこう。

 さて、空虚を愛撫したというミーリは土方ひじかた沖田おきたと共にいた。空虚の怪我の状態から、彼女を戦線離脱しなければならないという相談である。

「大丈夫なのか? 貴重な戦力を削いで」

「ウッチーは多分嫌がるだろうけど、あの状態じゃ弓も使えないしね。またゼロ距離砲撃なんてしてほしくないし」

「……ったく。対神学園の連中も大したことないな。早速戦線離脱とは」

「コラ、キョーくん。ウッチーを見下してると許さないよ。ウッチーは実力的にはキョーくんよりずっと上だよ。あのアスモデウスだって、キョーくんじゃ勝てなかっただろうし」

「なんだと……! 貴様……!!」

「先輩、ケイオスさん、落ち着いて……俺達は、サクラ様をお守りしないと……」

 明らかに手が出そうになっていた土方を、沖田が止める。まぁおそらく手が出たところで、ミーリが物理的に止めていただろう。

「さっき学園長に連絡したら、依頼期間はこっちで決めていいってさ。まぁそんなに長くいるつもりはないけど、その間は守るから安心してよ」

「サクラ様を見捨てるというのか……?!」

「本当なら、あの子を守るのは君達の仕事だよ。俺は出るべきじゃない。それとも、あのとき瓦礫からも守れなかった君には、手に余るの?」

「なんだと……?!」

「だったらやめな、こんな仕事。君はあの子の執事じゃない何かになろうとしてるみたいだけど、あの子の盾にもなれないんじゃ、この先何にもなれないよ」

「貴様……!!」

「……サクラちゃんの様子を見てくる。君達はウィンが戻ってきたら、交代で見回りに行ってよね」

「命令するな!」

 イラだっている。というより怒っていた。珍しく、腹が立っていた。それはあのときの土方の行動にある。

 アスモデウスが外に出た瞬間、城の約三割が崩壊した。その崩壊した中に、サクラがいた部屋も混じっていたのである。天上は崩れ落ち、家具という家具が力なく倒れる。

 車椅子のサクラが逃げられるはずもなく、下敷きになるのが必至となったそのとき、ミーリが跳んだのだ。サクラを庇い、サクラに覆い被さるようにして抱き締めた。

 結果、瓦礫はミーリに落ち、家具も迫った。床は抜け落ち、二人は二階分下の階に叩きつけられた。

 だがミーリは守り切った。全身に霊力を張り巡らせ、身体能力を最大にまで強化し、落下の衝撃からもサクラを守り切った。無傷だった。誇れるほどに。

 だが上を見た瞬間目に飛び込んできたのは、心配そうにこちらを見下ろしている土方の姿だった。

 何をしてるの? 君の方が近かったよね? 君がこの子を守るべきだったよね? 君はこの子の執事なんだよね? ボディーガードなんだよね? 

 じゃあ何をしてるの? 君がこの子を守らないで、誰がこの子を守ってあげるの!?

 誰よりも主を心配し、誰よりも主を思っていると態度で公言している執事が、誰よりも遅く行動していることに腹が立った。今世紀史上最高にイラだった。

 強い言葉を使いながら、いざというときに役立たない。それは弱者にのみ許される立場だ。誰かを守れないほどの、力のない人間にのみ許される立ち位置だ。

 だが彼は違う。執事とは、少なくとも主を守れなければならない。主を守り、主が守る領土を守る。それが仕事だ。役目だ。使命だ。それが自分の認める主なら、自分の命よりも優先して守らなければならない。

 その主が危機に陥っているというのに、彼は一歩も動けなかった。動かなかった。そのことに無性に腹が立った。

 自分の命を賭して守る、それが役目だろう。サクラにそれだけの価値を見出しているのだったら、それが当然だ。なのに彼は恐怖に負けたのか、意識に負けたのか、とにかく彼は誰よりも遅かった。

 そのことが許せなかった。守ると誓いながら、守ると口にしながら、守ることが一ミリもできていない。まるであの別荘の燃えた日の、ミーリ自身のようで、ものすごく腹が立った。

――君を愛してる。世界で一番愛してる。殺したいくらいに……だから殺す

 その言葉も、まだ実現できてない。

 殺せていない。殺したくとも、その実力が備わっていない。悔しかった。とてつもなく、歯がゆかった。

 口にした。誓いも立てた。あとは実行するのみ。だができない。単なる実力不足。それがたまらなく悔しい。

 しかしこれは、彼らのように他人に譲るつもりはない。それに譲れない。だって他の誰にも、あいつは殺せないのだから。

 だから代わってもらったところで、誓いは果たせないし、それでは果たすとは言わない。自分でやり切る。自分でやってこその誓いだ。誰にも代わってもらう気はない。

 だからこそ許せない。今、呼ばれた他人の力に主を守らせ、強い言葉を使っている彼のような奴が。途方もなく、許せなかった。

「おいそこの」

 今は寝ているはずのサクラの部屋に行く途中、声を掛けられた。それは土方のパートナー、ブラックリストだった。窓際にしゃがみ込み、酒を飲んでいる。

「今宵は満月になりそうだ……死神の夜に相応しい……おまえも飲まないか?」

「……悪いけど、俺酒とか飲めないから」

「待て、青の先駆者」

 再び呼び止められる。振り返ると、並々中身が入った酒瓶を投げつけられた。何事もなく、片手で取る。

げ」

「……俺は君の従者じゃない」

「そう言うな。付き合えと言っているんだ。安心しろ、お嬢ならおまえの手下がちゃんと守っているわ」

「ロン達は手下じゃない」

「使おうとしてるのだろ? 復讐の道具として……死神の一番弟子はな、死に関することはすべてお見通しだ。予言――いや、宣言したっていい。このまま行けば、おまえは一人になる。何故ならおまえは、一人だけ強いから。一人だけ強いから、誰もおまえに付いて行かないし付いて行けない。結果おまえは一人ぼっちで、一人で戦う羽目になる」

「……ご主人と違って、詩人だなぁ君は」

 わかったから、わかったような口を利かないでよ……うっとおしい。

「詩人? 違うな、私は死神の一番弟子。死を司る死神の大鎌。それ以上でも以下でもない。おまえだってそうだろ? 青の先駆者よ」

「前から思ってたけど、青の先駆者って何? 俺が何を先走るって言うの?」

「孤独……強すぎるが故、強くあり過ぎるが故……おまえはいつか孤独に陥る。それは私も同じこと。私は死神の一番弟子。死神の力はいずれ周囲に狂気を伝染させ、おとしめ、恐怖される。それが運命さだめよ……」

「狂気の神霊武装ティア・フォリマ……」

「なぁ、青の先駆者よ……このままでは私もおまえも一人になる。一人は辛いぞ? 誰も助けてくれないし誰も守ってくれない。誰も話しかけてくれないし誰も接してくれない。そこに温もりはなく、ただ冷たいのみ……孤独はな、先駆者。望めば手に入ってしまう。だが決して手に入れてはいけないもの。手にしたら二度と手放せない……人と接することが、生きることが、地獄に変わってしまう」

「……君は、孤独を知ってるの?」

「見ればわかるだろう? あいつは……我が使い手は私が大層気に入らないらしい。ただの道具……お嬢を守る手段としか見ておらん……それは孤独だ。話しかければうるさいで一蹴。それで終わる。私は、ただの武器だ」

 そんなことはない。と言えなかった。

 事実土方は、彼女を人格として扱っていないだろう。土方にいたっては武器になれとか、黙っていろとか、とくに彼女が自由にしていることが邪魔な様子だった。

 近藤はサクラのことで手一杯だし、沖田も彼女にそこまで心を開いていない。彼女を唯一頼っているのは、サクラだった。だから彼女は、サクラをお嬢と呼ぶのだろう。

 ただしそれは、サクラがいなくなってしまえば終わりだ。土方にはサクラを守る以外に、彼女を持つ理由がない。唯一が消え、戦う理由もなくなるとなれば、なるほどたしかに、これは完璧な孤独の出来上がりだ。

 それはたしかに辛い。しかもより辛いのは、その孤独が、いつか必ず訪れるとわかっているということだ。いつその日が来るか、堪ったものではないだろう。

「なぁ、青の先駆者よ……共に孤独から抜け出さないか?」

「どうやって」

「槍、剣、銃、杖、盾……そこに死神の鎌が入ったところで、さほど困りはせんだろう?」

 言いたいことはわかった。たしかに、この神霊武装は可哀想だ。いつか確実に一人になる。今だって、彼女が満足いく待遇は受けていない。同情はしない、が、それでも辛い。

 孤独なら、ミーリ・ウートガルドは一度だけ経験した。家族が皆死んで、師匠に拾われるまでの間だけ。だが、人生で見ればわずかなその時間ですら、孤独でいることは苦痛だった。

 しかもその苦痛は、時間が解決してくれるものではない。もうトラウマだ。決して一人になりたくはない。そのとき必死に父の形見である上着を握り締め、肩にかけていたことをよく覚えている。

 それが今、目の前の一人の女性に迫っている。狂気の神霊武装とはいえ、彼女もまた女性だ。

 格好も言動も挑発的だし、寂しさなどまるで感じさせないが、彼女は紛れもない寂しさを訴えているのだった。

 救えるのなら救いたい。だがあくまで、彼女は狂気の神霊武装。持てばその狂気にやられ、自我が狂う可能性だってなくはない。あの腰抜けが持っているのだから安全と、高を括れないのが現状だった。

「ダメ、か……そうだろうな。狂気の神霊武装など、欲しがる奴はいないか」

「違っ……! そういうわけじゃなくて――」

「青の先駆者よ、つまらないことを聞いたな。もういい。酒を置いて、さっさと行け。私は――?!」

 突然だった。リストが鎌を持って、ミーリに突進したのだ。それはもう完全なる不意打ちで、今の今まで可哀想な女と話していたミーリも、完全に不意を突かれてしまった。

 だが決して、彼女はミーリを斬るために突進したのではない。むしろその逆だ。彼女はミーリを守るために、突進したのである。その鎌は刃先を自在に変え、窓の外からガラスを破って侵入してきた弾丸を弾き斬った。

 銃声もない。気配もない。広げに広げた霊力探知にも、無論引っかかっていない。だがそれでも、銃弾は飛んできた。それに気付けたのは一瞬だけ銃口の光の反射がミーリに映ったのを見たリストと、サクラの部屋でとっさに窓に盾を張った、ヘレンだけだった。

「敵……ロンゴミアント」

「わかってる!」

 サクラの部屋を飛び出し、ロンゴミアントはミーリのいる部屋に走る。そして突き飛ばされて倒れていたミーリに駆け寄り、即座立ち上がらせた。

「ありがとう、リスっち」

「礼はよい。それよりも……気配も霊力もまるでしなんだ。だが確実におる。狙いはおまえだな、青の先駆者」

「……ロン!」

「えぇ!」

 ロンゴミアントと共に外に飛び出す。紫の槍を手に取ると、その場で槍を構えた。

 目で、耳で、気配で、霊力探知で探す。全身の全神経を使って、敵の居所を探った。が、どれにも引っかからない。

 だが諦めず探そうと一歩踏み出した瞬間、銃弾が放たれた。槍を振り回し、それを打ち砕く。銃弾が突如目の前に現れようと、砕く自信はある。だがそれでは限りない消耗戦である。いつまで続くともわからないそんな戦いをする気はない。

 だから必死になって探す。だがこの屋敷を離れるわけにもいかない。屋敷を離れてサクラを狙われれば、ヘレンがいても守り切れない。そんな気がした。

 そんな予感が的中したかのように、銃弾ではないものが投げつけられる。何かわかるまえに斬ったあとで、その正体に気付いた。手榴弾だ。

 爆発し、ミーリを後退させる。さらに追撃の弾丸が襲ってきて、ミーリは休む暇もなく弾き斬った。手榴弾で切れた頬から、血を垂れ流す。

 そんなミーリの姿をスコープ越しに見るのは、全身真っ白な格好をした小柄な男。手にしているライフル銃で、的確に見つけたミーリのスキに狙撃する。それを弾かれてもすぐにほかのスキを見つけ、確実に撃っていた。

 二〇、三〇。数を撃って、より多くのスキを作る。ほぼ底なしの体力を削って、生まれる隙を確実に射抜く。

 ミーリに要求されるのは、そのスキを確実に縫う一撃。一回でも最善手を選び損ねれば、確実に体を持っていかれる。そんな体力と気力の持久戦を強いられ、ミーリは焦っていた。今まで以上に、今は怒りやらなんやらで心が不安定なのだ。

 そんなスキを、男は見逃さない。確実に最善手を選ぶ冷静さと、そこを躊躇なく選ぶ冷酷さを兼ね備えた、冷たい男だった。その白い服装と性格から、時代はその男を白い悪魔と呼んだ。

「おい、てめぇか」

 こめかみに銃口を突きつけられる。だが男は視線を一瞬送っただけで、動揺も何もしない。何事もなかったかのように、更なる弾丸を撃ち込む。

「止めねぇか、てめぇ!」

 自分がまだそこにいる。逃げられてもいないし、逃げられる保証もない。だが男はその場で、まるでうるさいと一蹴するように、手榴弾のピンを抜いて投げつけた。

 そして爆発する。

 男はその場からスルリと抜け出し、また改めて銃口をミーリに向けていた。だが放たれた銃弾は、他の方から飛んできた銃弾に軌道を変えられる。それを撃ったのは、今さっき男に銃口を向けた、ウィンだった。

「やらせねぇよ……俺の主は」

「邪魔だな。標的の抹殺に、おまえは充分すぎるくらいに邪魔だ。故に消えてもらおう……依頼はなんとしても達成しなければならん」

「そうかよ。じゃあ、俺も遠慮しねぇぞ!!」

 ウィンの背後に、無数の銃口が現れる。そしてそれは一瞬の光を放ち、銃弾を連射した。

 

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